Project/Area Number |
23KJ0529
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 勇希 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | ジボリルカルベン / ルイス酸性カルベン |
Outline of Research at the Start |
一重項カルベンは同一の炭素原子上に非共有電子対と空軌道を持ち、ルイス塩基性とルイス酸性を同時に示す。しかし、カルベンはもっぱらルイス塩基性化学種として注目されており、ルイス酸としてのカルベンの化学は大きく立ち遅れている。本研究では、ルイス酸性カルベンの性質解明の足掛かりとして、2つのホウ素置換基を持つカルベン(=ジボリルカルベン、以下DBC)の合成と反応性の検討を行う。DBCは強いルイス酸性を示すことが予測されるものの、これまで合成や直接観測は報告されていない。DBC及びDBC 配位子を有する錯体の合成・構造決定・電子状態の解析を通じてルイス酸性カルベンとしての DBCの性質を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
ジボリルカルベノイドと単体硫黄/セレンとの反応により、対応するビス(ジボリルメチレン)-λ4-スルファン/セランを合成した。スルファンが熱的に安定であるのに対し、セランは常温でも徐々に分解してテトラボリルエチレンを与えることを見出した。これを応用し、単体セレンを触媒として、ジボリルカルベノイドを用いたジボリルカルベンの選択的二量化によるテトラボリルエチレンの合成に成功した。今回合成したテトラボリルエチレンは、四ホウ素置換エチレンとして初めて、四個のホウ素原子上の空軌道すべてがC=C二重結合のπ軌道と共役した構造を有していることが単結晶X線構造解析・量子科学計算により明らかになった。本化合物はテトラチアフルバレンに代表される電子供与性のエチレン類とは対照的に、電子受容性エチレンであり、置換基によるエチレン類の電子状態の理解に供するだけでなく、新たな有機伝送体の設計指針を与えるものである。 また、ジボリルカルベノイドと過剰量の分子状酸素もしくは硫黄を反応させることで、フランもしくはチオフェンの類縁体を合成・単離した。これは、形式的にはカルベノイド炭素とカルコゲン原子の置換反応ととらえられる。酸素との反応で一酸化炭素の発生が確認され、転位反応が進行していることが示唆された。これは既存の求核性カルベンには見られない反応性であり、ジボリルカルベン/ジボリルカルベノイドのホウ素置換基によって特徴づけられるものだと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジボリルカルベンと典型元素との錯体としてビス(ジボリルメチレン)-λ4-スルファン/セランを合成することに成功し、ジボリルカルベンの電子求引性を量子科学計算により明らかにした。 これに加え、セランの分解による初の完全共役型四ホウ素置換エチレンの合成や、ホウ素に特徴的な転位反応による炭素-カルコゲン交換反応によるフラン/チオフェン類縁体の合成など、予期せぬ発見があった。
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Strategy for Future Research Activity |
ジボリルカルベンの電子求引性を最大限活用すべく、電子豊富な原子との錯形成を試みる。高周期典型元素にとどまらず、第二周期や遷移金属についても検討を行う予定である。これと並行して、ジボリルカルベンの遊離状態での観測・単離にも取り組む。具体的には、ホウ素上置換基や分子骨格の変更によって、遊離状態が安定化されると考えられる分子設計を行い、実際に合成を行う。
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