Project/Area Number |
23K27197
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Project/Area Number (Other) |
23H02505 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44030:Plant molecular biology and physiology-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西浜 竜一 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 教授 (70283455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朽津 和幸 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 教授 (50211884)
松井 健二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
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Keywords | 傷シグナル / 再生 / オキシリピン / ROS/カルシウム / MAPK / ゼニゴケ / MAPキナーゼ |
Outline of Research at the Start |
植物は傷害を受けると容易に分化細胞が脱分化し、器官や植物体を再生する。しかし、傷シグナルが再生を誘導する極初期の応答機構については、まだ十分に理解されていない。一方、傷害はカルシウムや活性酸素種を介してジャスモン酸などのオキシリピン化合物の生合成を誘導し、全身的な防御応答を引き起こすことが知られている。本研究では、ゼニゴケを用いて、オキシリピンの生合成や再生を促進する遺伝子の発現を引き起こす、極初期の傷シグナルに対する応答の仕組みを、防御応答の仕組みとの関連に着目して明らかにすることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
植物は傷害を受けると容易に分化細胞が脱分化し、器官や植物体を再生する。しかし、傷シグナルが再生を誘導する極初期の応答機構については、まだ十分に理解されていない。一方、傷害はカルシウムイオン(Ca2+)や活性酸素種(ROS)を介してジャスモン酸などのオキシリピン化合物の生合成を誘導し、全身的な防御応答を引き起こすことが知られている。また被子植物では傷害に応答して素早くMAPキナーゼの活性化が起こることが知られている。本研究では、ゼニゴケを用いて、オキシリピンの生合成や再生を促進する遺伝子の発現を引き起こす、極初期の傷シグナルに対する応答の仕組みを、防御応答の仕組みとの関連に着目して明らかにすることを目的としている。 今年度は、ゼニゴケ葉状体の傷害に応答して素早くMAPキナーゼの活性化が起こることを見出した。またMAPキナーゼの変異体において、細胞周期再開の遅延や再生極性の乱れがみられることを明らかにした。 また、傷害刺激により、Ca2+の細胞質への流入が引き起こされ、それが刺激部位から離れた部位に高速に(1-2 mm/s)伝播することを発見した。このCa2+伝播は、Ca2+チャネルの一つであるGLRに依存することも明らかにした。さらに、ROS生成酵素Rbohのリン酸化がCa2+との親和性を上昇されることで、RbohのもつNADPH oxidase活性を促進することを明らかにした。これらについて、論文として報告した。 加えて、ゼニゴケにおいて傷害により合成が誘導されることが知られているオキシリピンであるオキソフィトジエン酸 (OPDA) 類の定量系を確立した。これを用いて、葉状体切断部位でOPDA類の顕著な増加が起こることを確認した。また葉状体の頂端基部軸方向に沿って、OPDA類増加に極性が見られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ゼニゴケ葉状体切断の刺激に応答して5分以内に、MAPキナーゼがリン酸化を受け活性化されることを見出した。ゼニゴケは3分子種のMAPキナーゼをもつ。現在のところ、分子量からはMpMPK1とMpMPK2のどちらかは明確には特定できていない。これらの遺伝子について変異体を作出し、再生に及ぼす影響を解析した。Mpmpk2変異体の再生は野生型株と大きな違いは見られなかった一方、Mpmpk1変異体では再生に先立って起こる細胞周期再開が遅延したことに加え、再生の極性が乱れることがわかった。この発見は、植物においてMAPキナーゼが再生に関与することを示した初めての例である。 GCaMP6f-mCherry発現株を用いて、維管束をもたないコケ植物においても維管束植物と同等の1-2 mm/sの速度でCa2+伝播が起こることを示した。維管束に基づいた高速伝播モデルも提唱されているが、本発見は伝播機構の議論に一石を投じるものとなった。 ゼニゴケ特有のオキソフィトジエン酸 (OPDA) 類としてdinor-trans-OPDA, dinor-cis-OPDA, dinor-iso-OPDAをそれぞれ入手し、LC-MSによりそれぞれを区別して定量する分析系を確立した。葉状体切断部位でOPDA類の顕著な増加が認められた。切断部位より基部ではOPDA類の増加が認められたが切断部位より頂端側ではOPDA類の顕著な増加は認めれらなかった。このことは、OPDA類の合成部位に関して葉状体の頂端基部軸に沿った極性があることに加え、OPDA類そのもの、またはその合成を促進するシグナルが切断部位から遠位に伝播していることを示唆している。 以上のように、実験計画に沿った研究成果が得られており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗リン酸化MAPK抗体を用いたウエスタンブロット解析により見出された傷害誘導性MAPキナーゼ活性化について、ゼニゴケがもつ3分子種のMAPキナーゼのうちどれにあたるかを特定する。また、その活性制御におけるオーキシン、カルシウム、ROSの役割を、オーキシン極性輸送阻害剤、カルシウムキレーター、ROS消去剤などを用いて明らかにする。 ゼニゴケ葉状体を切断後、分オーダーの時系列を追ってリン酸化プロテオーム解析を行い、傷害ストレス依存的にリン酸化変動を受けるタンパク質を同定する。統計的に有意な変動を示すリン酸化ペプチドを特定し、それらの遺伝子のゲノム編集株を作出して機能解析を行う。 ゼニゴケの2つのROS生成酵素遺伝子(MpRbohA, B)の条件的ノックアウト株を作出し、OPDA類生合成、MAPキナーゼ活性化、細胞リプログラミング頻度への影響を調べる。また、傷誘導性の傷シグナル受容体候補遺伝子、カルシウム依存性キナーゼ遺伝子、OPDA類合成に関わる(と推測される)AOSやリポキシゲナーゼの遺伝子、などのゲノム編集株の作出と表現型解析を、前年度から継続して進める。 基部遠位でのOPDA類の蓄積機構を明らかにする。切断部より輸送されたのか、切断部からの何らかのシグナルによって基部でのOPDA生合成が誘導されたのかを明らかにする。輸送を検証するために同位体標識OPDAを調製する。また基部遠位での合成誘導を見るために切断部位から1-2 mm程度の連続切片を切り出し、RT-PCRによりOPDA生合成酵素遺伝子発現レベルを明らかにする。さらに、オーキシン極性輸送阻害剤、カルシウムキレーター、ROS消去剤などでの処理がOPDA類の基部遠位での蓄積にどのような影響を与えるか、明らかにする。
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