Project/Area Number |
23KF0044
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 90030:Cognitive science-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 裕子 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (60621670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BEJINHA GONCALVES ANDRE 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 比較認知科学 / 死生観 / 概念形成 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「他個体の死」の認識について、ヒトとチンパンジーを対象に実験的に検討する。これまで、有生性(アニマシー、Animacy)については多くの研究が行われてお り、ヒトや他の動物が、どのような条件のもと対象を生物と認識するのか見当されてきた。その一方で、死に対する認識はほとんど実証的な研究は行われてこなかった。 そこで本研究では、それぞれの種が「生存個体/死亡個体」を判断する際の知覚的手掛かりについてまず明らかにする。また、アイトラッカーやサーモカメラなどを用いた分析も加えることで、各カテゴリの刺激に対する感受性を比較することで、ヒトのもつ「死生観」の生物的基盤および特異性について検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまで、ヒト以外の動物を対象に死の概念および知覚に関する実験的研究は行われていない。本研究は、初めてヒト以外の霊長類を対象に死亡個体を認識する際に用いられる手がかりの特徴を明らかにすることを目的とし、実験を行った。これまでの研究では、死の視覚的な手がかりとなる指標は、自立した運動、傷害、腐敗という3つの核となる手がかりに集約されることが示唆されている。ヒトとチンパンジーの系統発生的な関係を考えると、チンパンジーは死に関連する刺激に関する分類と概念形成の複雑さを探るための有望な手段であると考えられる。そこで本年度は、タッチスクリーンを用いて、チンパンジーが生きている動物と死亡した動物の画像を象徴的かつ指標的に分類する能力を評価した。 哺乳類および鳥類の画像を用いて、人が死亡個体と認識できる画像と、そうでない(眠っている、休んでいる)画像を用いて、象徴見本合わせ課題を訓練した。 訓練段階に続いて、最初の合格基準では、連続したセッション(1セッションあたり48試行)では決して繰り返されない新しい動物の画像セットを提示し、新しい刺激がどの程度この2つの記号(死亡している個体の画像か、生きている個体の画像か)に一般化されるかを評価した。刺激提示後、チンパンジーは正解が1つしかない2つの選択肢から1つを選ばなければならなかった。特定の刺激セット(鳥類、げっ歯類等)について、チンパンジーが基準したことが認められると、実験フェーズに移行させ、更に新しいカテゴリの刺激セットを訓練することで、様々な種を含む画像刺激において、死亡個体と生存個体を含む画像を弁別できるように訓練した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画されている2つの実験のうち、最初の実験(サンプルとのマッチング)はトレーニング段階で進行中である。チンパンジーが死に関連する刺激をどのように知覚するかを調べるための訓練はチンパンジーにとって難易度が高く、訓練は継続中である。見本合わせ課題に関しては、刺激画像と全く関係ないシンボルを当初用いていたが、訓練に非常に時間がかかったため、見本刺激を各種画像の特徴を取り入れたプロトタイプ・マッチングにしたところ、訓練の速さが向上した。今後さらに訓練を進めると共に、各段階でのテストフェーズでの反応を分析することで、チンパンジーがそれぞれのカテゴリに対して、どのような視覚的特徴に基づいて弁別するように学習したのかを明らかにする予定である。また、この実験に平行して、アイトラッキングとサーモグラフィを融合させたハイブリッド測定によって、死亡個体や損傷が激しい生体に対する注視パターンや生理反応を測定することで、チンパンジーがもつ死生観の概念的帰属メカニズムだけではなく、知覚・生理反応の特徴についても解明するための準備も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
死生観の比較認知科学的研究はまだ新しい分野である。画像を用いた死亡個体・生存個体の弁熱や概念獲得についての実験をさらにすすめるとともに、今後以下の点について、ヒトとヒト以外の霊長類の相違点について明らかにする予定である: 1)死んでいる個体に実際遭遇した場合、ヒトとヒト以外の霊長類の間にどのような類似点が見られるか。2)そのような反応の根底にはどのような心理的メカニズムが関係しているのか。ヒトとの同様にチンパンジーも、栄養、危険、同種の動物といった重要な情報を識別するために、多くの感覚入力をナビゲートしており、分類という行為を通じて、物体や事象を概念化することで明確なカテゴリごとの信号/手がかりを区別していると考えられる。そのため、今後は各カテゴリに想定される刺激、もしくは明確な判断基準をえることが難しい刺激を用いて、現在行っているカテゴリ弁別課題や、視線追跡実験を行うことを計画している。チンパンジーが(ヒトにとって)相反する情報を(ヒトと同様に)異なるように処理するかどうかを調べるるために、視線追跡実験では、2つの異なる文脈(動画として提示される刺激が生きていると想定される文脈、および死んでいると想定される文脈)を作成し、それらをビデオを刺激として提示している間の注視行動も測定する。
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