Project/Area Number |
23KJ0614
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
副島 祥吾 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 沈み込み帯 / 流体移動 / 物質移動 / フランシスカン帯 / 高圧変成岩 / 変形解析 / 上昇テクトニクス |
Outline of Research at the Start |
収束プレート境界域の深部(>20km)において沈み込む海洋プレートの含水鉱物の脱水で生じる水流体は地震発生や地殻組成進化に関わり、全地球的水循環の中での重要な役割を持つ可能性があるが、精度の高い定量化は困難であった。 本研究では変成岩に沈み込み帯の前弧地殻下部で沈殿した石英の量を推定し、炭質物を用いた変成温度計と沈み込み帯温度構造モデリング計算をもとに、石英沈殿量から水流体流束を定量化し、これまで不確定であった沈み込み帯の水分布を制約する。最終的には、収束プレート境界域における水流体の移動に関するグローバルなモデルの構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯前弧域深部における水流体の流動とそれに伴う広域的な溶解物質移動を定量的に明らかにすることを目的とし、2022年10月に米国カリフォルニア州フランシスカン帯Eastern beltのMt. Hamilton blockで採集した変成堆積岩試料の全岩化学組成分析とそのデータの統計学的解析を行い、同様の試料について炭質物ラマン温度計を使用して変成作用のピーク温度を推定した。それらの化学分析および変成温度解析のデータと変成岩の構造解析に基づいた変形および運動学的データを統一的に解釈し、フランシスカン沈み込み帯における流体・物質移動と広域的なテクトニクスを議論した。 炭質物ラマン温度計の結果から、調査地域において変成ピーク温度の異なる3つのユニットが定義できることが明らかになった。各ユニットは南北走向の断層に区切られ、東から西に段階的な温度上昇を示した。また、変成堆積岩の全岩化学組成と変形構造解析の結果から、調査地域全体で平均約10 vol.%の外部起源シリカの沈殿が明らかになった。温度圧力条件とシリカ溶解度の関係から、推定されたシリカ沈殿量を説明するのに必要な水流体フラックスを求めた結果、従来の予想の数十~数百倍という大量の水流体が付加体深部に浸透した可能性を示した。これは、沈み込み帯深部で沈み込む海洋プレートから放出された水流体が、高流束のリターンフローとしてプレート境界に沿って上昇し、前弧域付加体深部に流入した可能性を示唆する。また、外部起源シリカの沈殿に伴う広域的な体積増加と変形構造解析の結果は、フランシスカン高圧変成岩の上昇が伸長モデル(Platt, 1986)的であることを支持する。また、その直接的な証拠として、Coast Range断層帯の正断層運動を示す変形構造も発見した。以上の研究成果は博士論文としてまとめ、成果の一部について論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、収束プレート境界域前弧付加体での広域的な流体・物質移動の定量化を目的として、2022年度に実施した米国カリフォルニア州フランシスカン帯での調査で得た変成堆積岩試料約40点について、全岩化学組成分析、炭質物ラマン温度計による変成ピーク温度の推定および野外構造データの解析および解釈を行った。以上により、フランシスカン帯の前弧域深部において、沈み込んだ海洋プレートから放出された大量の水流体の流入とそれに伴う広域的なシリカの付加が生じたことが定量的に明らかになった。また、広域的な変成ピーク温度のマッピングとCoast Range断層帯の構造解析により、フランシスカン帯の高圧変成岩の上昇に正断層が重要な役割を果たしている新たな証拠を得た。したがって、2023年度の成果は以下の3点にまとめられる。①沈み込み帯の広域的な流体・物質移動の定量化に成功した点、②フランシスカン帯ハミルトン山地域における詳細な温度構造を初めて明らかにした点、③デルプエルト峡谷においてコーストレンジ断層の正断層運動の運動学的証拠を新たに示した点。以上の成果は本研究課題の研究計画に沿うものであり、現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかにした広域的な物質移動(シリカの付加)は、変形脈群法という岩石の変形解析手法での体積変化の推定に基づく。本手法での解析には、適切な時期に形成された方位の異なる変形脈のデータを十分に入手可能でなければならない。したがって、本手法の適用可能範囲は非常に限られる。一方、これまでの研究および地球化学的先行研究の知見から、海溝の砂泥質タービダイトに由来する変成堆積岩の化学組成のバリエーションは、堆積鉱物の水理学的な分級による堆積トレンドと変成流体の浸透による水溶性物質の増減による変成トレンドによって説明できる可能性が見えてきた。変成堆積岩の全岩化学組成データのみから堆積トレンドと変成トレンドを抽出し、その寄与を定量的に評価できれば、より多様な岩相での物質移動の定量化が可能になるため、様々な沈み込み環境での流体物質移動を評価できるようになる。 今後の研究では、変成堆積岩の全岩組成データにおいて多変量解析を行うことで、変成流体物質移動を評価する手法を模索する。そのために、これまでの研究で物質移動を定量化済みのフランシスカン帯デルプエルト峡谷の変成堆積岩を中心にいくつかの露頭で複数の試料を採取し、その全岩組成を測定し、露頭ごとにまとめられたバリエーションのある化学組成データを入手する。また、堆積トレンドを明らかにするため、未変成の(流体物質移動の影響が少ない)岩石の全岩組成のバリエーションを出版済みデータや国内の浅部付加体の岩石を用いて明らかにする。最終的には今年度中に変成堆積岩の全岩組成データの解析による物質移動の定量化手法の確立を目指す。
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