精神医療における現代的課題に対する学際的アプローチ
Project/Area Number |
23KF0256
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 外国 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
新川 拓哉 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (20769658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI XUE 神戸大学, 人文学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 認知症 / ケア / 現象学 |
Outline of Research at the Start |
日本とオーストラリアの精神医療システムについて、特に心的外傷(トラウマ)のケアに関わる部分にフォーカスしながら、その倫理的評価と改善案の提案を行う。具体的には、現象学的インタビューの手法を用いて、心的外傷のケアにかかわる広義の関係者からケアの現場でどのような体験をしたかのデータを集めて倫理的観点から分析することを通じて、現在の心的外傷のケアをめぐる医療や社会の状況を評価し、改善案を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、認知症患者をケアする家族の経験に着目し、それを現象学的観点から理論的に考察したうえで、そうした家族のWell-Beingを向上させるための理論的提案のための準備を行った。具体的には、彼らの経験を「あいまいな喪失(ambiguous loss)」として概念化するポーリン・ボスの議論を手掛かりに、マシュー・ラトクリフが展開する喪失と悲嘆についての現象学的理論を応用することで、認知症患者のケアをする家族が体験するとされる「あいまいな喪失」が具体的にどのような構造を備えた経験であるのかの理論的考察を行った。また、そうした経験に関連して認知症患者とケアを担う家族の関係にどのような変化が生じうるのかの検討を行った。その上で、認知症患者とその家族の関係をよりよいものとし、両者のWell-Beingの向上のためには、ケアの側が「私たち」という感覚をもてること(We-nessが保持されていること)が重要だとする仮説を設定した。
今後の研究では、この仮説をインタビュー等による実証的研究によってテストするとともに、認知症患者をケアする家族の経験のよりよい理解と、そのWell-Beingの向上を実現するための具体的提案を目指す。この具体的提案においては、「共同行為(collective action)」や「協調行為(cooperative action)」に注目する。つまり、認知症患者とその家族の間でどのような共同行為/協調行為が可能なのかを、共同性/協調性や行為それ自体の概念的分析も含むかたちで検討することにより、認知症患者をケアする家族のWell-Being向上につなげる提案を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のテーマは精神医療であるが、精神医療の領域はきわめて広く、本研究を主に推進する外国人特別研究員のLi Xue氏の専門と関心に合わせて、認知症患者の家族が抱えうる精神的問題とそのケアに研究テーマを絞り込むこととなった。その結果、関連する文献のサーベイと認知症患者の家族の経験をめぐる理論的考察と仮説設定を予定通りに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に行った理論的考察とそれを基に設定した仮説を研究会等で発表し練り上げるとともに、インタビュー等を用いた実証研究によってその仮説のテストを行い、それを通じて認知症患者のケアをする家族の体験についてよりよい理解を得る。同時に、そうした家族のWell-Beingの向上のための具体的提案を目指す。そのための手掛かりとして、共同行為(collective action)や協調行為(cooperative action)に着目し、認知症患者とその家族の間でどのような共同行為や協調行為が可能なのかという問いを、共同性や行為そのものの概念的考察を含めて研究する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)