Project/Area Number |
23KF0008
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
馬塲 一晴 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (60608719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BHATTACHARYA KRISHNAKANTA 福島大学, 共生システム理工学類, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | ブラックホール / ブラックホール熱力学 / 修正重力理論 / 重力波 / 強剛性定理 / 質量の正値性定理 / 相転移 / 流体-重力対応 |
Outline of Research at the Start |
近年の宇宙論的な観測により,現在の宇宙が加速的に膨張していることが明らかにされました.この現象を説明する有効な手立ての一つとして,長距離スケールで一般相対性理論を修正する方法があります.受入研究者は外国人特別研究員と共同して,ブラックホールにおける熱力学の考察から,修正重力理論のもつ理論的特性を研究します.一方,最近のブラックホールシャドウの撮像やブラックホール連星等からの重力波の観測を用いて,重力理論が一般相対性理論からどのようにずれる可能性があるのかを考察します.そして,多くの修正重力理論の中から,より現実的な重力理論を選び出す手がかりを探ります.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,修正重力理論におけるブラックホール解に関して強剛性定理,熱力学的法則,質量の正値性定理を考察する.加えて,重力波および準ノーマルモードに関する観測を用いて,修正重力理論の観測的制限を導出する.そして,多くの修正重力理論の中からより現実的な理論を選別することを目的とする.本研究課題の意義は,重力のもつ普遍的性質と重力の量子化への理解に繋がる可能性を有することである.令和5年度の研究実績は下記のようにまとめられる.
(1)一般的かつ共形的な方法を用いて,ブラックホールにおける拡張された位相空間での熱力学が一般相対性理論の枠組みを超えた重力理論においても成立し得ることを明らかにした.さらに,アインシュタイン方程式のような動的な方程式自体からブラックホールにおける熱力学第一法則およびその積分に相当するSmarr公式が得られることを示した. (2)スカラー・テンソル理論および高次曲率項をもつ重力理論において,ブラックホール熱力学並びに流体-重力対応の両方に関連する拡張されたBrown-York形式を提唱した.さらに,熱力学的なパラメータは共形不変である一方,流体に関するパラメータは共形不変性をもたないことを明らかにした.それにも関わらず,エントロピー密度に対するせん断粘性の比に関するKSS限界は満たされることを示した.加えて,Brown-York形式において境界項は相補的な役割を果たすことを解明した. (3)相転移現象はブラックホール熱力学における最重要課題の一つであり,従来ブラックホールにおける相転移現象については,Van der Waals相転移およびHawking-Page相転移に対してのみトポロジカルな物理的解釈が行われてきた.我々は,極値型相転移およびDavies型相転移に対してもトポロジカルな物理的解釈が得られることを示した(現在学術論文に投稿し査読中である).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,ブラックホールの理論的・観測的性質の考察を通じて,一般相対性理論からの拡張に対する制限を得ることを目的とする.令和5年度の研究計画では,修正重力理論におけるブラックホールの理論的特性の解明を目標にして,下記の研究進捗が得られている. (i)一般相対性理論では,外的な物質場の存在により時空の幾何学がどのように影響されるかを解析し得る.しかし,時空における時間依存性をもたらす物理機構は未だ解明されていない.我々は,一般相対性理論を拡張した重力理論において,バルクと表面の自由度が厳密に一致して時空が定常になる「ホログラフィック等分配」の原理に関する研究を進めている.等分配からのずれにより,時空における時間依存性が現れる.加えて,ホログラフィック等分配則の解析から興味深い拘束関係式が得られる可能性を明らかにしつつある. (ii)拡張重力理論における流体-重力対応の研究により,流体に関するパラメータは共形的に等価ではないため,既存の流体-重力対応の記述形式は未だ十分ではないことが明らかにされた.加えて,流体-重力対応のアナロジーを示唆するDamour-Navier-Stokes方程式は,流体の運動を記述する動的な方程式であるNavier-Stokes方程式と厳密には同等ではないことから,流体-重力対応の理論を再考察している. (iii)理論的ブラックホールは内的地平線と外的地平線をもつ.外的な地平線が事象の地平線の役割を果たすが,熱力学的な特性は双方の地平線に起因する.特に,内的地平線と外的地平線が一致する極限ブラックホールでは,温度が零においても有限のエントロピーをもつ可能性があるが,未だ解明されておらず,現在この問題の研究を進めている.
上述の研究は,本研究課題の目的達成に向けて十分に資する内容であることから,現在までの研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では,ブラックホールの物理学を切り口として,一般相対性理論の拡張に対する理論的特性と観測的制限を解析することを目標とする.今後の推進方策として,次の二つの研究課題を遂行する.
第一に,修正重力理論においてブラックホール解の強剛性定理,熱力学的性質,質量の正値性定理に関する理論的考察を行う.修正重力理論において強剛性定理が成立するかどうかは,未だ十分に明らかにされていない.また,優勢エネルギー条件を用いてブラックホール地平線の表面重力の整合性を考察し,高次曲率項をもつ重力理論においてブラックホール熱力学第零法則が成り立つことを一般的に証明する.さらに,重力エネルギーの大域的定義であるADM質量を用いて,質量の正値性定理が一般相対性理論のみならず修正重力理論でも一般的に成立するかどうかを解明する.
第二に,中性子星連星の合体からの重力波を用いて,修正重力理論に関する観測的制限を考察する.近年,重力波と電磁波の信号到達時刻のずれが観測され,修正重力理論の検証する手立てとして注目されている.そこで,重力と物質の非最小結合項をもつ重力理論において時間の遅れを適用し,高次曲率の結合項への観測的制限を求める.また,現象論的アプローチを通じて,ブラックホールの事象の地平線に関するホーキングのトポロジー定理が破れるトロイダル型の解を導出するとともに,その準ノーマルモードの一般的特性を解明する.さらに,ブラックホール地平線の境界条件を取り込んで準ノーマルモードのスペクトルを解析し,中性子星連星の合体後に観測される信号の反響の性質を明らかにする.
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