モータータンパク質KIF1Aの分子性能と生体内小胞輸送の包括的かつ定量的な理解
Project/Area Number |
23KJ0168
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北 智輝 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 軸索輸送 / KIF1A / 1分子イメージング / DNAオリガミ / 線虫 / 数理モデル / シミュレーション |
Outline of Research at the Start |
タンパク質分子モーターのKIF1Aは神経細胞内で小胞輸送を行う。KIF1Aの遺伝子変異は小胞輸送に異常をきたし遺伝性痙性対麻痺などの神経疾患を引き起こす。細胞内で小胞輸送の異常を観察すること、及びin vitroでの1分子計測により、変異がKIF1Aの1分子性能に及ぼす影響を調べることは可能である。一方で、KIF1Aの分子性能と小胞輸送の間には未だ大きなギャップが存在し、両者の異常を結びつけることはできていない。本研究では、線虫で見つかったKIF1A変異体の1分子性能と小胞輸送能をin vitro 1分子計測で調べ、両者の性能を定量的に結ぶ理論モデルを構築することで上記課題に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質分子モーターのKIF1Aは神経細胞軸索でシナプス小胞前駆体を輸送する。KIF1Aの遺伝子変異は神経疾患を引き起こすことが知られており、それら変異の研究はモデル生物(in vivo)および1分子計測技術(in vitro)を用いて近年盛んに行われてきた。一方で両者の実験系には大きなギャップが存在し、KIF1A 1分子のどのパラメータ異常が、軸索輸送の異常を引き起こし、神経疾患の原因となっているのかはよく理解されていなかった。本研究では、線虫で見つかったKIF1A変異体の1分子性能、及び多分子での性能を調べ、それらを線虫の表現系と照らし合わせることで、細胞内軸索輸送をミクロからマクロスケールまで包括的に理解することを目指した。 まず、所属研究室が所有するヒトのKIF1A疾患変異を導入した2種類の疾患モデル線虫に対して、サプレッサースクリーニングを行い、疾患モデル線虫の表現系が回復する変異(サプレッサー変異)を複数種類特定した。それら変異体KIF1Aを大腸菌を用いて発現、精製した。TIRFを用いてそれら変異体の1分子性能を調べ、疾患変異体KIF1Aで共通して低下したパラメータのうち、サプレッサー変異を加えた二重変異体で共通して回復する一つのパラメータを特定した。 次に、細胞内ではKIF1A複数分子が一つの小胞を協力して輸送することに着目して、複数分子輸送を再現する実験系の立ち上げに取り組んだ。DNAオリガミを用いて2分子のキネシンを繋ぐ系とタンパク質リンカーを用いて3分子のキネシンを繋ぐ系の立ち上げに成功した。これらの系をKIF1A、及びその変異体に適用することを現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
KIF1Aの変異体を大腸菌から発現、精製する際に、大腸菌由来の核酸のコンタミネーションが頻繁に発生し、ゲル濾過クロマトグラフィーを行うと発現タンパク質の全てがボイドピークに溶出されてしまっていた。精製時にストレプトマイシンと混合して遠心を行うことで、ある程度の核酸を取り除けることがわかり、この手法で全てのKIF1A変異体を精製することに成功した。一分子計測では、全てのKIF1A変異体がATP活性を持ち微小管プラス端方向への移動を見せたため、変異体の速度や走行距離などの1分子パラメータの解析、及び変異体間の比較を容易に行うことができた。DNAオリガミとキネシンの複合体設計に関しては、両者の結合効率の悪さがこれまでの先行研究で問題となっていたが、先行研究では使用されていない別のアフィニティタグを導入することで結合効率の改善も図ることができた。DNAオリガミとキネシン複合体の設計は来年度以降の目標であったため、今年度は当初の計画以上の進展があったといえる。また、KIF1A 1分子と軸索輸送の関係性を明らかにするためには、KIF1Aの分子メカニズムについて深く知る必要があると考え、KIF1Aの歩行メカニズムを説明する数理モデルを構築したほか、そのオルソログであるUNC-104の活性化メカニズムの解明にも取り組み、どちらも論文にまとめて発表をすることができた。(Kita et al., Biophysical Journal, 2023、Kita et al., eLife, 2024)
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Strategy for Future Research Activity |
DNAオリガミを用いた多分子による運動の系をKIF1Aとその変異体にも適用する。また、野生型及び変異体KIF1Aの1分子運動と多分子運動を定量的に結ぶことができる数理モデルを構築し、KIF1Aの分子性能と細胞内輸送能の関係を理解する。現在、疾患変異とサプレッサー変異の原子レベルでの影響を評価するために、分子動力学シミュレーションにも取り組み始めており、原子(分子動力学シミュレーション)、分子(1分子計測)、複合体(DNAオリガミを用いた系)、細胞内輸送(線虫)の4段階のスケールで包括的に軸索輸送を理解する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)