Project/Area Number |
23KF0146
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 39040:Plant protection science-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹本 大吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30456587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CAMAGNA MAURIZIO 名古屋大学, 生命農学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-09-27 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | ファイトアレキシン / ナス科植物 / 生合成経路 |
Outline of Research at the Start |
ナス科植物はジャガイモ、トマト、ピーマンなど、主要作物を多く含む植物群である。しかし、病原菌の感染による損失は甚大であり、抵抗性を向上した品種の育種が求められている。その有効な手段として、抗菌物質を多く生産する品種の利用が挙げられるが、ナス科植物での生合成機構は殆ど明らかになっていない。 本研究は、1)ジャガイモ/トマトの抗菌物質であるリシチンの生合成酵素遺伝子群の特定、2)ナス科の新規抗菌物質の精製と構造決定、3)ナス科植物の抗菌物質生合成系の進化過程の解明、という3つの目標を持って取り組み、「耐病性の高いナス科植物の育種に資する基盤的な情報を提供」して農学に貢献することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ナス科植物は、ジャガイモ、トマト、ピーマン、ナスなど、世界の主要な作物を多く含む重要な植物群である。しかし、ナス科作物の病原菌の感染による損失は甚大であり、病害抵抗性を向上した品種の育種が急務である。植物が病原菌の感染に対抗して生産する抗菌性の二次代謝産物はファイトアレキシンと総称される。ナス科植物は種によって異なるファイトアレキシを生産するが、いずれもメバロン酸経路を介して生産されるファルネシル二リン酸を前駆体として合成されるセスキテルペノイドであり、その生合成経路は部分的に関連している。しかし、ナス科植物のファイトアレキシン生合成酵素遺伝子は殆ど特定されていない。本研究では、1) ジャガイモとトマトの生産するリシチンの生合成酵素遺伝子の全容を明らかにする、2) ペチュニアなど、ファイトアレキシンの解析が進んでいない種について、生産するファイトアレキシンの特定と新規物質の場合にはその精製と構造決定を行う、3) ナス科植物のゲノム構造およびトランスクリプトーム比較解析によるファイトアレキシン生合成酵素遺伝子群を比較解析する、という3つの取り組みを通して、ナス科植物の進化の過程でファイトアレキシン生合成系がどのように発展し多様化したか、その解明を目指す。2023年9月以降の半年間では、ジャガイモの品種ごとに生産されるファイトアレキシン(リシチン、ルビミン、オキシルビミンなど)の種類や割合が多様であること、ペチュニアの葉では主にルビミンが生産され、やはり系統によって生産性が多様であることが示された。またペチュニアからは、これまでに報告例のない新規のファイトアレキシンを見出した。またジャガイモ品種やペチュニアのRNAseq解析から、リシチン生合成酵素およびルビミン生合成酵素の候補遺伝子のリストが作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ジャガイモ品種間のファイトアレキシン合成の多様性の解析を進め、そのRNAseqデータと比較することで、ファイトアレキシン生合成酵素の候補遺伝子のリストが作成できた。また、ペチュニアにおいてジャガイモやトマトで生産されるリシチンの前駆体であるルビミンが生産されることが示され、そのRNAseq解析のデータからルビミンまでの生合成に関わる酵素遺伝子の候補を絞り込むことができた。これらの成果から、今年度はリシチン生合成酵素遺伝子の機能解析を進める上で基盤となる重要なデータが得られた。これらの進行状況から、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)リシチンの生合成酵素遺伝子群の全容解明、2) ペチュニアなど、ファイトアレキシンの解析が進んでいない種について、生産するファイトアレキシンの特定と新規物質の構造決定、3) ナス科植物のゲノム構造およびトランスクリプトーム比較解析によるファイトアレキシン生合成酵素遺伝子群を比較解析、という3つの目標を軸に研究を進める。 1) ペチュニアを用いた機能解析を進める。本年度、アグロバクテリウムを介したペチュニア葉での一過的遺伝子発現系を確立した。また、効率は低いものの、ペチュニア葉でのウイルス誘導型遺伝子サイレンシングが可能であることを確認している。そこで、ルビミンを生産するペチュニアにおいて、ルビミンまでの生合成に関わる酵素遺伝子候補をサイレンシングしてルビミンの生産量を評価する。また、今年度に得られたRNAseqデータをもとに、リシチン合成酵素の候補遺伝子をペチュニアで一過的に発現させ、ルビミンが次に代謝物に変換されるかを検定する。2) ペチュニアにおいて、エリシター処理後に生産が増加する産物をGC/MSで検出したところ、リシチン、ルビミン、オキシルビミンなど、トマトやジャガイモで生産されるファイトアレキシンとは構造の異なる新規のセスキテルペノイドが検出された。そこで、今年度は、新規物質の精製を行い構造の決定を試みる。十分量の物質が得られた場合には、その抗菌性を既知の物質と比較する。3) 種々のナス科植物においてエリシター処理時に発現誘導される遺伝子を比較したところ、ファルネシル2リン酸から次の代謝物への変換酵素(つまりファイトアレキシン合成の初発酵素)が、植物において配列が類似しているものの多様性が認められた。そこで、この初発酵素の配列を用いて祖先遺伝子を推測してその機能を解析する。この解析により、ナス科植物がファイトアレキシン生産能を獲得し、発展させたプロセスを推定する。
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