Project/Area Number |
23KJ0386
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陰山 涼 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | マンガ / 1923年 / アサヒグラフ / 正チャンの冒険 / 親爺教育 / ノンキナトウサン / 1930年代 / 乗り物 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、主に1920年代以降の日本で発表されたマンガ作品を対象とし、そこに登場した近代的なテクノロジーに関わるイメージの歴史的展開を検討する。明らかになるのは、近代化に伴って登場した新たな科学技術が大衆文化的なイメージを通して受容されると同時に、近代の視覚文化ジャンルとしてのマンガがテクノロジーへの想像力を取り入れながらその表現を形成してきた過程である。手塚治虫を中心化する傾向にあった従来の歴史観とは異なるマンガ史を提示すると同時に、20世紀における科学と文化の関係性を明らかにすることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、主に戦前・戦中期のマンガを対象に大きく2つのテーマで調査・研究を進めた。第一に1923年の新聞におけるコマ割りマンガの流行とその後の普及について、第二に1930-40年代の子供向けマンガにおける乗り物のイメージについてである。 第一のテーマは、本研究が扱う対象の時代的範囲を明確化するために必要な議論となる。歴史研究としての始点を定めるべく、1923年をマンガ史における1つの画期とする見方の妥当性を検討した。結果として、コマとフキダシを使ってストーリーを語る形式の表現が複数登場し、社会的にも影響力のある文化現象となっていった時期であるという点で、1923年以降を現代的なマンガの時代とする立場に一定の意義があることを確認した。この成果については、日本マンガ学会第22回大会にて「2023年は「日本マンガ100年」なのか?:マンガの「起源」を再考する」と題した発表を行った。 第二のテーマは、本研究が中心的に取り上げるモチーフの1つである「乗り物」に関するものである。1930年代には「のらくろ」のヒットをきっかけに子供向けのマンガ出版が大きく拡大した。同時に、満州事変から日中戦争への経過のなかで戦争への社会的関心が高まった時期でもあり、子供マンガにも戦車や戦闘機といった軍事的な乗り物が度々描かれた。 表象文化論学会第17回大会で行った研究発表「動きすぎるロボット、動かないロボット:1930年代の日本マンガにおける生物型機械のイメージ」では、この時期の子どもマンガに登場する動物型の機械に注目した。戦車のような道具的存在として設定されながら、生物のような姿によってロボット的な自律性の印象をも与えるものとして、生物型機械のイメージを検討した。 以上を通して、戦前日本におけるコマ割りマンガの一般化の過程を明らかにするとともに、その拡大時期における科学技術イメージの分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象の時代的範囲を明確化することで議論の前提を固めるとともに、本研究が中心的に扱う3つのテーマのうちの1つである「乗り物」について、貴重な関連資料を入手し調査を進めることができた。本テーマについては、戦前から戦後にかけて大まかな流れの見通しが立ちつつある。 一方、現時点で「原子力」のテーマについては予備的な調査にとどまっており、今後さらなる進展が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
目下、複数のストーリー的なコマ割りマンガ表現が登場したことで知られる1923年創刊の日刊写真新聞『アサヒグラフ』の詳細な調査を進めている。この成果については、6月開催の日本メディア学会2024年春季大会にて発表予定である。 並行して、マンガ家・新関健之助が1930年代半ばから40年代初頭にかけて発表した作品の検討を行っている。新関の作品を通して、飛行機というモチーフがマンガにおける空間表現の立体化に果たした役割が明らかになることが見込まれる。この成果については、6月開催の日本マンガ学会第23回大会にて発表予定である。 2024年度は、①「乗り物」を描いた戦後のマンガ作品の検討、②マンガにおける「原子力」イメージの分析を中心に、さらなる研究を進める予定である。修士論文から扱ってきた「ロボット」に関する議論と、「乗り物」「原子力」の分析をあわせ、マンガにおけるテクノロジー表象の歴史的研究として博士論文の完成を目指している。
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