Project/Area Number |
23KJ0236
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 12010:Basic analysis-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山戸 康祐 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 確率論 / マルコフ過程 / 準定常分布 / ヤグロム極限 |
Outline of Research at the Start |
死滅をもつマルコフ過程に対し, ポテンシャル論を用いて準定常分布の存在, 具体形, それら全体の集合を特徴づける. 現状, 準定常分布の存在については, いくつかの良いクラスを除いては, 少なくとも1つの準定常分布が存在するための十分条件がいくつか得られているに過ぎない. 本研究では精密に解析できるマルコフ過程のクラスを広げることで, 死滅をもつマルコフ過程の長時間挙動の普遍性, 多様性に関する理解を深め, 精密かつ統一的な理解を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
特定のクラスの死滅をもつマルコフ過程に対し、準定常分布とヤグロム極限の精密な解析を行った。 これまでの研究で、一定のクラスの生存時間分布から初期分布を復元できる場合、ヤグロム極限の存在が生存時間の裾に関する単純な条件によって特徴づけられることがわかっていた。そこで、本研究では矢野孝次氏(大阪大学)との共同研究で、出生死滅過程に対しこのような復元が常に可能であることを示し、またスペクトル理論を応用することで、具体的に復元公式を与えた。また一次元拡散過程に対しても、一般化フーリエ変換を用いた類似のアプローチにより、ある一般的なクラスに対して復元公式が成り立つことを示した。この結果は学術雑誌に投稿し掲載が決定した。 野場啓氏(統計数理研究所)との共同研究で、負の跳びをもたない標準過程に対する準定常分布の存在の特徴づけを与えた。この結果は以前の研究で得ていた下方スキップフリーマルコフ連鎖に対する結果と合わせると、これまでに準定常分布の存在が示されていたマルコフ過程のクラスのほとんどを含む統一的な結果である。またこの結果を導く過程において一般化スケール関数があるヴォルテラ積分方程式の解として特徴付けられることを示し、それを通じて整関数に解析接続できることを示した。この結果は、一般化スケール関数に対するレゾルベント等式を導き、複素解析の応用を可能にする、それ自体有用で興味深い結果に思われる。この結果は現在学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、一次元拡散過程や片側スペクトルレヴィ過程の変種に対して死滅が境界で起こる場合の準定常分布の研究を行う予定だったが、野場啓氏(統計数理研究所)との研究で用いた一般化スケール関数を用いたアプローチが大きな成功を収め、負の跳びをもたない強マルコフ過程という一般的なクラスに対して、準定常分布の存在の必要十分条件を与えることができた。またこの結果の導出を通じて一般化スケール関数の理論的性質の解明も進み、結果として、一次元拡散過程において従来行われてきたスケール関数を用いた解析手法がより一般の過程に広げられることがわかった。特にスケール関数の解析性に関する結果は、負の跳びをもたない強マルコフ過程という、非対称性が強く、扱いにくいクラスに対し、スペクトル理論的なアプローチを可能にするものであり、今後ヤグロム極限の存在やその収束レートを研究する際に有用なはずである。 加えて、関連する課題として想定していた出生死滅過程に対する到達時刻からの初期分布の復元問題も矢野孝次氏(大阪大学)との共同研究で満足のいく形で解決することができた。 以上のように、当初想定した課題は順調に消化できており、一部は当初の予定を超えた結果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2点の研究を進めていく予定である。 1.流入境界条件をもつ負の跳びをもたない強マルコフ過程のヤグロム極限の収束レートの研究 これまでの研究で、一般化スケール関数を用いることで、一次元拡散過程におけるフェラーの境界分類を一般化するものを導入した。この分類は様々な面で一次元拡散過程に対するのと類似の結果を導くことがわかっている。この類似を通じてヤグロム極限の指数的な収束レートの解明ができると考えている。ただし、一次元拡散過程は対称なマルコフ過程であるためスペクトル理論の一般論が非常に役に立ったが、現在の設定においてはほとんどが非対称である。そのため、より精密な解析が必要となる。 2.ツリー上の出生死滅過程に対する準定常分布の研究 ツリー上で出生死滅過程に相当するマルコフ連鎖を考え、その準定常分布の集合とヤグロム極限を明らかにすることを目指す。ツリー上の出生死滅過程は、これまでの研究で解析してきた負の跳びをもたないマルコフ過程と類似の性質をもつ。具体的には周遊測度を用いた解析が同様に行えるため、一般化スケール関数が定義できる。このためある程度まではこれまでの研究と同様の手法が通用するはずである。ただし、ツリーの場合には分岐の存在により、これまでのように各点と死点の間に存在する点の集合が非コンパクトとなるという大きな違いがあり、これまでの手法をより洗練させる必要がある。
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