1910-20年代新疆における国際関係と現地秩序の動態的関係
Project/Area Number |
23KJ0683
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 06020:International relations-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 健司 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 新疆 / 国籍 / 中国 / ムスリム社会 / アフガニスタン / 主権国家 / 国際関係 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1910、20年代の新疆に着目し、国際秩序の変容が如何に辺境地域をめぐって展開したかを明らかにする。主権国家を前提とする近代的な国際関係は19世紀後半には世界全体に広がりを見せ、さらにその後、第一次世界大戦を経て激動することとなった。しかし、こうした国際秩序の変容は世界全体で一様に展開したわけではない。本研究では、ロシアやイギリスの勢力が交錯し、中国の中央政権から一定の自立性を保持した新疆に着目し、秩序変容期における辺境地域の状況を分析する。それにより、国際関係と現場における多層的な権力関係が絡み合いながら、国家間関係に還元できない秩序が如何に新疆において展開したのかを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度前半は1910-20年代の新疆とアフガニスタンの関係に関する修士論文の成果をもとに3度の口頭発表を行った。2023年5月の現代中国学会関東部会では、従来研究の不十分な1919年から1928年までの新疆省政府とアフガニスタンの関係を見通した。7月の中国社会文化学会では、新疆省政府が中華民国中央政府の対アフガニスタン外交に大きな影響力を及ぼしたことを明らかにし、近代中国外交における地方政府の役割を示した。8月の17th Research Showcaseでの英語発表では、1919年から1921年の新疆とアフガニスタンの関係を通じて、主権、革命、反植民地運動、中央地方関係といった多様な要素が絡み合う形で、地域秩序再編が進んだことを論じた。また、8月発行の『中国研究月報』に木下恵二著『近代中国の新疆統治:多民族統合の再編と帝国の遺産』への書評を発表した。 9月からは台湾への留学を開始し、半年間で英語および中国語にて3回に渡り成果発表を進めた。主たる関心は、国籍の状況が複雑な新疆における国籍識別や国籍に紐づく待遇の実態と、それに関して地方政府と新疆に駐在する外国領事の間で発生した問題であった。12月に台湾大学にて行った英語での発表では、新疆の地方官と駐カシュガル英総領事による共同裁判の運用実態を示した。2024年3月には台北の中央研究院歴史語言研究所および国立政治大学にて、それぞれ会議論文(未定稿。中国語)を提出した。前者では、新疆にて発生した国籍をめぐる対外交渉を事例に、新疆の末端の地方官が国籍識別に当たって現地社会の参与を必要としたことを明らかにした。後者では、居留民把握のため新疆の地方官と駐カシュガル英総領事が共同して作成したイギリス籍の者の名簿を例に取り、名簿をめぐる双方の衝突や操作から、内陸アジアの国境地域において自国民と外国人を峻別することの困難さを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において重要なのは、新疆現地、とりわけテュルク系ムスリム社会により近いアクターの執筆した史料を利用することである。そうした史料を収集する点で、2023年8月のロンドンでの調査と9月からの台北での調査において大きな成果が得られた。ロンドンでは、大英図書館にてインド省史料の中に駐カシュガル総領事からの報告を多く確認することができ、イギリス国立公文書館にて新疆での中国語公文書書簡をはじめ少なからぬ史料を収集することができた。それのみならず、現地の職員の方に史料利用方法を直接聞くことで、文書番号や編纂方法について理解を深めることができた。これによって史料検索の網羅性が向上した。台湾では中央研究院近代史研究所档案館、郭廷以図書館、傅斯年図書館、国史館、国民党党史館などを訪れ、新疆の国際関係史に関わる重要な史料を収集することができている。 また、先行研究を読み進めることで、自身が博士論文においてどのように議論を組み立てるかということについて、徐々に具体的なイメージを持ち始めることができている。語学については、台湾への留学を通じて、中国語での執筆能力と口頭発表能力の向上を図っており、2本の中国語会議論文(未定稿)の提出と2回の口頭発表の実施はその成果である。さらに、ロシア語やテュルク諸語をはじめ、幅広い言語について語学力向上を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後進めていくのは在外史料調査、語学力向上、論文投稿である。2024年8月まで台湾への滞在を予定しており、引き続き史料調査を実施する。2024年度後半にはカザフスタンをはじめとした中央アジアへの長期在外研究を計画しており、その際の調査で活かせるよう語学力の向上を図る予定である。とりわけロシア語が重点的な強化対象である。また、2023年度に行えなかった論文投稿は急務である。既に口頭発表した複数の題目について、英文雑誌と中文雑誌への雑誌投稿を行う。中央アジアからの帰国後にはこれまでの在外研究にて収集した史料を用いて、口頭発表を行い、さらには論文投稿を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)