Project/Area Number |
23KJ0627
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 翔大 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ゾウムシ / 高次倍数性 / 単為生殖 / ゲノムサイズ / 生物地理 / 進化生態 |
Outline of Research at the Start |
昆虫類で多様な倍数性変異をもつハイイロヒョウタンゾウムシは,分布域北部に多倍体の単為系統が,東北及び分布南部に2倍体の有性系統が認められる.本研究では,交雑と多倍化を伴う単為生殖系統進化プロセスの解明を目指し,(1)単為生殖の系統進化過程における交雑及び多倍化イベントの順序,(2)ゲノム組成の複雑性がゲノムサイズの安定性に与える影響,(3)低温下の幼虫孵化率に与える卵サイズの影響を解明する.
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Outline of Annual Research Achievements |
高次倍数体の単為生殖系統を擁するハイイロヒョウタンゾウムシの進化史を解明するため,3つの研究に取り組んだ.まず,対象種の高品質なリファレンスゲノムの構築を目的とした,ショートリードデータ(Nova-seq, 150 PE, 100 Gb)とロングリードデータ(PacBio Revio, Hifi リード,30 Gb)を取得した. 次に,MIG-seq法によって得られた核ゲノム縮約情報による系統解析を行った.その結果,ハイイロヒョウタンゾウムシには地理分布に概ね対応する複数の有性生殖系統が含まれていた.また,単為生殖系統の系統的起源が,東北地方に分布する有性生殖系統から分岐したものであることが判明した.これは,研究開始時に行ったミトコンドリアDNA解析による単為生殖系統の単一起源説を支持するものである. また,低温曝露による卵の孵化率を2倍体系統・高次倍数体系統間で比較したところ, 2倍体卵の孵化率と比較して,高次倍数体卵の孵化率が高く維持されていた.ただし,2倍体卵では交尾後の経過時間が不十分だったため,未受精卵が含まれていた可能性がある.本年度の実験で,本種における交尾後の受精に必要な期間が明らかになったため,次年度はその知見を踏まえた追試を行う必要があると考えている.また,卵の低温曝露実験では,2倍体の胚が高次倍数体(3-5倍体)へと変化し,孵化幼虫へと発生を成功させた例が観察された.この現象は,野外で分布域北方に局在する高次倍数体系統の起源についての説明として示唆に富む結果であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象種のリファレンスゲノムの構築に必要な十分量のリードデータの取得が完了したPacBio Revioによって得られた平均塩基長15 kbのデータはエラー率が低く,現時点で最良の方法と言える.また, MIG-seq法によって得られたSNP情報では不明瞭であった,ハイイロヒョウタンゾウムシ単為系統の過去の交雑の有無を解明するために,PCRフリーで増幅バイアスの影響がない全ゲノムリシーケンスによるデータを取得する必要がある.新たな分子実験に必要なサンプルは,北海道から四国にいたる日本全国の複数地点から既に収集済みである. 低温曝露による胚の倍数性変化や卵の孵化率についての研究では,反復数が少ないながらも,飼育・実験手法を確立することができた.特に,有性個体における,交尾後のメスの受精に必要な期間という研究上重要な知見を得ることに成功した.低温曝露によって胚の倍数性が変化する,という先行論文の結果を再現できたことに加え,高次倍数化した幼虫が得られたことは大きな進展であると考えている.今後は,複数の集団でも同様の実験を行い,確認された現象の一般性を確かめていきたい. 以上のように,今年度の実験によって,当初の研究計画で期待された結果の端緒が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度には,分子系統解析や低温曝露実験を行う.まずは,MIG-seq法による解析では明らかにできなかった,ハイイロヒョウタンゾウムシ単為系統の進化史の解明するために,PCR増幅バイアスのない全ゲノムリシーケンス解析を実施する.それに先立って,すでに得られている対象種のショートリード・ロングリードデータを用いてゲノムアセンブルを行い,リシーケンスデータのマッピングに必要なリファレンスゲノムを構築する. 高次倍数性の短期的利益の解明のため,2倍体有性系統の交尾処理に注意を払いながら,高次倍数体単為系統の卵との比較・解析を行う.本年度は,2倍体有性系統については2集団のみを対象としたが,東北から北陸の複数集団のメス個体を採集・用意する.また,低温曝露の影響は孵化率の減少によって定量する計画であったが,加えて孵化幼虫の個体発生安定性について幾何学的形態測定によって定量する.これにより,低温曝露による個体発生の影響を多角的に評価できる. すでに得られているミトコンドリア部分配列やMig-seqの解析結果については,結果をまとめて論文執筆を急ぎ行う.
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