Project/Area Number |
23KJ0258
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸鹿野 友梨 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 語形成 / 語彙素基盤形態理論 / 語彙主義 / 生成語彙論 / 接頭辞 / 程度表現 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、語彙素基盤の形態理論の派生への適用可能性を追求し、語彙主義的な研究を進展させることである。語彙素基盤の形態理論の多くは屈折を主な分析対象としており、派生を扱った本格的な研究はほとんどない。本研究は英語の派生接辞に注目し、派生接辞が付加する内容語の形成でも、屈折接辞が付加する語形形成の場合と同じ仕組みがはたらいていることを実証する。とりわけ、out-やover-などの程度表現の接頭辞を含む派生語に焦点を当て、これらの接頭辞付加が見せる特異な現象を説明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①程度を表す接頭辞を含む派生語の形成に働く規則を明らかにするとともに、②out-の比較用法が発達した要因を考察した。①については、out-やover-が付加して動詞を派生する場合に注目し、これらの接頭辞がそれぞれどのような性質を持つのかを明らかにした。まず、out-付加に関しては、英語の接頭辞を語彙素の一種として扱う場合に問題となる事例(例:out-technology)に焦点を当て、そのような語はoutrankなど既存の語の主要部部分を別の語で置換することで形成されると提案した。また、out-動詞の派生プロセスと比較の意味は、Namer and Jacquey (2003, 2013) の語形成モデルにスケール構造(Kennedy and McNally (2005))を加えることで形式化できることを示した。この成果をまとめた論文を国際誌に投稿し、査読中である。次に、out-との比較を通してover-の機能を考察し、接頭辞の特性が基体の選択に影響を与えていることを指摘した。さらに、上述の語形成モデルで語形成プロセスを形式化することを試みた。この成果を論文(Togano (2024))として発表した。 ②は当初の計画では射程に入れていなかった研究だが、①の研究を進めていく中で、どのようにしてout-が比較の意味を表すようになったか調査する必要があると判断した。この点については、長野明子氏(静岡県立大学)との共同研究により、歴史的変化に関する研究課題に着手することができた。そして、古英語の不変化詞utから比較用法のout-への発達過程には文法化が関係していると提案した。また、外的要因として、空間用法から意味拡張によって生じた非空間的意味においてout-とover-の間で競合が起こったことがあると指摘した。これらの研究成果は2024年8月の国際学会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主に接頭辞が付加した動詞の形成についての研究を進め、その成果を論文として投稿できた。当初計画していた調査のうち、程度表現を含む複合語の形成に関するものについては一部遅れがあるものの、一定程度行うことができていると考えられる。また、「研究実績の概要」欄に記載の通り、out-の歴史的変化に関する研究は当初の研究計画には含んでいなかったが、調査を進めることができた。この進展も本研究を推進していく上で大きなステップになった。そのため、総合的にはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、5年度中に得られた成果をもとに、程度表現を含む複合語の形成に焦点を当て、語形成に働く規則について考察する。そして、over-以外の接頭辞や程度表現要素(under-, half-等)も含めて程度修飾に関わる要素を包括的に分析することを試みる。これを通じて、程度を表す様々な接頭辞や連結形がどのようなパラダイムを成しているのかを明らかにしていく。また、Namer and Jacquey (2003, 2013) の語形成モデルを用いた分析の妥当性を検証する。そして、語彙素基盤形態理論と生成語彙論の関係についてさらに考察をすすめる。
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