Project/Area Number |
23KJ0618
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 尚希 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 十二イマーム派 / シーア派 / イマーム論 / ナスィールッディーン・トゥースィー |
Outline of Research at the Start |
十二イマーム派は全世界で1億5千万人ほどの信徒を有するとされるイスラーム第二の宗派である。同派に特徴的な教義のひとつであるイマーム(指導者)論は、同派の成立から現在に至るまで自派神学者のみならず他派神学者からも積極的に議論・論駁されてきた。本研究はイルハーン朝期(13-14世紀)におけるイマーム論の発展・変容について、文献学的手法によって明らかにしようとするものであり、特にスーフィズム(神秘主義思想)やギリシア由来の哲学・倫理学が及ぼした影響について考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績としてはまず、『イスラム思想研究』第5号に「ザイヌッディーン・イブン・アリー著『輝く庭園』ジハード章翻訳・解題」(単著、83-105)が掲載されたことが挙げられる。本著作は、14世紀までに十二イマーム派法学者が構築し発展させた法学の体系的議論に対し16世紀の同派法学者が注釈を付したものである。本論文はこのうちジハードに関わる章を邦訳し、さらに神学的視点も織り交ぜた解題を付したものである。 また、本年度はナスィールッディーン・トゥースィー(1274年没)の倫理学と神秘主義思想の関連性について、彼の著作群を包括的に分析し、14世紀に展開されたイマーム論の哲学的・神秘主義的議論との関連性について考察した。本研究によって得られた成果を9月9日に東京外国語大学にて行われた第82回日本宗教学会学術大会にて、「ナスィールッディーン・トゥースィーの倫理学とスーフィズム」と題して報告した。さらにここで得られたコメントをもとにさらに分析を深め、1月23日に東京大学東洋文化研究所で行われた東文研セミナー”al-Shaykh al-Akbar and Ustad-i Bashar: Aspects of Mystical Thoughts in Medieval Islam”において“Nasir al-Din al-Tusi’s Ethics and irfan”と題して報告をした。さらに、2024年2月5日に東京大学にて開催された異分野共同研究シンポジウム「古代から近世にかけての古代ギリシアのテクストの受容と利用」にて「13世紀シーア派におけるスーフィズムとギリシア由来の倫理学」と題して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イマーム(指導者)が不在の場合に本来イマームの職権であるものを法学者が代行することの是非についての議論は、同派法学の発展における主要命題のひとつである。翻訳論文「ザイヌッディーン・イブン・アリー著『輝く庭園』ジハード章翻訳・解題」はイマームが有するジハード指揮権についての当時の議論を原典に忠実に紹介するものであり、当時のイマーム論の変遷を多角的に知るうえで重要なものであるといえる。 また、報告者は当初の計画の通り、2023年度においてナスィールッディーン・トゥースィーの倫理思想について分析した。この結果得られた知見を日本宗教学会などで発表した。報告者は2022年度の研究で、14世紀十二イマーム派イマーム論の発展は禁欲など倫理的観点が基礎となっていることを明らかにしており、本年度の研究は当時のイマーム論の変遷を考えるための基盤に相当するものである。 報告者は2023年度の研究において当初計画していた十二イマーム派倫理思想についての研究をおおむね完了し、さらに同派法学に着目した研究も行うことができた。以上から、報告者の現在までの進捗状況はおおむね順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2023年度でおおむね完了しているナスィールッディーン・トゥースィーの倫理思想についての研究の成果を査読付き論文として学術誌に投稿することを計画している。 さらに、2024年度は14世紀の十二イマーム派神秘主義思想家として知られているハイダル・アームリー(1385年没)の思想について研究を行う予定である。彼は神秘主義哲学を基に独自のイマーム論を構築した人物として知られている。彼に先行するシーア派思想家が彼のイマーム論に与えた影響については先行研究で未だ断片的にしか明らかにされておらず、2024度は本論点を中心に分析する予定である。そのためには未校訂の写本資料も含め、彼と交流のあった思想家たちの著作や書簡を収集する必要があり、海外での現地調査を予定している。これによって得られた資料と、2023年度末に行ったイランでの現地調査によって得られた知見や現地で収集した資料とを併せ、アームリーの思想と彼以前の思想家の思想の関連性についての研究に取り組み、学会や学術誌にてその成果を発表することを目標とする。
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