アウグスティヌス前期思想の再評価:生の変容のプログラムとその限界
Project/Area Number |
23KJ0661
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 知輝 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | アウグスティヌス / 意志 / 対話篇 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、395年ごろまでのアウグスティヌスの著作に現れる「前期アウグスティヌス思想」の評価を見直す試みである。従来の研究において、前期思想は中・後期思想と比べて未完成なものとされ、軽視されてきた。しかし、成熟の過程で放棄されたかに見える前期思想は、それ自体さまざまな哲学の可能性を含む豊かな土壌である。そこで、本研究は「前期アウグスティヌスにとって哲学するとはどのような営みだったのか」を問うことで、前期思想の哲学的ポテンシャルを最大限に引き出すことを目指す。また、問題の探究を通じて前期思想の限界や、中・後期思想の意義についてもより明確な見通しを与えることを目論んでいる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアウグスティヌスの前期思想について、(a)内在的動機の解明、(b)共同性の解明、(c)前期思想と中期思想の比較研究、という三つの観点から再評価することを目指すものである。本年度は、このうち前者二つについて三つの論文を完成させ、いずれも査読を通して公表されることになった。 (a)に関わる論文としては、日本哲学会『Tetsugaku』に採用された"Revisiting “propria uoluntas et liberum arbitrium” in Augustine’s De Libero Arbitrio"および東京大学哲学研究室『論集』に採用された「哲学的探求と意志」を挙げることができる。前者は修士論文の中核的なテーゼである、意志概念の登場によって哲学的探求のあり方が変容を被るという主張を検討したものである。後者は、『教師論』を哲学的探求についての書として読むことを提案し、その中でほとんど注目されてこなかった意志概念の役割を明らかにした。 (b)に関わる論文としては、教父研究会『パトリスティカ』に採用された「対話篇を書くこと」が挙げられる。これは、対話篇の執筆によって狙われた効果について検討し、それが『教師論』のadmonitioの概念によって説明されることを示すものである。この着想を引き継ぐ形で京大中世哲学研究会において口頭発表「オスティアと『教師論』」も行った。『告白』に描かれる「オスティア体験」と、その直後に執筆される『教師論』における言語観と共同性を初期著作と比較し、対話的言語の相対化という現象が起こっているのではないかと提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(a)については当初の計画通り英語での論文を執筆し、査読を通して採用にこぎつけることができた。そして、当初の計画だと2年時に着手する予定だった(b)に着手し、論文1件と学会発表1件という成果を上げることができた。 また、国際学会にも二つ参加し、2024年度のオックスフォード国際教父学会での発表が受理されるなど、国際的な研究の発信・交流についても当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、396年に司教職に着く頃のアウグスティヌスの権威(auctoritas)についての言説を分析の対象にする。主に取り上げるテクストは『信の効用』『真の宗教』『キリスト教の教え』「ヒエロニムス宛書簡」である。従来の研究では理性と信仰(fides)の調和の試みとしてアウグスティヌスの哲学が読まれることがあったが、アウグスティヌスが理性と対置させていたのはむしろ権威である。著者(auctor)が書いたテクストを読む際に必然的に発生する権威(auctoritas)を、哲学的探求の中にどう位置付けていくのかを、中期に差し掛かる時期の著作から読み解いていく。それによって、キリスト教の信仰を共有しない読者にとって悪い意味での宗教権威主義的に見えるアウグスティヌスの著作の普遍的な読み筋を提案する。 具体的な活動としては、国際教父学会での研究発表及びStudia Patristicaへの投稿や、中世哲学会での発表および『中世思想研究』への投稿を予定している。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)