Development of near-ambient-pressure low energy inverse photoelectron spectroscopy and study on atmospheric and solvent effects on unoccupied states of n-type organic semiconductors.
Project/Area Number |
23KJ0310
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 32020:Functional solid state chemistry-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保 美潤 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 低エネルギー逆光電子分光 / 準大気圧 / オペランド測定 / 空準位 / 電子伝導 |
Outline of Research at the Start |
近年,水や酸素の存在下で物質の価電子帯や内殻準位を測定する準大気圧光電子分光が普及している.本研究では水の蒸気圧(1000 Pa)で空準位の電子状態を測定する準大気圧低エネルギー逆光電子分光(NAP-LEIPS)を世界初開発する.NAP-LEIPSでは試料表面に低速電子線を照射し,電子が試料の空準位に緩和する際の近紫外光を検出する.電子線は真空中でないと発生しないため,装置には工夫を施す.またn型有機半導体の特性は水や酸素により低下するとされており,準大気圧下の空準位観測は重要である.そこでNAP-LEIPSより電子トラップ準位を直接観測し,大気や残留溶媒が電子伝導へ与える影響を解明する.
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Outline of Annual Research Achievements |
半導体の特性は、電子の流れる空準位と正孔の流れる価電子準位で決定づけられる。これまで、これらの電子準位は超高真空中での電子分光法で測定されてきた。一方近年では、水・大気の存在下で測定する「オペランド測定」が表面科学の大きな潮流となっている。そこで我々は、新たに水の蒸気圧(10^3 Pa)で測定可能な準大気圧低エネルギー逆光電子分光(NAP-LEIPS)装置の開発に挑んでいる。 本研究のベースとなる手法は、受け入れ研究者が開発してきた低エネルギー逆光電子分光(LEIPS)である。この手法では低速電子を試料に照射し、この電子が空準位に緩和する際の微弱な光を高感度で検出する。本年度は、以下の成果を得られた。 まず、最終段階にあった本装置の真空槽の設計・製作を完了させた。本装置は電子源を高真空下で動作させる一方で、測定を準大気圧下で行うため、間に差動排気槽を導入した3つの真空槽で構成される。次に差動排気槽内で電子線を効率的に輸送するために導入する静電レンズの設計・製作を行なった。差動排気内での電子の平均自由行程を確保できる圧力分布と、電子線散乱を抑制できる静電レンズの実現を両立させた。 以上の成果により、準大気圧下での空準位測定の基盤が整い、半導体デバイスの動作特性解明に寄与することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LEIPSでは5 eV以下の低速電子線を試料へ照射し、電子が空準位に緩和する際に放出される近紫外光を検出する。そのため本装置では、電子源を高真空(10^-5 Pa)に保ちながら、準大気圧下にある試料に電子線を照射する機構が最も重要な開発課題であった。そこで電子源槽と測定槽の間に差動排気を挿入し、圧力差を確保するとともに、電子の平均自由行程を確保できる圧力分布を実現した。差動排気は精密な圧力計算を行うことで、2 段が不可欠であり、差動排気の間のオリフィス径はφ1 mmが適切であることがわかった。本年度は主に差動排気槽と内部に導入する静電レンズを両立して設計することに注力してきた。 2台の差動排気用ポンプの干渉を避けるには、差動排気槽の全長は300 mm以上になる。電子源から出射されたエネルギー20 eVの電子線を、この距離を飛行させ、最終的に1~5eVに減速して試料面に収束させるための静電レンズを設計した。ここで前述の圧力分布を実現するには、焦点距離の長い減速レンズが必要である一方、レンズ中の弾性散乱を抑制するには電子線のエネルギーが10 eV程度必要である。電子線の減速比が大きくなると、レンズの焦点距離は短くなる。また軸上の電位を指数関数的に変化させたとき、焦点距離が最も長くなる。これらを考慮し、電子軌道計算(SIMION8.1)により差動排気機構の構造に合うレンズ構造と印加電圧を決定して、レンズ中10 eVの電子線を試料面で1~5 eV、ビーム径φ1 mmまで収束できるレンズを設計した。 今年度は以上のことに注力し、申請者が学部4年より続けてきた装置の設計は完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本装置の立ち上げに注力する。実際に準大気圧下で測定できるようにするには、2点の課題が残っている。 1点目は、電子源から試料まで電子が到達できるようにすることである。本装置は、製作業者のおかげで1/10 mm以下の精度で電子線軸が揃っている。そのため、物理的には電子源から試料面まで電子は到達できるはずである。ただしLEIPSでは低速電子を扱うため、装置内の電場や磁場に大変敏感である。磁場に関しては、本装置が設置されているのが電磁シールド室であり、かつ真空槽はパーマロイ製であることから、装置内部の磁場は地磁気の1/100から1/200程度に抑えられている。これにより電子のサイクロトロン半径が十分に長くなり、磁場の影響はほぼ無視できるまで軽減された。一方で電場は、表面の仕事関数を一定にするためにカーボン塗布を行っている。これまでの経験で、十分にベーキングをしないと性能が出ないことがわかっているため、ベーキングを繰り返す可能性がある。 実際の電子線を調整する方法は電子レンズの上流から到達電流を測定していき、電子線の軌道に異常がないか確認をしていく。最終的に試料面でLEIPS測定をするのに必要な0.2 μAに到達しなければ、アナライザー中のパスエネルギーを大きくして電流量を増やす予定である。 2点目は、気体流入の環境を整備することである。準大気圧測定を実現するには、気体の流量調整をして調圧をする。気体はバリアブルリークバルブと、マスフローを併用して行う予定である。また気体流入をすると、ターボ分子ポンプへの負荷が大きくなる。このことから、ポンプを水冷できる環境を整備する。
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Report
(1 results)
Research Products
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