ヒト熱産生能力の多様性の進化的意義を遺伝・非遺伝要因から解明する
Project/Area Number |
23KJ0705
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45050:Physical anthropology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 悠華 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 褐色脂肪組織 / 寒冷適応 / 人類遺伝学 / 生理人類学 / 熱産生 / ゲノム / 進化 / ゲノムワイド関連解析研究 |
Outline of Research at the Start |
ヒトは低温に曝されると熱産生によって体温を維持し、環境に適応する。ヒトの熱産生を担う主要な組織の一つである褐色脂肪組織の熱産生能力には個人差や集団差があり、この多様性はヒトが進化の過程で多様な環境に適応した結果獲得されたと考えられるが、その遺伝的基盤や生活環境等の非遺伝的要因の寄与の全体像は解明されていない。本研究では、東アジア人を対象として褐色脂肪組織活性測定実験と生理学実験を実施し、遺伝型あるいは生活習慣や出身地などと表現型の関連解析を行うことで褐色脂肪組織の個人差に寄与する遺伝的要因と非遺伝的要因を同定し、ヒトの熱産生能力の進化・適応意義を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪組織は非震え熱産生を介してヒトの体温維持に関わる組織の1つである。日本人の褐色脂肪組織の活性は個人差が大きく、この多様性に関連する新規遺伝子や生活習慣を同定することで、ヒトの寒冷適応の基盤を解明することにつながる。東京大学柏キャンパスに在籍する健康な東アジア人成人男女約40人を対象に、赤外線カメラを使用した寒冷曝露下(19 ℃)での褐色脂肪組織活性の測定実験を冬季と夏季の2シーズン実施した。褐色脂肪組織活性の評価では、褐色脂肪組織が局在する鎖骨上窩部と存在しない対照部位の胸部の皮膚表面温度を用いて、その差分を活性として以後の解析に使用した。また、ゲノム試料の収集と生活習慣等のアンケートも実施した。赤外線カメラおよび所属研究室で継続的に収集しているFDG-PET/CTコホート、近赤外時間分解分光法コホートのサンプルを使用した関連解析の結果、βアドレナリン受容体をコードするADRB2遺伝子のSNPが褐色脂肪組織の活性と関連していることが明らかになった。また、グリーンランドのイヌイットなどの高緯度で生活する集団において、正の自然選択を受けた複数の遺伝子領域の一塩基多型が報告されており、これらの目的遺伝子は、齧歯類の褐色脂肪組織の分化や機能に関わることから、熱産生を介したヒトの寒冷適応への重要性が主張されてきた。しかし、実際のヒトの褐色脂肪組織活性と関連しているかどうかは明らかになっていなかったため、これらの一塩基多型を対象に関連解析を実施した。その結果、褐色脂肪組織活性との強い関連は認められなかった。これらの結果から、東アジア人の褐色脂肪組織活性の多様性に関わる遺伝的要因の一部を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褐色脂肪組織活性に関与する遺伝的要因の探索を実施し、ヒトではβアドレナリン受容体のどのサブタイプが重要であるか議論が続いていたが、β2アドレナリンがヒトの褐色脂肪組織活性に大きく関わっていることを示すことができた。また、高緯度集団での集団遺伝学的な解析の仮説を検証し、生理データを用いた関連解析の重要性を示した。赤外線カメラコホートのサンプル収集は、今年度までで計約120サンプルが完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
FDG-PET/CTコホートの次年度分追加試料を用いてゲノムワイドな関連解析を行うとともに、赤外線カメラコホートでも追加試料を用いた褐色脂肪組織活性の多様性に寄与する新規遺伝子の同定を進める。また、赤外線カメラコホートでは、被験者から取得した生活習慣や出身地等のアンケート情報を基に、褐色脂肪組織活性の多様性に関わる非遺伝的要因の同定も実施する。これらの結果を用いて、寒冷適応に関わる要因がヒトの進化の過程でどのように関わっていたのか考察する。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)