海水経験技術による回遊性水産有用魚種の成長・成熟促進機構の解明と応用
Project/Area Number |
23K26989
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Project/Area Number (Other) |
23H02296 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宮西 弘 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30726360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 教授 (70708130)
清水 宗敬 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90431337)
黒木 真理 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (00568800)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
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Keywords | 海水経験法 / 回遊魚 / 成長促進 / 成熟サイクル / 疾病防除 / サケマス / ニホンウナギ / チョウザメ / 海水適応 |
Outline of Research at the Start |
海水経験法とは、淡水飼育中の稚魚に人為的かつ一時的にある濃度の塩水刺激を与えることで、淡水再馴致後の成長が顕著に促進される画期的な新規飼育法である。さらに、一度海水を経験することで海水適応能が向上することからサケマス類における海面養殖時の斃死を減少させる。申請者らによって開発され、既に回遊性魚類のサケマス類、ニホンウナギおよびチョウザメでその効果が確認されている。本研究では、海水経験法を、基礎研究を基により簡易的な方法へと改良し、社会実装可能なレベルまで発展させることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
サケマス類、ウナギおよびチョウザメは、日本における重要な水産有用魚種である。しかし、各魚種において天然資源の減少や国内生産量の伸び悩みといった課題がある。これを解決するために、本研究では、「海水経験法」というユニークかつ増養殖に資する新規飼育法を開発し検証することを第一の目的とする。海水経験とは、淡水飼育中の稚魚に人為的かつ一時的に塩水刺激を加えることで、淡水再馴致後の成長が顕著に促進される。申請者らは、ニホンメダカをモデルに海水経験と着想を得て、水産有用魚種である回遊性魚類のサケマス類、ニホンウナギおよびチョウザメでその効果を確認した。サケマス類は、海面養殖時に、1割程度が斃死することが知られていたが、淡水飼育時にあえて海水環境を経験にさせることで、海水適応能が上昇し斃死が減少することも見出した。しかし、なぜ成長促進されるか?は不明な点が多い。また、現行の方法では海水経験期間が長く、より簡便な方法が求められる。そこで本研究では、既存の海水経験法による初期成長促進の生理学的理解を深め、付加的価値を高めるために免疫機構への影響を明らかにする。基礎知見を基に、簡易的な改良型海水経験法の確立を目指す。本研究課題は、サケマス類における海面養殖時の斃死減少およびサイズアップ、ウナギにおける成長不良個体(ビリ)の解決、チョウザメにおける成熟期間の短縮およびキャビアの生産性向上に寄与することを目的に、この革新的新規飼育法を社会実装可能なレベルまで発展させ、国内の魚類養殖の強化に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サケマス類、ウナギおよびチョウザメにおける水産学的問題点を背景に、課題解決のブレークスルーとして、「海水経験法」という新規飼育法を見出した。海水経験とは、稚魚期における淡水飼育中に人為的かつ一時的に塩水刺激を加える飼育法である。サケマス類、ウナギおよびチョウザメは通し回遊魚であり、一生のうちに川と海を経験する種が多く、広塩性を有する。サケ科魚類やチョウザメは冷水性の魚であるため、孵化場は冷水が採取できる山間部に多い。地理的および疾病のリスクから、孵化場での海水経験には海水を利用するよりも、飼育水(淡水)を用い人工海水により海水経験処理を行うことが最良である。そのため、手間とコストの観点から、海水経験をどこでも簡易的に行うためには、より省スペースかつ低コストでの実施が望ましい。稚魚期に海水経験に必要な海水適応能が発達しているとは限らないため、サケマス類のサクラマスおよびニジマスを対象に、海水馴致が可能な最小個体時期と海水濃度を調べたところ、孵化後5週間後に、50%海水に1週間および70%海水に4週間の海水経験処理が可能であることを明らかとした。孵化後5週間は、0.5 g以内と小さく、現有の設備で大量に海水経験処理を行える。この工程で、海水経験処理を行った結果、海水経験後の淡水再馴致から海水経験群で成長は促進され、約1.4倍の成長促進を示した。成長促進がみられる時期に、脳下垂体における成長ホルモンは有意に増加した。サクラマスでは、海水移行における血漿浸透圧の上昇が海水経験により抑えられたことから海水適応能の上昇が期待できた。ウナギおよびチョウザメで海水経験可能な塩分濃度を調べ各魚種において塩分濃度は異なることが分かった。各濃度で海水経験を行ったところ、ウナギの成長不良個体およびチョウザメの初期成長を促進できることを見出した。これらの成果をもとに、3件の特許出願を本年度行った。
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Strategy for Future Research Activity |
サケマス類、ウナギおよびチョウザメにおける海水経験法は、成長を促進することが明らかとなった。ウナギおよびチョウザメにおける海水経験における塩分処理濃度を検討したところ、段階的に塩分濃度を上昇させることが、海水経験処理による死亡を抑えられることが分かったが、その期間短縮が課題である。社会実装を鑑みると、成長促進効果を担保しながら、より短期間であることが、コストと手間を考えても望ましい。そこで、本年度途中から、新たな海水経験試験を開始し、海水経験処理が短期間でも成長促進がみられるかを調べる。さらに、成長を最大化するための、海水濃度の検討も各魚種で開始する予定である。また、海水経験の有無を判別できる方法は重要であるため、判別方法として、耳石に蓄積するSr/ Ca比を調べる。海水経験では人工海水を用いる。これまで、天然海水と淡水におけるSr/ Ca比を調べた知見を多いが、人工海水では調べられていないことから、判別可能かを検証する。 海水経験は、成長促進と海水適応能の上昇が期待できる。成長促進に関しては、海水経験処理時には、脳下垂体における成長ホルモン遺伝子の発現上昇はみられない。しかし、淡水再馴致後に成長は促進し、脳下垂体における成長ホルモン遺伝子は発現上昇を示した。これまでの一般的な知識では、サケマス類は銀化後に淡水から海水へ移行すると成長ホルモンが上昇し、成長を促すという知見は多い。しかし、銀化前の稚魚期における海水刺激は成長ホルモンの上昇を示さず、淡水再馴致の刺激で上昇を示すことはこれまでの知見と異なり興味深い。来年度は、成長促進の生理学的知見を蓄積し、その機構の理解に迫るため、成長因子、摂食因子等を調べる予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)