Project/Area Number |
23KJ0352
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 弦 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 正統性 / 限定国家性の領域 / 非理想理論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、従来規範的に望ましい国家のみを対象とする傾向にあった「政治的正統性(political legitimacy)」の理論を修正し、正統性を巡る問いが喫緊のものとなる「限定国家性の領域(中央政府が実効的な統治能力を欠いている領域)」に適用できる新たな正統性理論を提示することを目的とする。以上の目的を達成するため本研究は、①正統性の理論を国家以外のアクターを扱えるよう拡張し、②その拡張された正統性理論を、国際機関・(I)NGO・企業など国家以外にも様々なアクターがガバナンスの役割を担いうる限定国家性の領域に適用することで、多様なアクターのガバナンスについて規範的判断を行う基礎を提供する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「限定国家性の領域(中央政府が実行的な統治能力を欠いている領域)」を扱うことのできる新たな政治的正統性の非理想理論を提示することを目的とする研究課題の遂行のために、①「国家以外のアクターを扱えるように正統性理論を拡張する」、および②「拡張された正統性理論を限定国家性の領域に適用する」という二つのプロジェクトをそれぞれ進めた。 ①のプロジェクトについては、正統性を国家の「支配する権利」と結びつけるのではなく、国家以外のものも含む多様な政治制度に適用可能な政治制度の「役割適合性(role-fittingness)」として理解することを提案する研究を進め、研究成果はオーストラリア国立大学で開催されたLegitimacy Beyond the State Workshopという最先端の正統性研究者が集まる研究会で報告した。 ②のプロジェクトについては、限定国家性の領域における正統性理論を展開する上で重要となる政治制度の記述的正統性と規範的正統性の関係についての研究を進め、研究成果はイタリアのMonash University Prato Centreで開催されたNormative Political Theory and Empirical Research Workshopで報告した。 並行して、正統性の非理想理論を展開するために必要とされる政治哲学における概念規定の方法論に関する論文の執筆・投稿を行なった。この論文は、研究課題を遂行する上での方法論的基礎に関わる内容であるため、今後の研究の土台をなす研究成果となる予定である。 以上により、旧来の正統性研究では欠落している体系的な正統性の非理想理論を展開するための理論的基礎が整った点で、正統性研究の新展開に寄与する研究成果を挙げたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下で説明するように、本研究課題を構成する二つのプロジェクトの両方について一定の進捗が見られたため、本研究課題の進捗状況については、「おおむね順調に進展している」との評価を下すことができる。 まず、①「国家以外のアクターを扱えるように正統性理論を拡張する」というプロジェクトについては、そのプロジェクトを支える新たな正統性概念の展開・擁護を行う研究を進め、研究成果をまとめて学会報告を行なった上で学会報告で得た知見を元に適宜修正を加えている段階であるため、相当程度の進捗が見られる。 次に、②「拡張された正統性理論を限定国家性の領域に適用する」というプロジェクトについては、その理論的基礎となる研究を進め、研究成果をまとめて学会報告を行なったことに加え、同プロジェクトの核心をなす内容を扱う予定の学会報告を国際学会に応募し、査読の上で報告が許可された点で、こちらも相当程度の進捗が見られる。 以上より、本研究を構成する二つのプロジェクトの両方について相当程度の進捗が見られると評価できるため、「おおむね順調に進展している」との評価が適切であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究を構成する二つのプロジェクをさらに進めていく形で研究を推進する。 まず、二つのプロジェクトのそれぞれについて今年度中に執筆した国際学会での報告原稿に関し、学会での意見交換を反映する形で原稿の加筆修正を行い、近日中に国際査読誌に投稿する予定である。 また、①「国家以外のアクターを扱えるように正統性理論を拡張する」というプロジェクトにはすでに着実な進捗が見られるため、今後は主に②「拡張された正統性理論を限定国家性の領域に適用する」というプロジェクトに焦点を当てて研究を進める予定である。 後者のプロジェクトについては、2024年夏に開催される国際学会において“A Systemic Approach to Legitimacy in Areas of Limited Statehood”というタイトルで研究成果を報告することが決まっている。この報告は限定国家性の領域における国家以外のアクターを含む多様なアクターの正統性評価を行う理論を展開する内容であり、同報告原稿は今後の研究課題遂行の核となる予定である。それ以降は、同報告で展開した理論枠組みをさまざまな経験的研究を参照するなどして補強していく形で研究を進めていく予定である。
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