Project/Area Number |
23KJ0019
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 圭祐 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | RNA顆粒構造 / 3' UTRの長さ / 細胞内局在 / 相転移・相分離 / 天然変性領域 / 新規の翻訳制御 |
Outline of Research at the Start |
これまでの研究から初期発生に必要なmRNAは「顆粒構造を形成し、その状態の変化(相転移)により翻訳を活性化する」という、新規の翻訳制御機構により制御されていることが示された。本研究ではその翻訳制御機構の具体的な分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。まず顆粒を構成し相転移/相分離に関与するRNA結合タンパク質を同定する。またRNA顆粒のライブイメージングによりその初期胚における動態を可視化し、定量的な解析を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から初期発生に必要なpou5f3 mRNAは「顆粒構造を形成し、その状態の変化(相転移)により翻訳を活性化する」という、新規の翻訳制御機構により制御されていることを示してきた。mRNAの翻訳制御にはRNA結合タンパク質が関与していることが知られている。RNA顆粒の相転移/相分離に関与し得るRNA結合タンパク質としてEwsr1bとSYNCRIPに着目し、解析を行った。これら2つのタンパク質は天然変性領域を有しており、相分離に関与することが予想された。Ewsr1bタンパク質についてはまずマウスで抗体を作製した。Ewsr1bタンパク質は発生が進行するにつれてその発現量が増加することが分かった。Ewsr1bタンパク質の発現量をノックダウンしたところ、Pou5f3 タンパク質の発現量も減少した。この結果から、Ewsr1b タンパク質がpou5f3 mRNAの翻訳活性化に関与していることが示唆された。ewsr1b mRNAの3' UTRを解析したところ、長さが302のLongタイプと長さが15のShortタイプの2つのタイプが初期胚で発現していることが分かった。GFPタグを融合したLong mRNAとShort mRNAを初期胚微量注入しタンパク質の局在を観察したところLong由来のタンパク質は核内に局在した一方、Short由来のタンパク質は細胞質内に滞留した。この結果から異なる3' UTRから合成されたタンパク質はそれぞれ異なる機能を持つことが示唆された。初期胚における3' UTRの長さによる新規の翻訳制御とタンパク質の機能制御を見出すことができた。SYNCRIPタンパク質を過剰発現したところPou5f3 タンパク質の発現量が減少した。この結果からSYNCRIPはpou5f3 mRNAの翻訳抑制制御に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は初期発生過程におけるmRNAの翻訳制御・相転移/相分離に関与するタンパク質としてSYNCRIPとEwsr1bに焦点を当てて研究を進めてきた。それぞれのタンパク質に関する解析について、いずれも一定の結果を出すことができた。SYNCRIPについてはまずpou5f3 mRNAと結合することを確かめた。過剰発現をしたところ、pou5f3 mRNAの翻訳活性が低下したことから翻訳の抑制制御に関与することを示せた。また共免疫沈降/質量分析により相互作用するタンパク質の網羅的な解析も行った。その結果、CCR4-Notタンパク質複合体やPiwil1、IGF2BP3タンパク質などが共沈降しこれらのタンパク質と複合体を形成して機能することが分かった。このように様々な翻訳制御に関係するタンパク質と協働して機能することが示唆され、今後の研究に幅を与える結果を得ることができている。Ewsr1bは3’UTRの解析について予想外の発見があった。初期胚において3' UTRの長さが長いものと短いものが発現していたのだ。また、これらから合成されるタンパク質は3'UTRの長さが違うだけであるにも関わらず細胞内局在が異なり、異なる機能を有していることが示唆された。この結果から3' UTRの長さによる新規の翻訳制御機構、またタンパク質の機能制御を見出すことができた。RNA顆粒の相転移/相分離にとどまらず、新規の翻訳制御、またタンパク質の機能制御にまで研究の幅を広げることができている。 このような状況から、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ewsr1b mRNAについて、LongタイプmRNAとShortタイプmRNAをIn situ hybridizationにより検出し、1細胞における局在を超解像顕微鏡を用いて詳細に解析する予定である。また、LongタイプmRNAのノックダウンによる翻訳制御やタンパク質の機能制御への影響について調べる予定である。MS2システムによるライブイメージング解析を行い、mRNAの顆粒構造の性質を解析する。タンパク質の性質についてはGFPタグを融合させたタンパク質のFRAPを行いその性質を調べる予定である。また、3' UTRの長さによる新しい翻訳制御について解析するため、リボソームプロファイリングの実験を行い、発生段階別における翻訳が活性化されているmRNAの3' UTRについて網羅的に解析する予定である。さらに、CRISPR/Cas9によるノックアウト系統の作出・解析も現在進めている。
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