Project/Area Number |
23K27232
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Project/Area Number (Other) |
23H02541 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
嶋永 元裕 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (70345057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
野牧 秀隆 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 上席研究員 (90435834)
渡部 裕美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 准研究主任 (50447380)
上野 大輔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (20723240)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | 熱水噴出域 / 共生種 / 寄生種 / カイアシ類 / 天然放射性炭素 |
Outline of Research at the Start |
深海熱水噴出域生態系は化学合成細菌による一次生産に栄養源を大きく依存し、大型底生固有種は共生細菌を持つなど特異な栄養生態をもつことが知られているが、これらの大型熱水域固有種の棲管や体表面の片利共生種、寄生種を含めた、微小後生動物の生態や種多様性に関する知見は乏しい。これらの共生‐寄生種に関して、以下の点焦点を当てて研究を進める。 ① 熱水域固有大型種に付随するカイアシ類の種多様性・系統の網羅 ② 上記カイアシ類の食性(共生‐寄生)の定量化と宿主特異性の関係評価 ③ 宿主と共生‐寄生関係による熱水域群集全体の種多様性への寄与の全貌解明
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Outline of Annual Research Achievements |
伊豆海域の海底火山カルデラ内の熱水域から、我が国初の熱水固有カイアシ類(レンゴククダクチミジンコ科)として記載され、熱水固有大型種イトエラゴカイマットの共生種でもあるStygiopontius senokuchiaeの幼体の形態を精査した結果、すでに形態の雌雄差が明らかになっていた5齢幼体(最終幼体齢)だけでなく直前の4齢幼体においても、第6胸脚の形状などで雌雄が区別できることを明らかにした。この結果を元に所有していた本種4齢幼体の雌雄判別を行った結果、本種では、3齢から4齢に脱皮する段階ですでに体長の成長に雌雄差があり、メスは成体に達するまで急激に体長を増加させるのに対し、3齢以降のオスの成長率はメスより有意に低いことが明らかになった。 伊豆海域の海底火山熱水域から発見された寄生性カイアシ類についても分類学的検討を進めた。当該科としては世界初の熱水性種となる。形態と分子系統解析に基づき、新属新種として記載論文を取り纏めている。更に、本邦沿岸のハオリムシ類から採集されたレンゴククダクチミジンコ科については、1種は本邦初記録の種で、もう1種は世界2例目の発見かつ伊豆海域から初の分布確認がなされた。 天然放射性炭素による深海熱水域生態系全体の栄養生態を明らかにすべく、伊平屋北熱水域で採取された生物の14C濃度分析を行った。その結果、生物の炭素源の熱水への依存度は概ね熱水からの距離に依存して減少する傾向があるものの、硫黄酸化により二酸化炭素を固定する硫黄酸化細菌を共生させる生物と、メタン酸化によりメタンを炭素源とするメタン酸化細菌を共生させる生物およびそれに炭素源を依存する寄生種などとの間で明瞭にその炭素源に違いがあることが分かった。さらに、熱水域同様に化学合成細菌を共生させる大型生物が顕著な冷湧水生態系において寄生性カイアシ類の栄養生態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レンゴククダクチミジンコ類のほとんどは成体のみで記載がなされ、各種の幼体期の形態変化に関しては、ほとんど知られていなかった。カイアシ類は通常4齢から形態に性差が顕現するが、熱水固有のカイアシ類においても同様の傾向があることが今年度の研究から示された。次年度以降、本種やそのほかのレンゴククダクチミジンコ幼体の安定同同位体比を再分析することにより、宿主との共生・寄生関係に関するカイアシ類種間の違いだけでなく、成長に伴う宿主への依存度変化における雌雄差の定量化など、研究計画時には想定してなかった疑問に関しても新たなる知見が得られると期待される。深海熱水域の共生・寄生性のカイアシ類相に関する研究は世界的にもまだ不十分であり、こと日本においては黎明期にあると言える。 伊豆海域の海底火山熱水域から発見された寄生性カイアシ類は、当該科としては世界初の熱水性種であることに加え、他のほぼ全種が北大西洋のみから報告されている。本種の口器は極めて特殊な形態を示しており、寄生生態も他に例が無い。今後、熱水域への適応としての形態進化の方向性についても議論できることが期待できる。また、レンゴククダクチミジンコ科については、スミソニアン研究所から貴重なタイプ標本を借用することが出来、今回本邦から分布確認された1種については、Papua New Guinea沖からのみ発見されている種と同一であることが確かめられた。もう1種も、新産地として伊豆海域にも分布することが明らかになり、着実に熱水生態系における共生・寄生性カイアシ類の多様性に関する知見が蓄積されている。 熱水生態系全体の炭素窒素源の解析においても、これまで行われてきた安定同位体比の解析では見えてこなかった新しい知見が天然放射性炭素を利用することにより得られており、着実に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
Stygiopontius senokuchiaeに関しては、今年度明らかにした幼体における形態の雌雄差を元に4齢以降の雌雄幼体を分別、放射性炭素同位体比分析・炭素安定同位体比分析を行って、本種の宿主との共生関係が成長と共に強化されるか?、その変化に雌雄差があるか?、などを分析するとともに、他のレンゴククダクチミジンコ類の幼体の形態分類に関しても、本種のノウハウを元に精査し、それらの種に関する成長に伴う栄養生態の定量分析へと繋げる。 熱水域に分布する共生・寄生性カイアシ類の種多様性の解明も、引き続き積極的に進めたい。前述の研究途上の内容について学術論文として取り纏める他、新しい標本の獲得とそれらの形態精査、分子系統解析の実施を試みたい。本年度、熱水域における調査を計画している国内外の研究者にも採集協力を仰ぐ他、積極的な調査参加も試みたい。他の考え得る手段も用い、出来る限り多くの標本を確保した上で最終年度へと繋げたい。 大型熱水固有生物に関しても、これまで天然放射性炭素の解析を行ってきた伊豆小笠原島弧熱水系、伊平屋北背弧熱水系に加え、熱水中の二酸化炭素濃度やメタン濃度が低く、生態系内でのエネルギーフローが異なることが想定される中央海嶺系での解析を行い、熱水生態系における共生種、寄生種を含めた生態系全体像を明らかにする。さらに、熱水生態系同様に化学合成に依存し共生、寄生関係がみられる冷湧水生態系においても天然放射性炭素の分析を行うことで、寄生、共生関係をふくめた化学合成生態系における栄養の流れを明らかにする。
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