Project/Area Number |
23KJ0572
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 33020:Synthetic organic chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 碧霄 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 14 族ヘテロ元素ラジカル種 / 光反応 |
Outline of Research at the Start |
高周期14族元素(Si, Ge, Sn)は同族の炭素と安定な結合をつくるため、光電機能材料、エネルギー変換素材や機能性素材をはじめとする様々な有用分子の基本骨格として大きな期待が寄せられています。本研究では、高周期 14 族元素分子の物理特性に着目し、光や電気などの外部物理刺激を駆動力とした電子励起状態の積極利用により、量子化学計算手法の開発なども視野に入れながら、理論と実験の協奏により本研究を遂行し、1) 物理刺激による電子励起状態を利用した「革新的 14 族元素ラジカル化学」の開発、2) 14 族元素の潜在能力を活かした「新機能・新材料・新物質の開発」に取り組みます。
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Outline of Annual Research Achievements |
高周期14族元素(Si, Ge, Sn)は同族の炭素と安定な結合をつくるため、光電機能材料、エネルギー変換素材や機能性素材をはじめとする様々な有用分子の基本骨格として大きな期待が寄せられています。しかし、14 族ヘテロ元素ラジカル種の発生法・変換法には、低い収率・化学選択性や過酷な反応条件など多く問題が残っており、新たな反応手法が強く求められています。一方、光と適切な触媒の組み合わせによるラジカル発生法は、高効率かつ簡便な手法として、近年注目されています。 そこで、筆者は容易に調製できる14 族ヘテロ元素カルボン酸に着目し、光による脱炭酸型 14族ヘテロ元素ラジカル種発生法を開発しました。本反応は、温和な条件下で、円滑に進行し、選択的にシリル・ゲルミルラジカル種を与えるものの、トリアルキルシラカルボン酸の合成は困難であり、シリル・ゲルミルラジカル種の適用範囲は限られていました。 この問題点を解決するため、本研究では 新たな 14 族ヘテロ元素ラジカル前駆体を設計・開発し、安定な14 族ヘテロ元素-炭素結合の光駆動型ホモリティック開裂反応を企画し、14 族ヘテロ元素ラジカル種の新しい発生法の開発に成功しました。各種検証実験によって反応機構を解明し、14 族ヘテロ元素ラジカル種とアルケン(反応基質)共に優れた汎用性を獲得することができました。また、重水素化反応、水素原子移動反応やハロゲン原子移動反応との組み合わせにも成功しました。本研究で開発した新反応・新理論が契機となり、14 族ヘテロ元素の特性を活かした未踏分子・未知機能の創出が期待されます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度には、物理エネルギーを活用する 14 族元素ラジカル種の発生と反応を開発しましました。具体的には、芳香族化反応を駆動力とする、14 族ヘテロ元素ラジカル種の発生法に取り組みました。1,4-シクロヘキサジエン(CHD)誘導体は、一電子酸化されると容易に芳香族化することに着目しました。シリル基をもつCHD前駆体は、市販のクロロシランと1位にアニオンを有する CHD 誘導体から簡単に合成可能で、ケイ素上に(全てアルキル基を含む)様々な置換基を導入可能でした。種々検討の結果、室温で可視光 (455 nm、青色 LED) 照射下、市販の光触媒 (4CzIPN) を用いることで、1時間の反応条件下に、シリルシクロヘキサジエンが光触媒との電子移動によって、脱アニソール反応が円滑に進行し、様々な置換基を有するシリルラジカル種が効率的に発生することを見出しました。本手法で生成したシリルラジカルは、様々な官能基を有するアルケンとの反応が円滑に進行し、温和な条件下高収率にて有機ケイ素化合物を与えました。 さらに、本反応に重水を重水素源として加えるだけで、90%以上の重水素化率にてアルケンの重水素シリル化反応が進行することを見出しました。本手法は、重水素源として最も安価な重水を利用した直接的重水素化法であり、中性条件下、複雑な操作や装置を使用せずに実施可能で、重水素標識化合物の様々な応用が期待されます。 一方、室温下、市販の Ir 錯体を触媒として用い、可視光照射を行うと、ゲルミルシクロヘキサジエンの脱アニソール反応が円滑に進行しながらゲルミルラジカルを生成することを見出しました。ゲルミルラジカルの発生法は極めて限定的であり、本反応は有機ゲルマニウム化学の新たな展開が期待されます。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には、物理エネルギーを活用する 14 族元素ラジカル種の発生と反応を開発しました。上述の 14 族ラジカル種の新たな発生手法の開拓を基盤として、理論と実験の両面から 14 族元素の特性を最大限に引き出す反応設計・分子設計を行い、新分子構築・新機能創出に挑みます。本研究では、「励起状態での反応経路理論解析」および「複雑系反応経路の自動探索法」を援用し、電子励起、結合開裂やラジカル種の発生と反応など予測・設計し、複雑な多置換 14 族機能性分子の新規合成法の開発に取り組みます。例えば、ケイ素ラジカルのキラリティは知られていますが、それによるキラルケイ素分子の構築法はほとんど未開拓です。本研究は、14 族ラジカル上の立体化学制御手法を探索し、14 族元素不斉中心を有する分子骨格の構築法に取り組み、従来にない 14 族元素の特性を活かし機能性分子開発に挑みます。
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