Project/Area Number |
23K28434
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Project/Area Number (Other) |
23H03745 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90120:Biomaterials-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
長崎 健 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30237507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 夏子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (00582131)
河崎 陸 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40836194)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,680,000 (Direct Cost: ¥13,600,000、Indirect Cost: ¥4,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
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Keywords | がん治療 / ホウ素中性子捕捉療法 / マクロファージ / 薬物送達システム / がん微小環境 / がん関連マクロファージ / 薬剤送達システム / BNCT / DDS |
Outline of Research at the Start |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、がん細胞の殺傷能力が高く優れたポテンシャルを秘めているものの、最終的には再発・転移により完治に至らないケースが多い。この原因の一つとして、がん関連マクロファージ(TAM)の関与が挙げられる。本研究では、TAM M2→M1極性制御剤をbet a-1,3-グルカンをキャリアとするDDSにより効率的・選択的にM2マクロファージに送達し、TAM極性制御によるがん微小環境の悪化を防ぎ、がん免疫活性を増強し、BNCTにおける併用増感効果等の影響を検討することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージ極性制御剤であるオールトランスレチノイン酸(ATRA)を用いてBNCTとの併用による抗腫瘍効果増大を目指した。ATRAはSTAT3シグナル伝達経路を抑制することでマクロファージの極性をM2型からM1型へとシフトチェンジさせるが、難水溶性という問題点を持つ。そこでマクロファージの膜タンパクであるdectin-1のリガンドとして機能するβ-1,3-グルカン(β-GC)を可溶化剤として用いて包接することでTAM標的型ナノゲル製剤の作製を試みた。さらにBNCTとTAM極性制御剤を併用することによる微小環境制御および抗腫瘍効果への影響を確認した。 ATRA濃度266 μMの水溶液の調製に成功した。粒径は23.8 nm、Z電位は-38.6 mVとなり、薬剤のナノ粒子化に成功し、血中安定性も期待できる結果となった。BPA-BNCTでの併用実験では、併用治療群はBPA単独群と比べて、腫瘍の体積増加を効果的に抑えた。さらに両群で20日目付近から腫瘍の再増大が観測されたが、併用治療群はその後も比較的低い腫瘍体積の増加を維持した。中性子照射8日後に腫瘍組織切片を作製しM1型のマーカーであるiNOSの免疫組織染色を行った。iNOS陽性細胞であるM1表現型マクロファージの細胞数の割合変化を見ると、照射7 日後でATRA/β-GCナノゲルを投与しBNCTとの併用治療群では約5 %の陽性率を示し、BNCT単独群0.6%に比べて顕著に高い結果となった。これは、ATRA/β-GCナノゲルが照射後に浸潤したマクロファージに取り込まれた後、ATRAの作用によりM1表現型になったためであると考えられる。それにより腫瘍増殖抑制効果の増強に影響したと示唆される。以上の結果から、BNCT治療におけるTAM極性制御剤の併用は、治療後のがん微小環境内のM1型TAMを増強し抗腫瘍効果に関与していると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画として、STAT3阻害剤とβ-1,3-グルカンとの複合化ナノゲルを調製し物性評価することと、マウス扁平上皮がん細胞移植モデルに対して京都大学複合原子力科学研究所にて中性子照射1時間前にL-BPAを皮下投与するBNCT評価系を実施する際、マクロファージ極性制御剤/β-1,3-グルカンナノゲル投与の腫瘍増殖抑制効果を評価し、腫瘍関連マクロファージの極性制御によるBNCT効果への影響を検討することを予定していた。それに対して、ATRA/β-GCナノゲル水溶液においてATRAの濃度が266 μMと高濃度溶液の作製に成功した。また、粒径は23.8 nm、Z電位は-38.6 mVとなり、薬剤のナノ粒子化に成功し、血中安定性も期待できる結果となった。BPA-BNCTでの併用実験では、併用治療群はBPA単独群と比べて、腫瘍の体積増加を効果的に抑制した。さらに両群で20日目付近から腫瘍の再発が観測されたが、併用治療群はその後も比較的低い腫瘍体積の増加を維持した。この結果から、BNCT治療におけるTAM極性制御剤の有無は、治療後の腫瘍組織に影響を与え、それにはがん微小環境内のM1型TAMの増減が関与していると示唆される知見などが得られ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子照射およびATRA/β-GCナノゲル投与前後のTAMの表現型を昨年度はM1に絞って確認したので、今後はM2表現型マクロファージの観察も含めて詳細に評価する必要がある。その際、組織切片の組織化学免疫染色のみならず、組織からのmRNAを抽出し、がん微小環境内のM1型、M2型TAM関連タンパクのm-RNAの定量も必要である。更なる薬剤能の向上を検討およびBNCTとの併用に関する条件設定(薬剤ナノゲルの投与タイミングや投与量など)の見直しや、ATRA以外でのマクロファージ極性制御薬剤(シコニン、アルステネート)やがん微小環境における制御性T細胞の活性制御剤(1-メチルトリプトファン、スルファモノメトキシンなど)の適用も必要であると考えられる。また、近赤外蛍光プローブ(インドシアニングリーン)ラベル化ナノゲルを用いて、マウス扁平上皮がん移植モデルに尾静脈投与により体内動態を既存のインビボイメージング装置を用いて評価する。さらに、極性制御剤候補化合物/β-1,3-グルカンナノゲルの腫瘍組織におけるマクロファージ細胞選択性や細胞内移行を組織切片に対する蛍光顕微鏡観察し確認する。その際、マウスマクロファージのマーカーであるF4/80 (+)細胞群のM1(CD86, TLR4, TNF-a, iNOS)・M2(CD204, CD206, IL-10)マクロファージマーカーのタンパク質・遺伝子発現量の経時的変化(投与1日目から14日目まで)をもとに、TAMの極性比率にM2→M1極性制御剤の投与が及ぼす経時的効果を評価する。
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