Project/Area Number |
23K28215
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Project/Area Number (Other) |
23H03525 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐藤 悠 山口大学, 大学研究推進機構, 助教(テニュアトラック) (90852187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 悠 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), Young Research Fellow (70868265)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,720,000 (Direct Cost: ¥14,400,000、Indirect Cost: ¥4,320,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
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Keywords | 温度適応 / 生育温度範囲 / 地下圏微生物 / 境界域 / メタゲノム解析 |
Outline of Research at the Start |
温度は生命活動の重要な律速要因の1つであり、生態系の基盤を担う微生物は、氷点下にもなる南極の塩湖から100°Cを越える深海の熱水噴出 孔まで多様な温度の環境から見つかる。生育温度“範囲”に着目すると、多くの微生物は最低生育温度と最高生育温度との差が30°Cであるの に対し、50°C以上の幅広い温度域で増殖可能な「広」温菌も存在する。本研究では「何が増殖可能な温度範囲を決定づけるのか?」を解明する ため、広温菌を対象として(i) 広温域への適応機構の解明と(ii)環境中での多様性評価に取り組み、幅広い温度範囲で利用可能な微生物資源を 拡充、および、生態系における広温菌の機能的重要性の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
温度は生命活動の重要な律速要因の1つであり、生態系の基盤を担う微生物は、氷点下にもなる南極の塩湖から100℃を越える深海の熱水噴出孔まで多様な温度の環境から見つかる。生育温度“範囲”に着目すると、多くの微生物は最低生育温度と最高生育温度との差が30℃であるのに対し、50℃以上の幅広い温度域で増殖可能な「広」温菌も存在する。本研究では「何が増殖可能な温度範囲を決定づけるのか?」を解明するため、広温菌を対象として(i)広温域への適応機構の解明と(ii)環境中での多様性評価に取り組む。具体的には、広温菌とそれ以外の微生物との比較ゲノム解析を行い、広温菌に特徴的な遺伝子を抽出し、分子生物学的アプローチにより広温域への適応機構を実証する。また、海水や河川水といった“低温な表層水”と、温泉などの“高温な地下水”が混合する温度変動環境を対象とした遺伝子解析を通じて、広温菌の多様性評価を行う。本研究の遂行により、幅広い温度範囲で利用可能な微生物資源の拡充のみならず、生態系における広温菌の機能的重要性を明らかにする。 本年度は原核生物の生育温度データベースを用いて、低温菌、中温菌、広温菌を含む分類群を絞り込み比較ゲノム解析を行なった。その結果、複数の分類群にわたって共通して広温菌にのみ存在する遺伝子群を見つけている。また、20℃から80℃まで増殖可能な広温菌であるKosmotoga olearia由来の酵素群の機能解析を行った。その結果、系統的に近縁な中温菌や好熱菌由来の同じ機能をもつ酵素群と比較して、一部の酵素が幅広い温度範囲にわたって機能できることを突き止めた。環境由来の広温菌の探索に関しては、複数箇所の河川と温泉の混合域において環境分析や試料採取、遺伝子解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、比較ゲノム解析に基づき既存の広温菌に共通した遺伝子群を特定できている。特定した遺伝子の中にはこれまで温度適応に関わるとされてきた脂質の合成や分解、各種シャペロンタンパク質等に加えて、従来温度適応に関わるとの報告例がない遺伝子群も含まれており、新たな温度適応機構の探索に関する手がかりとなりうる。また、培養可能な広温菌由来の酵素について、大腸菌での異種発現が可能な条件の絞り込みを終えており、今後別の酵素を機能解析する際にも利用可能である。加えて、培養可能な広温菌へのプラスミド導入を検証しており、いくつかの変異株を取得できているため遺伝子操作技術の開発に関して期待が持てた。さらに、温度域の異なる地下水試料を20カ所収集して、菌叢解析ならびにメタゲノム解析に供しており、広温菌候補株の探索のために必要な遺伝情報を入手済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も広温菌を対象として(i)酵素の機能解析、(ii)単離株の変異解析、(iii)環境中の多様性解析を進める。(i)に関しては、K. oleariaがゲノム上に1コピーしか持たない、かつ、増殖に必須な酵素遺伝子に限定して酵素機能解析を進める。現在は、DNAやRNAの合成や細胞分裂、推定されている中央代謝経路に関わる酵素の機能解析を進めている。(ii)に関してはK. oleariaをはじめとする培養可能な広温菌の変異導入技術の開発を行う。同時に大腸菌での異種発現を用いて、比較ゲノム解析により特定した広温菌特有の遺伝子群が、大腸菌の生育温度範囲に及ぼす影響の評価を進める。 (iii)に関しては、現在も試料採取を継続しており、地表水(河川や海洋、湖沼)と高温な温泉水の混合域の探索を続けている。また、すでに採取した試料に関しては菌叢解析を行い、全ての温度域で検出される広温菌候補株を特定する。同時並行にて既存のデータベースより環境温度の情報と紐づけられたメタゲノムデータを収集しており、本研究にて特定した広温菌候補株が幅広い温度範囲から検出されているかを検証し、結果をより確かなものとする。また、採取した試料を用いて集積・単離培養も進めており、広温菌資源の取得にも挑戦する。
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