Project/Area Number |
23K26965
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Project/Area Number (Other) |
23H02272 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40020:Wood science-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田鶴 寿弥子 (水野寿弥子) 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (30609920)
松下 泰幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60335015)
安藤 恵介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70262227)
鈴木 史朗 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70437268)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,110,000 (Direct Cost: ¥14,700,000、Indirect Cost: ¥4,410,000)
Fiscal Year 2026: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,140,000 (Direct Cost: ¥7,800,000、Indirect Cost: ¥2,340,000)
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Keywords | 階層構造 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / 赤外分光分析 / 力学的特性 / マトリックス成分 |
Outline of Research at the Start |
数百年にもわたり、巨大な樹木の生活が保障されている秘訣は木材の階層構造にある。樹種に応じて多様な解剖学的特徴を有する組織構造、発達した細胞壁、それを構成する木質高分子といったマクロからミクロへと至る階層構造だが、力学的特性との詳細な関係は未解明である。本研究では独自の前処理技術を駆使し、特定成分を選択的に除去するとともに木材の形態を維持した調製法を確立し、系統的に解析することで階層構造と力学的特性の関係を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
針葉樹が形成した木材の階層構造を維持しつつマトリックス成分を選択的に除去する処理条件の最適化を行った。これまでに調製条件を確立したスギ材を参考にして、アカマツ材等を対象とした。その結果、スギと同じ条件であるアルコリシス150 ℃、1時間の処理に加え、亜塩素酸ソーダ処理を繰り返し行うことによって、木材内部まで完全に白色化した。赤外分光分析や構成成分分析を実施した結果、リグニンおよびヘミセルロースがほぼ除去されていた。次に、各種構造解析に供したところ、木材の形態や組織細胞に加え、セルロースミクロフィブリル傾角、結晶構造はほとんど変化が無いことを確認した。したがって、針葉樹材についてはスギと同様の処理条件で白い木材を調製できることが明らかとなった。 木材の構造と物性の関係を理解するため、先行して調製していたスギの未処理および白い木材を圧縮試験に供した。いずれの試料についても繊維方向は他の二方向の強度よりもはるかに高かった。また接線方向の最大強度は半径方向のそれよりも高い値を示した。次に、未処理材と白い木材の試験結果を比較すると、繊維方向では、上降伏点を超えた後の落差幅こそ異なるものの、曲線の波形パターンは未処理材と白い木材で比較的類似していた。半径方向の波形パターンに至ってはほぼ同様であったが、興味深いことに、接線方向は未処理材と白い木材で曲線の波形パターンが顕著に異なった。これは細胞間層のリグニンが除去されたため、重要な細胞間の応力伝達が低下した結果だと考えられる。以上の成果をさらに発展させるため、次年度は他の針葉樹材についても圧縮試験に供し、組織構造が及ぼす影響等に関する知見を収集する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は針葉樹材の階層構造を維持しながらヘミセルロースとリグニンを選択的に除去する処理条件の決定に取り組んだ。すでに調製条件が確立されているスギ材を参考に、ヒノキやアカマツ材等について取り組んだ。特にアカマツ材はスギと比べて優に密度が大きいのだが、スギと同じ条件であるアルコリシス150 ℃、1時間の処理に加え、亜塩素酸ソーダ処理を繰り返し行うことによって、表面から徐々に脱色が進行し、8時間行った際は内部まで完全に白くなった。赤外分光分析や構成成分分析を行ったところ、リグニンはほとんど除去されており、ヘミセルロースも僅かであった。また、得られた試料の構造を評価するため、各種構造解析に供したところ、木材の形態や組織細胞はほとんど変化が無かった。X線回折によってミクロフィブリル傾角やセルロースの結晶性を観察した結果、これらも未処理材と同様であった。したがって、密度の違いはあったとしても針葉樹材はスギと同様の処理条件で白い木材を調製できることが明らかとなった。 先行して調製していたスギの未処理および白い木材を圧縮試験に供した。未処理材および白い木材では繊維方向の強度は他の二方向のそれを凌駕し、接線方向の最大強度は半径方向のそれよりも高かった。未処理材と白い木材の各方向で比較を行った結果、繊維方向 については、上降伏点を超えた後の落差幅こそ異なるものの、曲線の波形パターンは未処理材と白い木材で比較的類似していた。次に、半径方向の波形パターンに至っては未処理材と白い木材で全く変化が見られなかった。一方、接線方向では未処理材と白い木材で曲線の波形パターンが劇的に変化した。これは細胞間層に沈着したリグニンの影響だと考察した。以上の結果から、圧縮方向に応じて、構造と成分の影響が大きく異なるという非常に重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はアカマツといった昨年度に白い木材化条件の最適化を行った試料について圧縮試験を行い、その挙動を解析する。成長輪に沿って加工した木材に対し、繊維方向・接線方向・放射方向に沿って圧縮試験を行い、それぞれの応力―ひずみデータを取得する。弾性率や強度に加え、応力―ひずみ波形全体と各構造情報を多変量解析によって関連付けることで、樹種内および樹種間を含めた力学的特性と階層構造の関係性を明らかにする。 また2024年度には針葉樹材に加え、広葉樹材から白い木材を調製する条件を最適化する。候補となる材は我が国を代表する環孔材であるケヤキ、散孔材のブナ、半環孔材のキリなどを対象とする。また高比重な木材についても最適化を試みる。組織構造だけでなく、密度も異なるため、これらの構造的・物理的パラメータが調製法への影響度合いについて考察する。調製できた試料については構成成分評価を行い処理条件との関係性を明らかにし、加えて、各種構造評価を実施することで、階層構造と化学成分の関係も理解する。
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