Project/Area Number |
23KJ0291
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 44010:Cell biology-related
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
杉浦 健太 群馬大学, 生体調節研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 線虫 / 受精 / ライブイメージング / 母性胚性転換 / 膜タンパク質 / 多精子受精 |
Outline of Research at the Start |
受精は有性生殖を行う生物に必須な発生の開始点であり、卵と精子の膜融合を伴う生命現象である。この膜融合のメカニズムは不明な点が多く、長年解明が求められてきた。線虫C. elegansでは、卵母細胞が成熟することで受精能を獲得すると考えられているが、卵巣内では受精は起こらない。我々は、受精直前の成熟卵膜上に精子と融合するための特異点「受精ゾーン」が形成され、たった1つの精子と受精することを見出してきた。本研究では、このような受精における膜融合を可能にするために受精直前の卵母細胞に起こる質的変化を通して、卵-精子膜融合機構の解明を目指すともに、受精前後で生じる卵細胞の変容を解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
雌雄同体の線虫C. elegansの受精時に生じる受精ゾーンは、精子が接触して受精に至る唯一の点であることから、その形成メカニズムと動態を詳細に明らかにすることで、受精メカニズム解明の一端となると期待できる。本年度の実験では、卵母細胞膜近辺に局在するタンパク質群を蛍光標識し、各々のタンパク質が受精ゾーンを形成するか否かを検証した。その結果、非膜タンパク質やアクチンフィラメントに加え、卵母細胞外に存在する卵黄膜タンパク質も受精ゾーンを形成することが明らかとなった。形成された受精ゾーンのパラメータをタンパク質ごとに比較することで、その動態が有意に協調しているタンパク質群を見出すことができ、それらタンパク質群の物理的なインタラクションを示唆した。受精ゾーンは精子と融合した際に細胞膜が置き換わるために生じていると考えられるため、精子膜タンパク質を蛍光標識してライブイメージングを行ったところ、受精ゾーンを覆うように精子膜がカバーしている様子が観察できた。これらの成果は24th International C. elegans Conferenceや日本細胞生物学会で発表した。 並行して、卵母細胞膜タンパク質MARC-3の機能解析にも着手した。marc-3ノックアウト線虫では20%ほどの頻度で多精子受精することを受入研究室で見出しており、卵母細胞タンパク質の分解に加えて多精拒否のメカニズムにもMARC-3が関与していることが示されていた。そこでライブイメージングを行うことで、marc-3ノックアウト線虫でどのように多精子受精が引き起こされているかを観察した。すると、marc-3ノックアウト線虫では0秒から数秒の間に複数の精子が卵母細胞に侵入し、多精子受精していることがわかり、MARC-3は多精子拒否の非常に早い段階に機能を果たすタンパク質であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵母細胞膜タンパク質の動態解析については研究計画当初では2023年度に完了予定であったが、こちらは概ね予定通り進行した。一方で観察を予定していたいくつかのタンパク質において、CRISR/Cas9によるゲノム編集で作出した線虫が先行研究通りの蛍光シグナルを示さないなどの難点があり、わずかではあるがやり残しが生じている。また当該技術を使用して受精阻止機構について新たな知見を見出すこともできたため、副産物的な進展が非常に大きいものとなった。 現在は並行して、2024年度に予定していた研究を遂行しているが、「受精に必須な卵-精子膜融合因子」の同定には至っておらず、様々なスクリーニング法を通して候補の選定を行っている。これらのスクリーニングではむしろ、2024年度後半から2025年度に探求予定であった因子群を見出すことができており、全体的におおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2023年度に得られた「受精に必須な卵-精子膜融合因子」を目的としたスクリーニングの結果から、ゲノム編集やRNA干渉といった遺伝的手法を用いて絞り込みを行なっていく。特に目的とする因子が欠失した際には、受精卵の形成に異常が生じるため、その表現型を指標とする。複数の候補を得たのち、それらの発現部位解析を行うことで、雌雄どちらの配偶子に存在する因子なのか、またその機能を追求する。 現在「受精に必須な卵-精子膜融合因子」以外にも、多精子受精阻止にはたらくタンパク質や、生殖腺の形成に重要なタンパク質群を上記のスクリーニングから見出すことができており、それらにも着目していく。 ある程度まとまった結果の得られている受精ゾーンの動態解析については、論文化を目指して執筆を進める。
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