Project/Area Number |
23K27117
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Project/Area Number (Other) |
23H02424 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43020:Structural biochemistry-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山下 敦子 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (10321738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北尾 彰朗 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30252422)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,720,000 (Direct Cost: ¥14,400,000、Indirect Cost: ¥4,320,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
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Keywords | 味覚受容体 |
Outline of Research at the Start |
甘味受容体およびうま味受容体Taste receptor type 1 (T1r)は、糖やアミノ酸などの栄養素を認識する味覚受容体である。T1rは、それぞれの動物ごとに食性に合わせた異なる基質特異性を示し、また幅広い基質特異性を持つ場合が多い。そこで本研究では、幅広いT1rのリガンド結合解析・構造解析・計算化学的解析を行うことで、「受容体の基質特異性」と「認識する化学物質」という2つの多様性を背景に分子進化した受容体であるT1rの、多様な化学物質に対する「多対多」の分子認識機構を、構造生物学的に解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまで味覚受容体T1rについては、組換え試料調製系が確立できているメダカT1r2a/T1r3リガンド結合ドメイン(LBD)を中心とした研究を進めてきたが、この他に7種のT1rヘテロ二量体の試料調製を新たに達成した。このうちの5種について、示差走査蛍光測定により既知T1rリガンドを中心とした結合スクリーニングを実施した結果、3種がメダカT1r2a/T1r3同様幅広いアミノ酸を認識するのに対し、2種が特定のアミノ酸に極めて高い親和性を示す、異なる基質特異性を持つことを明らかにした。また、すでに試料調製系を確立していた別の1種について、変異体を作製とアミノ酸結合解析を行った結果、この受容体がメダカT1r2a/T1r3とは異なる基質特異性を示す構造要因を明らかにした。さらに、メダカT1r2a/T1r3については、これまでにアミノ酸の他に塩化物イオンもリガンドとなることを報告していたが、塩化物イオン以外のハロゲンイオンも同受容体LBDに結合することを確認し、蛍光融合タンパク質を用いた蛍光共鳴エネルギー移動測定から、これらのハロゲンイオンの結合も、LBDの構造変化を引き起こすことを明らかにした。加えて、メダカT1r2a/T1r3とは基質特異性が異なる別のT1rについても、ハロゲンイオン結合能を確認し、ハロゲンイオン認識能がT1r間で保存されていることを示唆する結果を得た。加えて、2種のT1rヘテロ二量体についてクライオ電子顕微鏡単粒子解析による構造解析に着手した。 また、これらのT1rによる基質認識の詳細を明らかにするため、メダカT1r2a/T1r3などのT1rLBD構造を用いた分子動力学シミュレーションを実施し、複数の異なるアミノ酸リガンドについて、解離過程のシミュレーションを実施し、標準結合自由エネルギー、解離/結合速度定数を計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、味覚受容体T1rの幅広い化学物質認識能の構造基盤を明らかにすることにあり、このため、さまざまなT1rの基質特異性の解析とこれらの基質を結合した状態の構造解析を並行して実施する計画としている。2023年度は、現時点で組換え発現タンパク質調製とこれを用いた機能解析がT1rヘテロ二量体として唯一報告されているモデルT1rタンパク質・メダカT1r2a/T1r3とは特徴が大きく異なる基質特異性を示すT1rを複数種見出した。今後これらの立体構造解析を進めることで、幅広い化学物質認識能の構造基盤解明につなげることができると考える。また、メダカT1r2a/T1r3についても、イオン結合能の幅広さを明らかにし、T1rがこれまでの理解を超えて幅広い化学物質を認識するとの新たな観点を得ている。また、これらのメダカT1r2a/T1r3以外のT1rの構造解析や、分子動力学シミュレーションによる基質結合・解離過程の動態解析にも着手しており、2023年度で解析系をほぼ確立し、本格的な解析を進めている状況にある。 以上から、新たな知見が得られ目標の達成に向け研究が進展していることから、本課題はおむね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている構造未解明T1rの構造解析を進め、立体構造を明らかにする。また、特にメダカT1r2a/T1r3とは大きく異なる基質特異性を示したT1rについて、順次構造解析を進め、それらの化学物質認識機構を明らかにする。新たに見出したハロゲンイオン結合能について、引き続きメダカT1r2a/T1r3をモデルタンパク質とした結合解析を進め、従来味物質と理解されてきたアミノ酸結合との関係性についても解析する。また、研究進捗に応じて変異体解析やハロゲンイオン結合状態の構造解析を実施し、ハロゲンイオンの作用に関する詳細を明らかにする。また、現在進めている分子動力学シミュレーションについて、構造解析結果や結合解析結果とも連関した解析を進め、静的構造情報だけでは理解が困難であった、T1rによる各種基質の認識様式の違いや基質特異性を決定している構造要因を明らかにする。
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