Project/Area Number |
23KJ0102
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
JIA GUANGZUO 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 日本思想史 / 東アジア比較思想 / 黄檗宗 / 隠元隆琦 / 独立性易 / 養生学 / 高元泰 / 近世思想 |
Outline of Research at the Start |
東アジア世界の秩序が再編成される17世紀という激動の時代において、隠元隆琦とともに、多くの仏教者や知識人が日本に渡来した。彼らによって当時中国最先端の文化が日本にもたらされ、その中で本来儒者であるが、日本で生存していくため隠元のもとで出家したが、さまざまな側面で隠元らと不和を生じ、ついに僧団を離脱した独立性易が注目すべきである。本研究では、隠元は臨機応変的な仏教者である一方、独立は原則主義的な儒者であることから、この二人を黄檗文化の両極と捉え、彼らの活動をそれぞれのネットワークにおいて考察することで、17世紀渡日亡命知識人が日本近世思想の形成に与えた影響を捉え直したいのである。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和五年度は、独立性易の仏教に対する態度、また黄檗宗に対する態度についての考察を進めた。さらに、独立性易及び黄檗宗の開祖である隠元隆琦の思想についても研究を行った。 前年度は、独立性易が黄檗宗で出家したが、その思想には排仏論的な(反仏教的な)側面も有していると論証した(『印度学佛教学研究』(155))。本年度は、この成果を踏まえ、独立が排仏論者だけではなく三教一致論に対しても反対している点を明らかにし、その思想をより特定した。この成果は『印度学佛教学研究』(71(2))に掲載された。そして、独立と黄檗僧団との関係を歴史学の手法で考察し、『禅学研究』(101)に発表した。これは、黄檗宗研究にとって新しい地平を開いたと考えられる。 独立性易についての研究では、その弟子である高元泰の『養生篇』や北山友松子の『大明独立老人用薬方』などの史料が新たに発見された。これらの発見をきっかけに、独立の医学思想研究を大いに推進した。まず、『養生篇』を翻刻し、『自然と実学』(7)に「高元泰『養生篇』の研究-影印・校勘・解題」として掲載した。『大明独立老人用薬方』については、医学専門の研究者と研究グループを組み、それについて精密な注釈を施し、『黄檗文華』(142)に「『大明独立老人用薬方』の基礎的研究: 翻刻・訓読・語釈・解説(上)」として公表した。これらの史料を基に、「独立性易から貝原益軒までの日中養生文化の架け橋:高元泰の『養生篇』について」(『日本思想史研究』(54))や、「独立性易が伝来した『脈論』序説」(『黄檗文華』(142))など、医学思想を考察した論文がある。 黄檗宗に関する研究では、隠元隆琦の庭園思想について研究し、中央美術学院の雑誌『世界美術』に掲載した。また、花園大学の機関誌『禅文化研究所紀要』にその日本語訳を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
独立性易の研究について、『養生編』という、独立の弟子である高元泰が編纂した写本を発見した。その内容を分析した結果、それは独立の医学思想、さらに日中近世医学思想交流史を理解する上で、極めて重要な史料であることが明らかになった。今年度は、このテキストを中心にして、翻刻・注釈を行い、思想史的な研究を施した。そして、その結果を公表した。それと同時に、国際的な研究発表も行なった。上記の成果により、東アジアにおける近世医学文化の交流についての研究をさらに推進することが可能となった。 さらに、私が提案した『東北の禅仏教:大年寺関係資料集』が東北文化研究室によって刊行された『東北文化資料叢書』に採択され、令和六年に出版された。この編著は、影響力のある、黄檗宗の研究者たちによる共同研究であり、今後の発展が期待される。 そのほか、隠元の悟境を表す「獅子返擲」に関する筆者の研究成果を踏まえ、「『獅子返擲』と『獅子返擲勢』を例に詩禅関係の両面向について」(『中国美学』(13))でその詩学における意義について論じた。また、韓国の学者である徐希定氏の荘子研究を紹介した「比較哲学による古典学の新展開: 徐希定『『荘子・斉物論』研究: 「我」と「物」の関係を中心に』」は、『日中文化学報』(4)に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、独立性易の伝記研究と思想研究を引き続き深堀する。具体的には、すでに公表された、その言語学(六書学)の研究成果を踏まえ、この学問の影響を書道から思想史の分野まで広げて考察する。一方、隠元隆琦をはじめとする黄檗僧については、その詩文観を中心に研究を進める。 上記の研究を完成させた上で、「文道関係」、つまり文(文章・表現・形式)と道(道理・思想・内容)との関係という視点から、両者について比較研究を行う。「黄檗文化」で論じられてきた両者の思想の補完関係についても論じる。最後に、博士課程期間中の論文を合理的に構成して、博士論文を完成させて提出する。
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