Project/Area Number |
23KJ0524
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 64040:Social-ecological systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 綾華 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ウミガメ / バイオロギング / 心電図 / 潜水 / 自律神経 |
Outline of Research at the Start |
気候変動により水中環境が急変する中で、動物はそうした変動に応じて行動を変えると予想されている。息をこらえて潜水する水生肺呼吸動物が、こうした環境変動に対してどれだけ潜水行動を変えることができるか理解するためには、その潜水能力の基盤である生理機能の調節を理解することが重要である。本研究では、水生肺呼吸動物の中でも高い潜水能力をもつアカウミガメを対象に、潜水能力の基盤である、水中環境での温度や圧力に対する循環器系の調節機構の解明を目指す。具体的には、水槽内と野生下でアカウミガメの生理機能と潜水行動の測定を行い、さらに自律神経の作用を阻害した時の変化を解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水中環境の変動に対してウミガメがどれだけ潜水行動を変えられるか、その潜水能力の基盤である循環器系の調節機構を明らかにすることを目的とする。2023年度は7月~9月に三陸沿岸域で野外調査を行い、ウミガメ類のモニタリング調査と心電図測定実験を行った。アカウミガメ11個体を用いて計13回、水槽内で心電図・加速度・深度・温度を測定した。さらに、アカウミガメ6個体に記録計を装着して海に放流し、3日間の潜水行動と心電図を測定した。そのうち3個体には放流前に副交感神経抑制剤のアトロピンを投与した。これにより、野生下で潜水するアカウミガメの心拍数の変化と、その時の副交感神経の作用を調べた。 昨年度より進めていた、アカウミガメが海洋で潜水する時の心拍数に関する解析を進め、論文を投稿した。海洋でアカウミガメの心拍数は、表層で呼吸している時に比べ潜水時に低く、特に140 mより深く潜ったときは2拍/分まで低下していた。また潜水中の最低心拍数は、最大潜水深度が深いほどより低下したのに対し、潜水時間や潜水中の活動の程度・水温の影響は小さいことがわかった。こうした潜水するときの心拍数の低下とその変動は、水生哺乳類や鳥類では確認されていたが、今回爬虫類において初めて確認された。したがって、このような潜水中の循環器系の調節は、肺呼吸動物に共通した深く潜るうえで重要な仕組みであると示唆された。さらに、薬物投与により副交感神経の作用を抑制すると、潜水時の心拍数の低下や不整脈発生頻度が大幅に抑制された。また、副交感神経の抑制によって平均潜水時間・潜水深度に大きな差はなかったものの、最大潜水時間は減少した。このことから、アカウミガメの場合、潜水時の心拍数の低下は潜水するうえで不可欠ではないものの、潜水可能な最大時間の延長に寄与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り三陸沿岸域で7月~9月にかけて、ウミガメ類のモニタリング調査と心電図測定実験を実施することができた。個体差や水温の影響を調べるための基礎的なデータとして、様々な体サイズの個体から水槽内での心電図データが得られた。ウミガメを放流し心電図を測定する計画では、通常個体・薬物投与個体ともに十分なデータが得られた。 昨年度より行っていた、海洋で潜水するアカウミガメの心拍数データ解析を進め、Journal of Experimental Biologyに論文が受理された。プレスリリースを行ったところ、その成果が新聞等で広く紹介された。2023年度に取得した薬物投与個体のデータと、2021年度~2023年度に取得した通常の放流個体のデータを比較し、潜水するアカウミガメの心拍数に対する副交感神経の作用を解析し、結果を国際学会で報告した。これまで野生下において、潜水する動物の自律神経の作用を実験的に検証した例はなく、今回の結果は水生肺呼吸動物の潜水能力の基盤となる生理機能に関する重要な知見をもたらすものと考えられる。全体としておおむね予定通り計画を進めることができているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も三陸沿岸域で野外調査を引き続き行い、供試個体数を増やす。これまでに取得した水槽での心電図データを解析し、体重や水温と心拍数の関係を解析する。アカウミガメが海洋で潜水する時の心拍数を解析した結果、潜水深度が深いほど心拍数が低下し、水中での活動による心拍数の変化があまりみられなかった。そのため深度や活動の程度に応じて、副交感神経を介して心拍数が調節されていると考えられる。そこで2023年度に行った解析に加え、深度や活動の程度に対する副交感神経の作用についてもさらに詳細を解析していく予定である。
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