Project/Area Number |
23K27415
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Project/Area Number (Other) |
23H02724 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49060:Virology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10314246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡士 幸一 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 総括研究官 (40378948)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2025: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
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Keywords | ウイルス受容体 / エンベロープタンパク質 / クライオ電子顕微鏡 / 宿主因子 / B型肝炎ウイルス / 感染受容体 / クライオ電子顕微鏡単粒子解析 / 宿主ーウイルス相互作用 / 抗ウイルス薬 |
Outline of Research at the Start |
C型肝炎がほぼ克服された一方で、B型肝炎ウイルス (HBV) の感染を原因としたB型肝炎は依然として公衆衛生上の主要な問題である。簡便に投与可能なHBV感染抑制薬を開発することにより肝炎罹患の根本原因に歯止めをかけることが強く望まれる。本研究では、① HBV細胞侵入超分子複合体の形成メカニズム、②次世代HBV感染抑制薬シーズ化合物群の作用機序を、クライオ電子顕微鏡を用いて構造学的に解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染の成立には、エンベロープタンパク質LHBs(large hepatitis B virus surface antigen)と、ヒト肝細胞表面にあり感染受容体として機能するナトリウム・タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)との高親和性の結合が必須である。これまでのウイルス学研究から、LHBsのN末端の脂質修飾(N-ミリストイル化)とそれに続くN末端側47残基のペプチド部分(preS1)がNTCPとの結合において重要であることがわかっている。 本年度の研究においてNTCP-preS1複合体のクライオ電子顕微鏡構造解析に成功した。preS1は溶液中では特定の構造をもたない柔軟性に富むペプチド部分から成ると考えられていたが、NTCPと結合した状態ではN末端側約20残基部分がコンパクトに折り畳まれてNTCP内部の中央キャビティに深く入り込むことが明らかになった。preS1のN末端に存在するミリストイル基(脂質修飾)はNTCPの外側表面の脂質膜にアンカーされることも観察された。 構造解析および胆汁酸輸送試験の結果、preS1はNTCPの胆汁酸輸送経路を構成する中央キャビティを占有することで、胆汁酸の結合および輸送を競合的に阻害することが明らかになった。NTCPのpreS1結合部位と胆汁酸結合部位の多くは共通していたが、NTCPの細胞外側表面のループ領域や膜貫通ヘリックスTM8bの一部はpreS1との結合に関わるものの、胆汁酸の輸送経路には重ならないことが示唆された。したがって、これらの限定的な領域に特異的に結合する化合物を探索することにより、NTCPの胆汁酸輸送機能を維持しつつ、preS1の結合のみを抑制できる次世代抗HBV薬の創出につながることが期待される。本研究成果は、構造情報に基づく合理的な抗ウイルス薬の分子設計に新たな道筋を拓くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
C型肝炎がほぼ克服された一方で、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染を原因としたB型肝炎は依然として公衆衛生上の主要な問題である。慢性B型肝炎は肝硬変や肝細胞がんを引き起こし、全世界で年間90万人が死亡している。また、国内では近年 genotype A(欧米型)のHBV感染による急性B型肝炎が大都市部で急速に増加している。有効かつ簡便に投与可能なHBV感染抑制薬を開発することにより肝炎罹患の根本原因に歯止めをかけることが強く望まれる。HBVエンベロープと感染受容体NTCPの間に形成される相互作用はHBV感染制御の観点から重要な創薬ターゲットであり、高精度可視化が長年待望されていた。 研究開始から1年に満たない期間で、NTCPとpreS1の分子間相互作用を原子レベルで解像することに世界で初めて成功した。HBVが宿主肝細胞表面に高親和性で付着する分子機構を解明し、感染制御・抗ウイルス薬開発の基盤を築いた。本成果はNature Structural & Molecular Biology誌にて発表した。以上から、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
①HBV細胞侵入超分子複合体の構成因子同定・試験管内再構成とクライオ電子顕微鏡構造解析 光作動性タンパク質化学架橋法を用いて、LHBs-NTCPと相互作用する宿主因子を捕捉する。培養細胞NTCP-HepG2に、DiazirineでケミカルラベルしたHBV粒子を添加し、ウイルス感染後のさまざまな光照射タイミングで宿主侵入共役因子を架橋する。化学架橋反応産物を細胞膜から可溶化してビオチンアフィニティー精製後、質量分析によりタンパク質種を特定する。候補因子群のshRNAによるノックダウン、またはCRISR-Casによるノックアウトを実施し、HBV感染モデル実験における表現型、感染の成立・不成立を解析する。以上の結果を総合して、HBV細胞侵入超分子複合体の構成因子を解明する。また、超分子複合体をin vitro再構成後、クライオ電子顕微鏡単粒子解析を行う。因子間の相互作用様式を解明し、新たなHBV感染抑制薬の標的を見出す。
②HBV感染阻害活性をもつ中分子医薬シーズの作用機序の構造学的解明 HBV感染抑制薬の開発において考慮すべき点は、感染受容体であるNTCPは胆汁酸の腸肝循環を担うトランスポーターでもある点である。分担者らは、NTCPの胆汁酸輸送活性を阻害せずにウイルス吸着のみを特異的に阻害するシクロスポリン誘導体や特殊環状ペプチドを同定・報告しており (Shimura et al., J. Hepatol., 2017; Passioura et al., Cell Chem. Biol., 2018)、副作用の少ない優れた抗HBV薬候補になると期待されている。これらがNTCPとどのように相互作用するのかをクライオ電子顕微鏡単粒子解析により解明する。得られた構造をNTCP-preS1複合体構造と重ね合わせることによって、感染阻害剤としての作用機序を検証する。
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