新規パータナトス阻害剤を用いた神経変性疾患治療戦略の構築
Project/Area Number |
23KJ0165
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱野 修平 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 神経変性疾患 / パーキンソン病 / アルツハイマー病 / パータナトス / 凝集体タンパク質 / ALIS |
Outline of Research at the Start |
近年、ストレス応答分子PARP-1の過剰活性化に依存した新たなプログラム細胞死であるパータナトスが神経変性疾患の病態に関与することが判明し、パータナトス阻害剤が神経変性疾患に対する画期的な治療薬になる可能性がある一方、PARP-1を標的とする既存のパータナトス阻害剤は、DNA損傷の蓄積による細胞の機能障害を引き起こす。申請者らは、製薬企業との共同研究で行った化合物スクリーニングにより、「PARP-1のDNA修復機能を阻害しない」、既存薬とは全く機序が異なるパータナトス阻害剤(化合物A)を同定した。そこで本研究では、画期的な神経変性疾患治療薬として化合物Aの臨床応用を目指す上で必須な基礎的実験を完遂することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
パータナトスはストレス応答分子PARP-1の過剰活性化に依存した、既存のアポトーシス等とは異なる、新たなプログラム細胞死である。近年、パータナトスは様々な疾患への関与が判明し、その病理的役割が注目されている。特にパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患への関与が着目されている一方で、パータナトスによる神経機能障害の進行を食い止めるような、有効な治療法は未だ確立されていない。以上の背景から、研究代表者らは、新規パータナトス阻害剤の探索のための低分子化合物スクリーニングを行い、新規パータナトス阻害剤の候補化合物として化合物Aを同定した。そこで本研究では、化合物Aの神経変性疾患治療薬としての臨床応用を目指す上で必須な基礎的実験を完遂することを目的とする。 本年度の研究では、化合物Aのパータナトス阻害機構として、タンパク質凝集体に着目した解析を行った。これまでの解析から酸化ストレスによる変性タンパク質の集積(タンパク質凝集体の形成)が、パータナトスの惹起に必須であることが分かっていた一方で、化合物Aのタンパク質凝集体への影響は不明であった。今年度の解析では、化合物Aがタンパク質凝集体の形成を阻害することで、タンパク質凝集体が惹起するパータナトスを抑制することを見出した。また、化合物Aは、凝集体形成に必須である凝集体構成因子p62の多量体化を阻害することを見出した。一方で、研究代表者が構築した脳スライス培養系を用いた解析を行い、化合物Aは脳組織においてもパータナトス抑制効果を有することが判明した。さらに、脳組織において、化合物Aは神経変性疾患に特徴的な凝集体毒性に対する軽減作用を有することを見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、化合物Aのパータナトス阻害機構として、タンパク質凝集体に着目した解析を行った。これまでの解析から酸化ストレスによる変性タンパク質の集積(タンパク質凝集体の形成)が、パータナトスの惹起に必須であることが分かっていた一方で、化合物Aのタンパク質凝集体への影響は不明であった。今年度の解析から、化合物Aはタンパク質凝集体の形成を阻害することで、タンパク質凝集体が惹起するパータナトスを抑制することを見出した。さらに、化合物Aは、凝集体形成に必須である凝集体構成因子p62の多量体化を阻害することを見出した。以上の結果から、化合物Aのパータナトス阻害剤としての標的が、「p62による凝集体形成」であることが明らかとなり、既存のパータナトス阻害剤の作用機序とは全く異なる新規パータナトス阻害剤であることが考えられた。 また、化合物Aの神経変性疾患に対する治療効果について解析するため、今年度の解析では、研究代表者が構築した脳スライス培養系を用い、脳組織における化合物Aのパータナトス抑制効果を解析した。その結果、パータナトス誘導刺激であるH2O2やNMDAによるパータナトス、および、アルツハイマー病の病変部に蓄積し、凝集体毒性を示すAβによって誘導されるパータナトスが、化合物Aの共処置により顕著に抑制された。以上の結果から、化合物Aは脳組織においてもパータナトス抑制効果を発揮することが判明し、化合物Aの神経変性疾患治療における有効性がより強く示唆された。 これらの知見は、化合物Aの神経変性疾患治療薬としての臨床応用を目指す上で必須な基礎的実験を完遂することによって得られた、極めて大きな成果であると考えている。よって、当該年度に遂行した解析はおおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、化合物Aのパータナトス阻害機構として、凝集体形成に必須である凝集体構成因子p62の多量体化の阻害作用の重要性が示唆された。また、化合物Aは脳組織においてもパータナトス抑制効果を発揮することが判明し、化合物Aの神経変性疾患治療における有効性がより強く示唆された。一方で、化合物Aのうち、どの構造がp62の多量体化阻害作用に重要かどうかは不明である。次年度は、化合物Aに構造が類似した、様々な化合物のパータナトス抑制効果およびp62の多量体化阻害作用について解析することで、化合物Aのパータナトス抑制効果に関わる構造を特定する予定である。また、化合物Aの神経変性疾患治療薬としての有用性を評価するため、in vivo病態モデルマウスを用いた解析を最終年度に計画している。次年度は、その準備段階として、APP過剰発現誘導性のアルツハイマー病モデルマウス、MPTP誘導性のパーキンソン病モデルマウスを作成する予定である。以上の解析を遂行し、既存のパータナトス阻害剤の作用機序とは全く異なる、新規パータナトス阻害剤の開発に繋げる。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)