台湾の民主化が生み出す文化的再編成―台湾性・日本性・中国性をめぐる競合と共生
Project/Area Number |
23K28311
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Project/Area Number (Other) |
23H03621 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 初梅 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (20609573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所澤 潤 立正大学, 心理学部, 教授 (00235722)
黄 英哲 愛知大学, 現代中国学部, 教授 (10410557)
吉田 真悟 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 講師 (10935977)
石井 清輝 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (30555206)
菅野 敦志 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70367142)
野入 直美 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (90264465)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥15,730,000 (Direct Cost: ¥12,100,000、Indirect Cost: ¥3,630,000)
Fiscal Year 2027: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 台湾 / 民主化 / アイデンティティ / 日本性 / 中国性 / 言語意識 / 歴史観 / 共生 |
Outline of Research at the Start |
台湾の民主化運動の始動は1970年代末期に遡り、現在までに40年ほどの歴史がある。民主化の潮流の中で台湾を構成する多元的な歴史文化が自由に語られるようになったため、台湾を構成する多様な文化―「台湾性」と「日本性」と「中国性」は、しばしば激しく対立するが、協調、妥協、再解釈などの過程を経て、新たな価値を創生し、共有されていく場合も多い。本研究は、台湾人のアイデンティティ形成にまつわる文化的再編成の過程に着眼し、新しい価値観を育んできたこの40年間の歴史を捕捉することを目的とし、さらに「不調和の中での共生」という新しい社会の編成原理=「新たな台湾性」が形成されつつあることにも注目し分析を進めたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
「台湾の民主化が生み出す文化的再編成―台湾性・日本性・中国性をめぐる競合と共生」と題する本研究は、民主化運動以降、台湾人の言語意識と歴史認識をめぐる文化的再編成の諸相を解明することを目的としている。そのため、言語班と歴史班に分けて実地調査を行い、研究を進めている。2023年度は、関連論文の発表成果も若干あったが、以下のように現地調査と聞き取り調査を中心に進めた。 言語班は、若い世代の台湾人の台湾語と台湾華語に対する言語意識を探るために、言語自画像(language portrait)を用いたインタビュー調査を続け、2023年度は夏期に台湾で2名の調査を実施した。また、台湾の学校で実施されている多言語教育の実態調査を行った。特に教育効果および言語間の競合と共生の問題を視野に、台湾における本土言語教育、新住民言語教育、英語教育の導入経緯と現状を調べた。 歴史班は、戦前の日本統治時期から1970年代の民主化時期まで、日本人によってもたらされた日本性及び戦後外省人によってもたらされた中国性を焦点に置き、戦前から戦後までの様々な展開を調査した。具体的にいえば、日本植民地下の台湾への沖縄からの渡航と就労について実証的研究を進めた。また戦後初期台湾省行政長官時期における「脱日本化」「再中国化」文化再構築政策執行のキーパーソンであった許寿裳の台湾大学中国文学系主任(1946-1947)時期の思想や行動も調査した。さらに、台湾引揚者の戦後は台湾の民主化にどのようにかかわっていたかを解明するため、台湾引揚研究会を立ち上げ、定期的に研究会を行っていた。具体的に1945年以後、民主化期までを含む日台同窓生のネットワークと相互作用に関する実態調査を進めただけではなく、引揚者やその遺族に対する聞き取り調査を行い、引揚者の角度からの戦前・戦後の台湾人の価値観の変化およびその経験についても調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は台湾性、日本性、中国性が交錯する様子に光を当てながら、台湾の「文化的再編成」の過程を捕捉しようとするものである。分析の焦点を歴史観と言語観の二つの文化的な側面に置き、競合から共生へ向かう台湾社会を立体的に捉えるのが目標である。特に注目したいのは、歴史認識と言語意識が変化していく過程で、日本性、中国性をめぐる議論がどのように変化し、深まってきたかということである。従って、2023年度に言語班と歴史班が行った調査内容は、研究趣旨に沿ったものであった。特に現地調査と聞き取り採集が実を結び、一定の成果を上げられたので、本年度は多くの分析資料が得られた。また定期的に開催されてきた研究会も議論を深める場として機能し、多くの知見が蓄積された。そのため、研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
言語班は、今後も学校教育及び台湾人の言語意識の変化に注目し、現地調査とインタビュー調査を続けていく予定である。というのも、近年、台湾の言語教育は非常に多様化しているからである。中国語や台湾本土言語や新住民言語教育が導入されているだけではなく、英語を強化するバイリンガル教育も提案され、検討されている。そのため、2024年度においては、台湾における多言語教育の現状を分析しながらも、各言語に対する台湾人の言語意識及び世代間の相違点を調査し続けていきたい。言語間の対立と共存のあり方を通して中国性と台湾性の関係性を理解することができると考えるからである。 歴史班も同様に現地調査とインタビュー調査を続けていく予定であるが、異なる集団それぞれの内部における共通認識の形成と、集団間での相違性の認識の深化とを系統的に整理することを目指す。それにより、日本性、中国性をめぐる議論がどのような文脈で展開され、どのように異質性が架橋され、共有されていくかを解明することができると考える。 2024年度は台湾引揚者と台湾の民主化との関わりに焦点を置き、民主化期までを含む日台同窓生のネットワークと相互作用に関する調査を行い、台湾引揚研究国際シンポジウムの開催を予定している。それは、2023年度の調査において台湾の民主化には台湾引揚者が関わっており、台湾における日本的要素の形成にも一定の影響力を与えていることが判明したからである。例えば、1960年代にパスポートを取り消された台湾独立運動者が日本から国外追放される際、当時入国管理局官員だった台湾引揚者に助けられたというエピソードがある(辜寬敏(竹内昭太郎著『台湾島は永遠に在る』中国語訳本)序文による)。そこで、本研究は、2024年度に日本と台湾の関連研究者を招き、台湾引揚研究国際シンポジウムを開催し、台湾における日本性の形成についてより深い議論が行われる場としたいと考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(13 results)