Project/Area Number |
23K27421
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Project/Area Number (Other) |
23H02730 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49060:Virology-related
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 陽 金沢医科大学, 医学部, 協力研究員 (30808077)
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
岩脇 隆夫 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (50342754)
茂田 大地 金沢医科大学, 医学部, 助教 (40974663)
友杉 充宏 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60533429)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,980,000 (Direct Cost: ¥14,600,000、Indirect Cost: ¥4,380,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,580,000 (Direct Cost: ¥6,600,000、Indirect Cost: ¥1,980,000)
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Keywords | 感染 / 母体免疫亢進 / エピゲノム / 急性肝細胞壊死 / 小胞体ストレス応答 / 腎糸球体 / 間質性腎炎 / 毛周期 |
Outline of Research at the Start |
世界的に流行している小児急性肝細胞壊死の原因は不明である。我々は、疑似ウイルスPoly I:C投与による母体免疫亢進(MIA)マウスから産まれた児に対して、出生後に再度Poly:IC投与を行うと、重篤な炎症と急性肝細胞壊死が誘発されることを見出した。これは、胎生期の母体炎症暴露が胎児の炎症刺激の調節機構に影響を与え、生後の再刺激により過剰な免疫応答と肝細胞壊死が引き起こされたことを示唆する。本研究では、我々が確立したMIA誘発急性肝細胞壊死の2ヒットモデルを用いて、この病態の解明に挑む。さらに、肝臓以外の臓器における影響についても明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザ感染を模した合成二本鎖RNAであるPoly(I:C)をマウス母獣腹腔内投与すると激しい母体免疫亢進(maternal immune activation, MIA)が惹起される。さらに、MIAに暴露した児が出生後にPoly(I:C)を再投与されると全身の過剰な炎症反応と急性肝細胞壊死が誘導される(2ヒットモデル)。 初年度は、2ヒットモデルで誘発される臓器障害の背景に、系統差および臓器特異性の有無を検証した。興味深いことに、先行研究で確認されたC57BL6/Jを用いたモデルで高頻度に誘発された急性肝細胞壊死が、ICRマウスを用いたモデルでは顕著ではなかった。しかし、肝臓以外の臓器、すなわち腎糸球体の萎縮や腎間質における細胞浸潤がICRマウスを用いた2ヒットモデルで観察された。これは、C57BL6/Jを用いた先行研究では見落とされていた所見である。すなわち、MIA暴露によって、腎糸球体が出生後の炎症によって組織障害を受けやすい状態に陥っている可能性を示唆するものであり、急性肝細胞壊死と同様の発症メカニズムが関与すると推察された。今回見出した腎臓の所見は、Brennerら (1994, 1996) が提唱した「糸球体数は胎児期に規定され,糸球体数が減少すると糸球体の血圧上昇や過濾過 による二次的変化によって糸球体硬化を生じ、これが更なる糸球体数の減少を引き起こし、その結果、出生後に腎機能障害を発症しやすくなる」という仮説(hyperfiltration theory) が、MIAの曝露によっても成立することを示唆する。また、ICRを用いた2ヒットモデルマウスの皮膚では、epidermal strandを有する毛包が多数観察されたことから、MIA暴露児では毛周期に変化を生じている可能性が考えられた。今後、炎症との関連も視野に入れ観察例を増やして検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2ヒットモデルにおける急性肝細胞壊死の再現性について、マウス系統を変えて検証したところ、急性肝細胞壊死の発症に系統差が存在することが示された。これは、当初予想していなかった結果であり、今後の解析において系統差を考慮した実験デザインの構築が必要であることが分かった。さらに、全身臓器の病理組織学的スクリーニングによって、肝臓以外にも腎臓および皮膚でMIA暴露に起因すると推定される組織障害所見が見いだされた。すなわち、2ヒットモデルにおいて、肝臓以外の臓器でも炎症に対する過敏性が亢進している可能性を示唆する結果であり、初年度の目的の一つであるMIA暴露が児の全身各臓器に及ぼす影響のスクリーニングに関しては、有意義な成果が得られたと評価できる。先行研究で見出した2ヒットモデルの背景因子の一つである小胞体ストレス応答関連分子の機能不全について、その原因として想定されるこれらの遺伝子群のエピゲノム修飾の解析の対象臓器の選定を行った。これまで解析を行ってきた脳および肝臓に加え、新たに全身の病理学的スクリーニングを実施することによって解析対象臓器として腎臓および皮膚が追加された。初年度は、これらの臓器における網羅的DNAメチル化解析を実施するための実験群の設定と、各実験群からの臓器のサンプリングまでを行った。メチル化解析は次年度に実施する予定である。また、MIA暴露児の臓器の初代培養を用いた2ヒットモデルのin vitro解析についても次年度以降に持ち越された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はマウス系統を広げるとともに、炎症誘発剤としてPoly (I:C)(ウイルスdsRNA、TLR3)以外に、LPS(細菌感染、TLR4)やイミキモド(細胞性免疫賦活化、TLR7)を用いて同様の解析を行う。肝臓、腎臓、皮膚、脳に加えて脾臓及び胸腺を対象として、小胞体ストレス応答の機能解析を行う。すなわち、BiPを始めとする主要なUPR関連分子のプロモーター領域のメチル化状況を解析する。また、MIAとの関連が知られているIL-6 依存的なDNA メチルトランスフェラーゼ 1 (DNMT1)プロモーターのメチル化解析を行う。さらに、MIA暴露児のアセチル化解析として、IL-17Aによるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性阻害を中心に解析する。2ndヒット後の in vivoおよび in vitro(初代培養)解析として、UPR主要経路の活性化または機能不全について、ライブイメージ解析を行う。炎症の調節機能を調べるために、制御性T細胞(Treg)数、CD4+T細胞およびマクロファージにおけるIL-6,IL-17Aの産生能をサイトカインパネル、フローサイトメトリーで評価する。肝臓におけるIL-6/STAT3の抑制系であるSOCS3の発現状況を調べる。さらにIL-17A依存的miRNAによる炎症制御機能やNFkB活性化を阻害するmiR-23b1などを中心に、炎症制御に関連するmiRNAの発現誘状況をmiRNAアレイとqPCRを用いて解析する。さらに、急性肝細胞壊死のキャンセルが可能かについて検討する。具体的には、MIA暴露児の肝細胞のメチル化阻害および脱メチル化を誘導し、急性肝細胞壊死の発症素因が消失するか検討する。さらに、脱メチル化剤であるDNMT1阻害剤をMIA暴露胎児および出生後の肝臓に注入し、2ndヒットによる幹細胞壊死の発症に対する抑制効果を調べる。
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