Project/Area Number |
23K27449
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Project/Area Number (Other) |
23H02758 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
吉田 健一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (50738226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 圭輔 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (00323569)
谷田部 恭 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90280809)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,540,000 (Direct Cost: ¥5,800,000、Indirect Cost: ¥1,740,000)
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Keywords | 肺がん / 正常組織 / 前がん病変 / 正常気管支上皮 |
Outline of Research at the Start |
がんは遺伝子異常により起こる疾患であるが、正常組織においても加齢や環境因子による遺伝子異常の蓄積によりクローン拡大をきたしており、早期の発がん機序の解明のためには正常組織や前がん病変における遺伝子異常を理解することが重要である。肺がんはがん死亡数が最も多いがんであるが、日本人に多い肺腺がんの発症する末梢気管支の正常組織や前がん病変に蓄積している遺伝子異常については理解が不十分である。本研究では肺の正常組織や前がん病変のオミックス解析を通じて、肺がんの起源となる正常細胞が遺伝子異常によって、前がん病変やがんへとクローン進化する過程を理解し、早期診断・治療や予後予測が可能となる標的の同定を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肺腺がんの発症する末梢肺の正常組織について、正常細胞に加齢や環境因子により遺伝子異常が蓄積し、さらに獲得された遺伝子異常により多様性の獲得やクローン拡大をきたす過程を明らかにするため、正常細胞や前がん病変のゲノム解析や空間的発現解析などのオミックス解析を行う。主に2つの方法で研究を行い、一つは肺がん手術検体などから採取した末梢肺組織を用いて、正常気管支上皮細胞(基底細胞あるいは2型肺胞上皮細胞)から単一細胞由来オルガノイドを作製し、全ゲノム解析を行う。遺伝子変異量や変異シグネチャーの解析により遺伝子変異の蓄積する過程を明らかにし、環境因子や加齢による遺伝子異常の蓄積を明らかにする。また、系統樹解析によりドライバー変異の獲得のタイミングについても解析する。もう一つの方法として、バイオバンクに保存されている肺がん手術検体を用いて、正常組織や肺前がん病変のゲノム解析を行う。正常組織および肺がん検体については新鮮凍結検体を用い、前がん病変についてはアーカイバルな組織が得られやすいFFPE検体を用い、正常組織や微小な前がん病変についてはレーザーマイクロダイセクションによりサンプルを抽出して、ゲノム解析を行う。さらにゲノム解析の結果を用いて最新の空間解析法である空間的発現解析を追加する。これらの結果により正常組織、前がん病変、がんとの遺伝子変異量やドライバー変異の違いやクローンの空間的拡大を明らかにする。 これまでのところ、正常気管支上皮細胞由来のオルガノイドの全ゲノム解析を行い、末梢気管支細胞では中枢気管支上皮細胞に比べて喫煙によると考えられる遺伝子異常が少ないことなどを明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでに13人の国立がん研究センター中央病院において肺がん疑いで手術を受けた症例から正常な中枢あるいは末梢の気管支上皮細胞由来のオルガノイド作製を行なった。その結果、十分な数のオルガノイドが作製できなかった6例を除いた7例から合計184個のオルガノイドが樹立された。7症例の背景疾患の内訳は肺腺がん(5例)、肺大細胞がん(1例)、炎症性病変(1例)であり、このうち4例が非喫煙者、3例が喫煙者であった。樹立されたオルガノイドのうち142検体について全ゲノム解析を行なった(症例あたり10-32個)。 末梢気管支の検体からはオルガノイドの樹立効率が低く、4検体のみで樹立可能であったが、4症例での比較では末梢気管支から樹立したオルガノイドにおいて遺伝子変異数が少ない傾向があり、特に喫煙歴のある症例では顕著であり、末梢気管支の方が喫煙による遺伝子変異の蓄積の影響が少ないと考えられた。さらに、オルガノイドで検出された変異(1塩基置換)の情報から変異シグネチャー解析を行なったところ、過去に肺がんで報告のあるSBS4、SBS5、SBS2、SBS13に加えて、新たなシグネチャーが検出され、過去の研究で喫煙との関連が報告されたSBS16であると考えられた。非喫煙者由来あるいは末梢気管支上皮細胞由来のオルガノイドでは喫煙に関連する変異シグネチャーであるSBS4の変異が少ない傾向が見られ、末梢肺で遺伝子変異が少ないことを裏付ける所見であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はオルガノイド検体についてはドライバー遺伝子の解析やクローン構造の解析を進め、ドライバー変異によるクローン進化が見られているか解析する。また、オルガノイドを樹立した症例に発生した肺がん検体の解析を行い、正常細胞が蓄積した遺伝子異常を背景に、がんへとクローン進化する過程をさらに明らかにする必要がある。また、飲酒など喫煙以外の環境因子や遺伝学的背景との気管支上皮細胞におけるゲノム異常の関係や、女性に多いという性別差や日本人に多い原因についてもさらに症例を増やして解析する必要がある。 正常気管支におけるクローン拡大について明らかにするため、レーザーマイクロダイセクションによる微小サンプリングにより、正常気管支上皮や前がん病変のゲノム解析を行い、クローン拡大を解析する予定である。さらにゲノム解析の結果を用いて最新の空間解析法である空間的発現解析を追加する。これらの結果により正常組織、前がん病変、がんとの遺伝子変異量やドライバー変異の違いやクローンの空間的拡大を明らかにする。
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