PTPδとIL-1受容体様タンパク質の複合体によるシナプス形成誘導の構造基盤の解明
Project/Area Number |
23K27113
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Project/Area Number (Other) |
23H02420 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43020:Structural biochemistry-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深井 周也 京都大学, 理学研究科, 教授 (10361792)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2025: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
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Keywords | 構造生物学 / 分子間相互作用 / 膜受容体 / シナプス / 細胞接着 / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 / 神経発達障害 |
Outline of Research at the Start |
神経細胞はシナプスと呼ばれる接着構造を介してつながって回路を形成する.シナプスの形成を促す一連の分子群(シナプスオーガナイザー)は二つの神経細胞を跨いで相互作用し,接続先の選択やシナプスの性質を制御する.その機能の異常は自閉症などの神経発達障害と密接に関連する.本研究では,シナプスオーガナイザーがシナプス形成を調節する詳細な分子機構をその立体構造に基づいて理解する.その理解は,神経発達障害の疾患モデルマウスの創出,あるいは,人工タンパク質や化合物による特定のシナプス形成の操作の可能性を拡げ,自閉症などの神経発達障害の治療法開発の基礎となりうる.
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Outline of Annual Research Achievements |
神経シナプスの形成を誘導する細胞接着分子群はシナプスオーガナイザーと呼ばれ,接続先の選択やシナプスの特性(興奮性・抑制性)を制御する.その機能の異常は自閉症などの神経発達障害と密接に関連する.これまでに,シナプスオーガナイザー同士が細胞外ドメインを介して選択的に相互作用する分子機構は解明されてきたが,シナプス形成に至るまでの分子機構やその調節機構は未解明のままである.本研究では,シナプスオーガナイザーとして機能するIIa型受容体タンパク質脱リン酸化酵素PTPδとIL-1受容体様タンパク質との複合体がシナプス形成を調節する分子機構の構造基盤を解明する.X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を利用して,PTPδ:IL-1RAcP:IL-1R:IL-1β 四者複合体の立体構造を決定し,炎症性サイトカインであるIL-1βによってシナプス誘導能が調節される分子機構を解明する.また,PTPδ:IL1RAPL2複合体の立体構造を決定し,シナプス誘導能の調節や結合選択性を生み出す新たな分子機構を解明する.さらに,PTPδの二量体化の解析とPTPδ:IL1RAPL1の接着構造全体の構造解析によって,シナプス形成を誘導する二量体化やクラスタリングの様式を解明する.シナプスオーガナイザーの接着構造やそれを調節する分子機構を理解することは,人工タンパク質や化合物による特定のシナプス形成の操作の可能性を拡げる.また,特定の変異を導入することによって,神経発達障害の疾患モデルマウスの創出にもつながる.これらは,自閉症などの神経発達障害の治療法開発の基礎となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,(1)PTPδ:IL-1RAcP:IL-1R:IL-1β 四者複合体の立体構造を決定し,炎症性サイトカインであるIL-1βによってシナプス誘導能が調節される分子機構を解明する.また,(2)PTPδ:IL1RAPL2複合体の立体構造を決定し,シナプス誘導能の調節や結合選択性を生み出す新たな分子機構を解明する.さらに,(3)PTPδの二量体化の解析とPTPδ:IL1RAPL1の接着構造全体の構造解析によって,シナプス形成を誘導する二量体化やクラスタリングの様式を解明する.(1)については,PTPδ,IL-1RAcP,IL-1R1,IL-1βを個別に調製し,混合することで複合体を再構成した.再構成した複合体をグリッドに載せて急速凍結した後に,加速電圧200 kVの透過型電子顕微鏡で撮影した.約5000枚の画像(動画)から約120万粒子を拾い上げ,そのうちの約30万粒子から四者複合体の三次元像を計算した.一部に側鎖が不明瞭な箇所があるものの,解釈可能な三次元像を得ることができた.(2)のPTPδ:IL1RAPL2複合体については,結晶の再現性や分解能の点で結晶構造解析が難航している.(3)については,細胞外の膜近傍領域でのドメインスワッピングを介した二量体化を新たに見出しており,原子レベルから個体レベルまでの解析による検証を計画した.すでに,細胞レベルでの二量体化とシナプス誘導能との関係は解析済みであり,現在は,個体レベルでの解析のための遺伝子改変マウスの作製を共同研究先の富山大・医の研究グループが進めている.構造解析では,PTPδ:IL1RAPL1複合体が形成する接着構造全体をクライオ電子線トモグラフィー(cryo-ET)で可視化するための試料調製方法の最適化を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
PTPδ:IL-1RAcP:IL-1R:IL-1β四者複合体の解析では,精製条件等をさらに検討して,より明瞭な密度マップを得る作業を進める.また,加速電圧300 kVの透過型電子顕微鏡を利用することで分解能の向上も目指す.現時点での密度マップからでもIL-1βによるシナプス誘導能の調節に重要なアミノ酸残基の候補はいくつか見つかっている.変異体を用いた表面プラズモン共鳴法による分子間相互作用解析や神経細胞を用いたシナプス誘導アッセイによって推測される分子機構を検証する.PTPδ:IL1RAPL2複合体については,PTPδ:IL-1RAcP:IL-1R:IL-1β四者複合体と同様に単粒子解析による立体構造決定を試みる.PTPδの二量体化の解析では,共同研究ベースで遺伝子改変マウスの神経細胞を用いたシナプス誘導アッセイや行動解析などを進める.PTPδ:IL1RAPL1の接着構造全体の構造解析では,cryo-ET解析を目指し,引き続き試料調製方法の改善を行う.
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)