Project/Area Number |
23KJ0328
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 46010:Neuroscience-general-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
会見 昂大 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 空間情報 / 海馬台 / 大規模電気生理計測 / 抑制性神経細胞 / シナプス |
Outline of Research at the Start |
脳内に構築された神経回路では、神経細胞同士の繋ぎ目であるシナプスを介して様々な情報が処理され、認知や記憶などの高次脳機能が成立する。シナプスに集積する分子群(シナプス分子)の異常は多くの精神・神経疾患の病因であるとされ、シナプス分子は脳機能発現において根源的役割を担うと考えられる。しかし、シナプス分子の機能が、シナプスや神経細胞の階層を貫き、高次脳機能を支える神経回路の情報処理へとどのように繋がるかはほとんど分かっていない。本研究では、記憶や空間情報を処理する脳領域である海馬の入力を受け、複数の下流領域へと投射する領域である「海馬台」を起点とし、情報の伝達過程を制御する新規分子基盤を解明する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
脳内に構築された神経回路では、神経細胞同士の繋ぎ目であるシナプスを介して神経活動が変化し、様々な情報が処理され、認知や記憶などの高次脳機能が成立する。シナプスに集積する分子群(シナプス分子)の異常は多くの精神・神経疾患の病因であるとされており、シナプス分子は脳機能の発現において、根源的役割を担うと考えられる。ところが、シナプス分子の機能が、シナプスや神経細胞の階層を貫き、高次脳機能を支える神経回路の情報処理へとどのように繋がるかはほとんど分かっていない。本研究では、空間情報の処理を担う海馬台の神経回路をモデル系として、空間情報の伝達過程を制御する新規分子基盤を解明することを目指す。 本年度、AAVベクターを用いて海馬台の興奮性出力と抑制性出力をそれぞれ蛍光標識し、免疫組織化学法を用いて投射領域を観察した結果、抑制性の長距離投射を新たに見出した。加えて、海馬台の興奮性神経細胞及び抑制性神経細胞の活動を光遺伝学的に抑制するAAVベクターを作製し、海馬台選択的に遺伝子導入できることも確認した。また、多点電極を用いて、空間探索中の個体から海馬台神経細胞の活動を記録するため、新しい実験装置を独自にデザインした。動物個体へ長期間安定して装着することが可能となり、多点電極を再利用できるようになったことで、大規模電気生理計測の時間的・費用的な効率が向上した。更に、空間探索課題中のラット個体の行動解析を行うにあたって、課題の学習を短期間で十分に向上させられる訓練条件を見出した。この訓練条件下で大規模電気生理計測を行うことで、空間情報の記憶・学習過程に伴う神経細胞の活動変化を捉えられる可能性があり、記憶・学習を担う脳の動作原理を解明する、新たな研究へ展開することも期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、海馬台神経細胞による個体の空間情報の分配様式メカニズムに注目し、分子-シナプス-神経回路-個体の認知・記憶の各階層における縦断解析を計画している。これまでに海馬台では主に興奮性神経細胞で構成される神経回路やシナプスが精力的に調べられており、近年の網羅的遺伝子発現解析から分子についても理解が進んできた。一方で、海馬台の抑制性神経細胞については、上述した各階層のいずれにおいても殆ど分かっていなかった。そこで本年度は、従来利用されてきた興奮性神経細胞に遺伝子導入できるAAVベクターだけでなく、最近開発された抑制性神経細胞に選択的な遺伝子導入できるAAVベクターも用いて、海馬台における興奮性出力と抑制性出力をそれぞれ標識して免疫組織化学的手法で観察することで、海馬台を起点とした神経回路構造の理解が進んだ。一方で、本研究計画では、興奮性シナプス形成・維持の担い手として知られてきたCbln-GluDシグナルが分子基盤であるという仮説を立て、ゲノム編技術を用いたCblnの操作を計画してきた。ところが、本年度にCbln-GluDシグナルは抑制性シナプスにおいてはシナプス可塑性を制御するという新たな機能が報告された。本研究計画におけるCbln操作において、操作対象を興奮性シナプスと抑制性シナプスを切り分ける必要性が分かってきたことから、当初の実験計画に加え、海馬台抑制性神経細胞に注視した研究計画を進めている。 また、生体脳における大規模電気生理計測の迅速化については予定通り進んだ。独自に設計・作製した多点電極の搭載装置を用いることで高額な多点電極の複数回使用が容易であり、大規模電気生理記録に要する時間・費用が低コスト化し、実験の高効率化が進んだ。 以上より、予想していなかった新知見によって解析対象を追加しつつも、種々の実験系を並行して進めることができ、上記評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で掲げた、海馬台神経細胞による空間情報の分配様式メカニズムを分子-シナプス-神経回路-個体の認知・記憶の各階層での縦断解析を、引き続き今後も遂行する。加えて、今年度に注視することにした海馬台抑制神経細胞に重点を置いて解析することで、海馬台抑制神経細胞によって構築される、未知の神経回路の構造や動態を見出すことができると期待している。実際、神経活動の光遺伝学的操作、及び神経細胞の形態とシナプス終末を可視化する蛍光標識をするためのAAVベクターを既に作製済みであり、海馬台の抑制性神経細胞に対して選択的な遺伝子導入ができることを確認している。 尚、本研究課題ではシナプス分子の操作も計画している。海馬台の抑制性シナプスの構成分子群はあまり分かっておらず、当初予定しているCblnに加えて、操作する分子群を選定している。今後、有望な候補分子群のゲノム編集を計画している。 また、空間探索課題中のラット個体の行動解析を行うための、空間学習課題を短期間で向上させられる訓練条件を見出している。この訓練条件下で大規模電気生理計測を開始することで、空間情報の記憶・学習過程に伴う神経細胞の活動変化を捉えられると考えている。最近では、神経多様体と呼ばれる神経活動の低次元構造が、脳内の情報担体であるという仮説が注目されている。空間課題をこなすラットの海馬や海馬台で構成されていることが分かってきたが、神経多様体がいつどのように構成されるのかは分かっていない。上述した空間情報の記憶・学習過程において生体脳から大規模電気生理記録を行うことで、神経多様体の構成様式を新たに見出せるのではないかと考えている。大規模電気生理計測の結果を今後柔軟に活用し、脳の動作原理の探索を進めたい。
|