Project/Area Number |
23KJ0432
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
十文字 夏美 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 労働 / 組織 / 退職 / 退職代行 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、企業組織で働く労働者が、組織を離脱すると決断した「あと」に、いかなるコミュニケーションの過程や選択を経て実際に組織を離れるのかを、人格的・情緒的一体性を重んじる傾向があるとされる日本企業の特色を踏まえながら明らかにすることである。具体的な調査方法としては、第一に、離転職経験者や、離転職時のコミュニケーションを第三者に委託した人々(退職代行サービス利用者)にインタビュー調査を行い、離転職時のコミュニケーション規範の在り方を明らかにする。第二に、雑誌記事分析から、離転職時のコミュニケーションが労働者やひいては社会にとっていかなる意味をもつものであるのか明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、退職代行利用者5名への追加のインタビュー調査にくわえて、円満退社した人々や、退職代行業者へと対象を拡張してインタビュー調査を行った。退職代行利用者へのインタビュー調査を行った結果は、すでに論文として投稿し、査読の過程にはいっていたが、大幅に改稿する必要があり、新たに5名への追加のインタビューを行った。対象者の職業や雇用形態、年齢に関して、さらに対象の幅を広げることができた。その結果、劣悪な労働環境で働く労働者にとって、これまでの職場での扱いに関して「清算」を行う場面であると同時に、いわゆる「きちんとした」辞め方を行わなかったことに対する罪悪感など、「きちんとした」辞め方に対する規範を内面化していたことが明らかになった。また、退職代行利用者の多くは、退職の意思表示をしたあと、退職面談に応じると労使で合意に至らず、退職を「許可してもらえない」と認識していたことが分かった、こうした結果を、労使関係論に照らして投稿論文化する予定である。 また、退職代行業者にもインタビュー調査は、営利企業を対象とするため、調査倫理上、結果の公表や利益相反に配慮する必要があり、分析結果の公表にはまだ至っていない。来年度は、この分析結果を学会報告、投稿論文として公表していく予定である。くわえて、来年度は退職に関する雑誌記事分析に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『社会学評論』の査読の結果が返ってきて、「掲載不可」だったことを踏まえて、2023年9月からは、大幅な改稿を余儀なくされ、研究の根本的な枠組みを再考することとなった。研究の根本的な枠組みを再考するにあたり、研究の成果を報告する側面の強い学会報告よりも、研究をよく理解している先生や研究会での報告・コメントを優先した。そうした検討の結果、調査対象者の人数の拡充が必要であると判断し、新たに5名へのインタビュー調査を行った。5名のなかには、この調査で初めての50代の方や、元国家公務員の方がおり、対象者を拡充したことによってさらなる分析が見込まれる。そうした調査の結果や、新たな研究枠組みは、2024年の春に学会で報告する予定である。 11月からは、退職代行サービスを提供する企業にインタビューを開始するために、ある1社にアポイントメントをとった。今回は退職代行大手の1社にのみパイロット調査を行った。しかしながら、研究者が企業に直接インタビューの申し込みを行うのは、利益相反の可能性があるため、難航した。特に、企業側から実際に「調査を受けたことを自社のHPで公表したい」との申し入れがあったが、取材ではなく研究であるため、調査の匿名化と知見の一般化の観点からそれは不可能であることを伝えると、調査を断られることがあった。また、競合他社複数にインタビューした結果を公表すると、匿名であっても企業の情報が他社に漏れる可能性があり、調査は慎重に行うことが必要である。今後、退職代行業者への調査結果は、退職代行利用者へのインタビュー調査の分析の予備知識として用いることは可能かもしれないが、この調査のみの分析で論文として仕上げるのは難しいかもしれないという結論に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、退職代行利用者へのインタビュー調査の分析の結果を、学会報告と投稿論文として掲載を目標に執筆を進めていく予定である。また、今年度から雑誌記事の分析を行うために、対象となる雑誌を探していく。特に、JILPTにある労働図書館を利用して見つけていく。インタビュー対象者については、退職代行業者へのインタビュー調査は難しいため、退職代行利用者へさらにインタビューを進めていく予定である。
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