モンゴル帝国期全真教の思想交流の解明-全真道士姫志真を中心にー
Project/Area Number |
23KJ0639
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
脇山 豪 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 全真教 / 道教 / 老荘 / 姫志真 / 性命説 |
Outline of Research at the Start |
金元代13世紀に活動した全真教の道士である姫志真の思想をその著作『知常先生雲山集』を用いて明らかにしたうえで、道家道教、特に北宋以降の老荘注釈との比較を行い、また、姫志真及びその弟子筋とクビライ周辺の官僚との間に存在したと思われる交流関係による朱子学の影響を分析する。これにより、姫志真ら一派が道教史や三教交渉史の上でどのような位置づけにあったかを明らかにし、従来の「道教の特殊な一派である全真教」という単純すぎる全真教評価を再考する一助とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では大きく①13世紀にモンゴル帝国領の中国で活動した姫志真の思想について、その著作『知常先生雲山集』を主に用いて分析すること②その上で姫志真の思想と宋代の老荘注釈の関係を分析すること③13世紀に於ける全真教と道学・朱子学との思想的交流について分析すること、以上3点を目指していた。 令和5年度に於いてはまず姫志真の著作である『知常先生雲山集』について、文献学の観点から研究を行い、その史料上の性質を明らかにした。特に、その出版の経緯を明らかにしつつ、台湾国家図書館の所蔵する鈔本の存在を明らかにした点で、研究の遂行は更に容易になたと言える。こうした研究については、学術論文にし、その内容を公表した。これは①②③すべての観点で基礎となる重要な知見となった。 次いで、姫志真やその弟子筋がモンゴル帝国期から元代にかけて朝廷で活動した道学・朱子学系官僚らと相互交流し、独自の教団構造を構築する様子を研究した。これについてはまず学会発表を行い、のちに内容を増補・整理して学術論文にし、公表した。これにより、全真教と道学・朱子学の接点についての視点が深まり、③の観点に於ける研究を進めることができた。 また、年度末にかけては姫志真の思想そのものについて、全真教思想の歴史的な展開を踏まえた上で研究を行った。この研究では、姫志真の思想が全真教の王重陽や七真人以来の伝統的な流れを汲みつつ、当時併存していた錘呂派のような別の流派と区別を見せる点が多いこと、そして同時に先行する老荘の理論を高度に組み込んだものであり、老荘思想史上の意義を有していることを明らかにした。そのため、①②の観点に於いて大きな成果となった。この研究成果は学会発表をしたのち、論文として投稿済みであり、令和6年度発行の雑誌に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めることで年度内に姫志真本人の全真教思想上の研究、姫志真と老荘との関係、道学・朱子学系官僚との交流、以上目標としていた3つの点すべてに於いて一定の調査結果を得ることができ、学術論文として3本投稿(うち2本公開済み、1本は来年度公開予定)することができた。特に老荘との関係については当初想定していた字句の相似のみならず、姫志真が思想上拠って立つところとしていることを確認するに至るなど、予想以上の成果を得た。 また研究を進めることにより、新たに老荘や道学・朱子学のみならず、13世紀の全真教と内丹道との関係性についても論ずることができることを確認し、その観点も発表物に盛り込んだ。この観点は引き続き研究に取り入れていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則って研究を進める。 ただし、道学・朱子学との交流については、官僚との交流というハード面は明らかにすることができ、また全真教が道学・朱子学を取り込む様相についても研究の目途は立つ一方、道学・朱子学を修めた儒学官僚らが全真教から受けた思想上の影響については、史料的な制約もあり見出しがたい部分もある。呉澄『道徳真経注』などはそれに適したものではあるが、他に活用可能な史料がないかについては改めて広く探すこととする。 得られた結果については口頭発表、可能であれば学術論文として発表することのできるよう、準備を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)