Project/Area Number |
23KJ0072
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 17010:Space and planetary sciences-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大槻 悠太 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | TOF-SNMS / 深さ方向分析 / 希ガス同位体 / 太陽風 / 月レゴリス |
Outline of Research at the Start |
月レゴリスは過去40億年以上にわたって太陽風照射を受けてきた.太陽風はレゴリス粒子に衝突すると,そのエネルギーに応じた深さまで注入される.このため,月レゴリス粒子中の太陽風起源希ガスの深さ方向分布から,その粒子が太陽風照射を受けた当時の太陽風のエネルギー分布を推定できる. 本研究では,1億年前と35億年前に太陽風照射を受けた月レゴリス粒子に対して希ガス(He-4,Ne-20,Ne-22)の深さ方向分析を行う.そして,その深さ方向分布から1億年前と35億年前の太陽風エネルギー分布の解析をする.これにより,月レゴリス粒子から異なる時代間の太陽活動の違いを定量的に評価することを目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
月レゴリス試料の希ガス深さ方向分析により過去の太陽風エネルギー分布を見積もることを目的とし,2023年度は主に,同位体ナノスコープを用いて鉱物にイオン注入した希ガス同位体の分析をするための条件設定を実施した. 対象の鉱物は月試料で最も良く希ガスを保持しているチタン鉄鉱(FeTiO3)に加え,地球外物質で典型的な鉱物としてかんらん石((MgFe)2SiO4)を使用した.分析対象の希ガス同位体としてはHe4,Ne20/22,Ar36/40を選択した.ヘリウムは太陽風に豊富に含まれているが,拡散などによって太陽風注入後の脱ガスを受けている.ネオンやアルゴンは拡散の影響が比較的少ない上,イオン注入時の深さ方向の同位体分別を用いて試料の表面状態の評価を行うことができる.このため,これら五つの希ガス同位体を選択した. 同位体ナノスコープは質量分離部に多重周回飛行時間型質量分析装置MULTUM IIを採用している.MULTUM IIは広範な質量範囲を同時測定できる反面,質量スペクトルが複雑になる弱点がある.そこで,MULTUM II内を周回させるイオン種と周回時間を検討し,鉱物の主要元素のピークと希ガス5同位体のピークを分離して分析できる条件を確立した. 新たに確立した分析条件では,希ガス5同位体のイオン(4He+, 20Ne2+, 22Ne2+, 36Ar4+, 40Ar4+)を鉱物の主要元素のイオンやその他元素のイオンの妨害の影響を低減し,装置内残留ガスによるバックグラウンドが示すイオン強度近くまで定量することができた.また,希ガス濃度および同位体比分析の再現性が5から25%である事を確認し,そのばらつきの要因を特定した. 以上の研究成果を複数の学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
月レゴリス試料の希ガス深さ方向分析を行うための分析条件を確立した.具体的には,フェムト秒レーザーによるイオン化で多く生成される多価イオンによる妨害を受けないようなイオン種,飛行時間条件を設定した.同位体ナノスコープでは多価イオンの生成によって飛行時間スペクトルが複雑になる一方で,妨害が少ない価数を選択することができる.例えばNe-20の分析においては妨害が無い2価イオンを測定することで,24Mg16O++の妨害を受けている1価イオンを測定するよりも1桁ダイナミックレンジが向上した. そのほか,データ解析を効率化したことで,今後多数のデータセットを取得,解析する準備を完了させた. 月試料分析の準備も予定通り進行している.入手した月試料の表面を観察し,希ガス深さ方向分析に適した粒子を複数個用意した.数粒子は既に分析を完了しており,興味深いデータが得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
鉱物中の軽希ガス5同位体の同時深さ方向分析法について国際誌に報告する. 23年度冬から実施している月レゴリス試料(月ブレッチャ14301,月ソイル71501)の分析を進める.希ガス同位体比の深さ方向分布を従来の希ガス質量分析装置で得られていた分布と比較し,同位体ナノスコープによる局所分析の有用性を確認する.その上で,希ガス深さ方向分布から月試料の”どこ”に”どのよう”に希ガスが保持されているかを調べる.そして,月試料から照射された当時の太陽風エネルギー分布が復元できるか否かを検討する. 希ガスの保持特性は試料表面から100 nmより浅い部分が,太陽風エネルギー分布はそれより深い部分が重要となる.このため,一度の分析で試料表面から1ミクロン程度の深さまでの希ガス分析を行う.そして,浅い領域と深い領域で切り分けて二つのテーマを軸に議論を進める方針である.
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