Project/Area Number |
23KJ0203
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 48040:Medical biochemistry-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井倉 子佳 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | B細胞 / メチル化 / SAM / MAT2A / クラススイッチ |
Outline of Research at the Start |
核内でのメチル化によるエピゲノム制御が、B細胞分化における遺伝子発現をどのようなメカニズムで調節しているかは未だ明らかにされていない。本研究では、メチル基供与体であるS-adenosylmethionine(SAM)、およびSAM合成酵素であるMethionine Adenosyltransferase 2 (MAT2)に着目して、MAT2ノックアウトによる、遺伝子発現の変化や抗体産生などB細胞機能の変化を解析して、核内でのSAM合成によるメチル化エピゲノム制御がB細胞分化における遺伝子発現を調節する仕組みを解明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A(MAT2A)はメチル基供与体SAM合成酵素で、特に脊椎動物のMAT2Aは核に蓄積することが明らかにされており、メチル化酵素にSAMを供給することでDNAやヒストンのメチル化を助け、エピゲノム制御に関わる因子である。しかし、B細胞の分化や活性化における核内MAT2Aの意義は未解明である。これを明らかにするため、「核内MAT2Aの意義はクラススイッチの制御にある」という仮説を設定して研究課題を遂行している。この仮説を設定した根拠は2つある。1つ目は、脊椎動物のMAT2Aは核に蓄積することである。2つ目は、クラススイッチ組換えの完了にはヒストンシャペロンタンパク質FACTによるメチル化酵素の誘導と、これによるヒストンH3K4me3修飾がDNA切断酵素のクラススイッチ領域への誘導に必須となることである。仮説を検証するため、本年度は、野生型MAT2A、および触媒活性を失くした変異型MAT2Aのそれぞれの遺伝子に核移行シグナル(NLS)を付与したものを、レトロウイルスベクターを用いて成熟B細胞株BAL-17に遺伝子導入して安定発現細胞株を樹立し、これらの細胞を用いて実験を行った。ヒストン修飾の変化を調べるために行ったウエスタンブロッティングの結果では、変異型MAT2A発現細胞株におけるヒストンH3K4me3修飾の減少を認めた。また、MAT2AとFACTの相互作用を免疫沈降で調べたところ、野生型MAT2A発現細胞株、および変異型MAT2A発現細胞株の両方で相互作用を認めた。以上より、核内MAT2AのB細胞分化・活性化における役割として、クラススイッチ組換えへの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私の研究目的は「B細胞分化・活性化における核内MAT2Aによるエピゲノム制御の意義の解明」である。メチル基供与体S-アデノシルメチオニン(SAM)合成酵素であるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A(MAT2A)は脊椎動物では核に蓄積することが明らかにされているが、B細胞の分化や活性化におけるMAT2A核蓄積の意義は未解明である。一方で、クラススイッチ組換えの完了には、ヒストンシャペロンタンパク質FACTによるヒストンメチル化酵素のクラススイッチ領域への誘導と、メチル化酵素によるヒストンH3K4me3修飾がDNA切断酵素の誘導の際の目印として働くことが必須であることが明らかにされている。このような背景から、核内MAT2Aの役割は、ヒストンH3K4me3修飾を行うメチル化酵素にSAMを供給し、クラススイッチ組換えの完了に関与することではないかという仮説を立てた。この仮説を検証するために、野生型MAT2A、および触媒活性をなくした変異型MAT2Aの遺伝子のそれぞれに核移行シグナルを付与して、成熟B細胞株BAL-17にレトロウイルスを用いて遺伝子導入して、安定発現細胞株を樹立した。これらの細胞株を用いて、ヒストンメチル化修飾の変化をウエスタンブロッティングで調べたところ、変異型MAT2A遺伝子を発現した細胞株ではヒストンH3K4me3修飾の減少を認めた。また、FACTとの相互作用を免疫沈降によって調べたところ、野生型と変異型の両方でMAT2AとFACTとの相互作用を認めた。以上から、B細胞分化・活性化における核内MAT2Aの役割として、クラススイッチ組換えへの関与を示唆するデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
B細胞分化・活性化における核内MAT2Aの役割について、1)クラススイッチへの関与2)遺伝子発現制御ネットワークの2つの事象に着目して研究を展開する。1)については、CD40、TGFβ1、IL-4によりクラススイッチ組換えを誘導することのできるマウスB細胞リンパ腫由来細胞株CH12F3-2Aに、野生型MAT2A、および触媒活性をなくした変異型MAT2A遺伝子(それぞれに核移行シグナルを付与している)を、レトロウイルスを用いて遺伝子導入して安定発現細胞株を樹立する。また、ヒストンシャペロンタンパク質FACTは、クラススイッチ領域にメチル化酵素を誘導し、誘導されたメチル化酵素はヒストンH3K4me3修飾を付与する。このメチル化酵素によるヒストンH3K4me3修飾の付与が、クラススイッチ組換えの際のDNA切断酵素の誘導の目印となることが明らかにされている。今回研究代表者は、変異型MAT2A遺伝子を発現させたBAL-17細胞株におけるヒストンH3K4me3修飾の減少を確認した。この結果を受けて、野生型MAT2A、および変異型MAT2A遺伝子を発現させたCH12F3-2A細胞株を用いて、核内MAT2AとFACTとの相互作用とその関係性について、クラススイッチ領域DNAへの集積度を指標にクロマチン免疫沈降法で検証し、さらに核内MAT2Aのクラススイッチ領域でのタンパク質ネットワークを網羅的に解析することにより、核内MAT2Aのクラススイッチにおける役割を明らかにする。これらの知見を元にMAT2Aのノックアウトマウスなどを用いて個体レベルでの検証に取り掛かる。2)については、NLSを付与した野生型MAT2A、および触媒活性を失くした変異型MAT2A遺伝子発現BAL-17細胞株を用いて、RNA seq.を行い、核内MAT2Aの役割を遺伝子発現制御の視点から検証する。
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