Project/Area Number |
23KJ0468
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 39050:Insect science-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
室 智大 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ノメイガ類 / ボルバキア / 生殖操作 / オス殺し / W染色体 / 比較ゲノム解析 / 種間交雑 |
Outline of Research at the Start |
チョウ目昆虫であるアワノメイガ類においては、細胞内共生細菌ボルバキアの感染によるオス殺し現象、感染除去処理に伴うメス致死現象が知られている。本研究では、このような特徴的な共生関係が両者に成立した進化過程を明らかにするため、近縁種群(ノメイガ類昆虫)および寄生蜂群集におけるボルバキア感染調査や、メス致死現象のメカニズム解明に向けた宿主ゲノム解析を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は下記の研究を行なった。 (1) ノメイガ類昆虫における網羅的なボルバキア感染調査 アワノメイガ類におけるオス殺しボルバキアの感染の起源、またオス殺し因子Oscarの進化トレンドの解明に向けて新規オス殺し系を見出すことを目的に、ノメイガ類昆虫におけるボルバキア感染調査を行なった。ノメイガ類の自然史分野の専門家との共同研究体制を構築し、日本産ノメイガ類の半数以上の種についてPCRスクリーニングを行なった結果、およそ3割にあたる50種以上から感染を検出した。感染に伴う表現型の解析のため、感染を検出した6種について新規に飼育系を立ち上げて性比を観察したところ、いずれも通常性比を示したことから、これらの種についてはオス殺しは起きていないと考えられた。 (2) アワノメイガ類の宿主ゲノム解析 アワノメイガ類において特徴的に観察される、ボルバキア感染系統の感染除去処理に伴う次代のメス致死現象のメカニズム解明に向けて、宿主のゲノム解析を進展させた。健全系統、感染系統間のW染色体に注目した比較解析を行い、機能的な差をもたらしうる両者間の差異を特徴づけた。しかし、健全系統と感染系統では母系遺伝するW染色体の進化的な距離が大きく顕著な構造的差異が存在すること、また特に感染系統については高精度のゲノムアセンブリが得られていないことから、精緻な比較は実施できなかった。 加えて、アワノメイガ類におけるボルバキア感染の歴史を解明するには、アワノメイガ類近縁種群における生殖隔離や種分化などの進化的な特性を理解する必要があることから、近縁種群内における特徴的な種間差のひとつである腹毛形質に注目し、その遺伝学的な解析を行なった。アワノメイガとアズキノメイガの種間交雑を利用して腹毛形質の遺伝様式を特徴づけ、宿主ゲノム情報をもとにした責任遺伝子同定のための予備的解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノメイガ類昆虫のボルバキア感染調査について、ノメイガ類の自然史分野の専門家との共同研究体制の構築を経て、当初の期待よりも多くの種についてボルバキア感染のスクリーニングを実施することができた。飼育観察により生殖操作の検証を行なった6種についてはオス殺し現象がみとめられなかったものの、アワノメイガ類のオス殺しボルバキアから原因因子として同定されたOscar遺伝子を標的としたPCRスクリーニングを行い、いくつかのサンプルにおいてOscarホモログの保有を示唆する結果が得られた。オス殺しおよびOscar遺伝子の進化的性状を特徴づけるための生物材料の見当をつけることができたと考えられる。 感染除去時のメス致死現象のメカニズム解明について、アワノメイガの健全系統について高精度のゲノムアセンブリを得ることができた。感染系統の高精度ゲノムアセンブリが得られていないことから、現状ではW染色体の精緻な比較は実現できていないものの、比較解析を実施するための基盤をつくることができたといえる。 以上の状況から、アワノメイガ類におけるボルバキア感染の成立および進化を多角的に特徴づけるという当初目標の達成に向けて、各アプローチに一定の進展がみとめられると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ノメイガ類の大規模なボルバキア感染調査を経てオス殺し因子Oscarの保有が示唆された種に注目して、今後の解析を展開する。当該感染種の採集および飼育観察を通してオス殺し現象が生じているか個別に検証するとともに、ゲノム解析を実施してこれらの種に感染しているボルバキアのゲノムを決定する。Oscar遺伝子ホモログの配列情報が得られた場合は、培養細胞レベルでの機能検証を試みる。 メス致死現象のメカニズム解明については、アワノメイガ健全系統の高精度ゲノムアセンブリをベースとして、W染色体に注目した感染系統との差異の特徴づけを進める。健全系統と感染系統のW染色体の構造的差異の程度を明らかにすることで、W染色体の進化的なダイナミクスについて知見が得られる可能性も考慮に入れる。また、アワノメイガ類の生殖隔離や種分化などの進化的な特性の理解に向けて、遺伝様式を特徴づけた腹毛形質について、高精度ゲノムアセンブリを活用して原因遺伝子の同定を試みる。
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