Project/Area Number |
23KF0014
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 17050:Biogeosciences-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板井 啓明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60554467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GHOSH RUPAM 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 太古代 / 海洋 / 微量元素 / 地球化学 / 共沈 / 生命の起源 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、太古代に堆積したBIFの生成過程について、その観測されている微量元素濃度を説明できるプロセスとして、非晶質鉄ケイ酸塩 (HFS) の沈殿と、メタン酸化菌の働きを伴う水和鉄酸化物 (HFO) への変換プロセスに着目した研究を展開する。インドで採取されたBIFの化学分析に加え、HFSの合成法確立と、先端的分光分析法を応用した微量元素分配実験による化学反応素過程解析を実施し、フィールドデータの解釈にフィードバックする。これらを通し、太古大の生物地球化学過程について新たな仮説を提唱する。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究で、先カンブリア時代の海洋における鉄系鉱物の生成は、海水組成の化学的進化や生物進化に大きな影響を与えたと考えられている。今年度、Rupam博士は、鉄の酸水酸化物(HFO)とケイ酸塩鉄 (グリーナライト) への微量元素の共沈実験を実施し、太古代海洋水塊の鉛直構造と化学構造に関する仮説を提唱した。実験結果から、太古代海水条件下でのHFOとグリーナライトの共沈時のNi、Co、Znの鉛直分布は、グリーナライトとHFOの比、および太古代海水の鉛直不均質性に比例すると考えられた。このモデルに基づくと、深海で形成されたグリーナライトは速やかに海水と熱水起源微量金属に接触し、海水からZnが急速に除去されたと推定された。一方、浅海では、深海に残留した熱水成分の輸送の遅れと、有光層でのHFO沈澱による微量金属の吸着除去が優勢になったとが示唆されたと考えられる。自生BIFのFeケイ酸塩とマグネタイト中の微量元素のLA-ICP-MSによる分析結果、グリーナライトおよびHFO鉱物によるNi、Co、Znの共沈実験結果、初期太古代BIFでは世界的にZn同位体分別が認められない事実を併せて解釈すると、Znは太古代を通じて (1) 深海おけるFeケイ酸塩沈殿物との共沈、(2) photoferrotroph細菌によるHFO生成、により除去されてきたことを示した。本研究のデータは、太古代海水がZnよりも高い溶存NiとCoを有していたことを示唆しており、生物起源メタン生成におけるNiとCoの金属酵素への高い依存性と整合的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の当初目標は、2つの部分に分けられる。 (i) 原生代の海洋における初期生命のための生物必須栄養素とその制限要因 (鉄鉱物を想定) を定量的に理解すること、 (ii) 原生代の過酷な状況下での生命存在のための微生物-鉱物相互作用に関する仮説を提唱することであった。1年目は目標の前半部分に取り組み、上述の知見を得た。研究結果はNature Geoscience誌に投稿し、現在査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初目標の後半部分を実施する。原生代海水条件下でのFe鉱物(例:グリナライト)の鉱物-微生物相互作用をシミュレーションするための実験系開発が重要な位置を占める。究極の目標は、初期の生物(例えば、メタン生成菌や化学合成栄養生物を含む原核生物)が、微量栄養素を取得するためにFe鉱物を分解する能力があるかどうかを検証する点にあった。この実験系を立ち上げるためには、現在使用している嫌気実験システムを進化させ、広範な嫌気性微生物実験が可能な環境を作り上げる必要がある。実験系を確立後、原生代海洋におけるFeとSiの循環と、初期の生命圏誕生の必要条件について制約を与えられるような実験を推進する予定である。
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