リスクの高いSARS-CoV-2変異株のウイルス学的性質の解明
Project/Area Number |
23KJ0710
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 49060:Virology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小杉 優介 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | SARS-CoV-2 / 変異株 / スパイクタンパク質 |
Outline of Research at the Start |
本申請研究では、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の新規変異株が獲得した変異を同定し、その変異がウイルス学的性質に与える影響を明らかにすることを目的とする。目的の達成のために、組み替えウイルスを用いた感染実験、ワクチン接種者等の抗血清を用いたウイルス中和実験、およびハムスターを用いたウイルスの病原性評価を行う。本研究の完成時には、新規のSARS-CoV-2変異株の流行という脅威に対抗するための知見、および、将来の未知のウイルスによるパンデミックへの備えとなる知見を得ることができる。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、新たに出現したSARS-CoV-2変異株のウイルス学的性質の解明、および獲得した変異との関連についての解析を実施した。 2020年12月に出現したオミクロンBA.1株は急速に世界中に流行した。しかし2021年1月にオミクロン株の派生株であるオミクロンBA.2株が検出され、日本を含めた世界の多数の国々に拡がり主流行株となった。その後オミクロンBA.2株は急速に多様化し、オミクロンBA.5株、BQ.1.1株、XBB株、BA.2.86株など、複数のオミクロン亜株が相次ぎ出現してきた。また、オミクロンXBB株の子孫株であるオミクロンXBB.1.5株、XBB.1.16株、EG.5.1株なども出現し、流行した。2023年11月には、オミクロンEG.5.1株の子孫株であるオミクロンHK.3株が、従来流行していた変異株と置き換わる形で流行した。この変異株はスパイク (S)タンパク質にL455F変異とF456L変異を有している。しかし、そのウイルス学的性質、およびSタンパク質の変異との関連については明らかではなかった。オミクロンHK.3株の感染性および免疫逃避能を明らかにするために、Sタンパク質の発現プラスミドを作製し、Sタンパク質を搭載するシュードタイプウイルスを作製した。このウイルスを使用して、受容体であるヒトACE2タンパク質を発現した細胞への感染実験を実施した。その結果、オミクロンHK.3株は祖先株であるオミクロンEG.5.1株と比較して感染性に差はないことが明らかとなった。また、オミクロンXBB子孫株の感染回復者の血清を使用して中和試験を実施したところ、オミクロンHK.3株はこれらの血清に対し、オミクロンEG.5.1株よりも高い中和抵抗性を示すことが明らかとなった。この研究成果は「The Lancet Microbe」誌に投稿され、2024年1月11日に公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに出現したSARS-CoV-2変異株の性状解析については、今年度出現し、世界各地で流行したオミクロンXBB.1.16株、EG.5.1株、HK.3株、JN.1株について、感染力および免疫逃避能を解析した。その結果、これらの変異株の性状とスパイクタンパク質の変異との関係を明らかにし、その結果を論文にまとめて報告することができた。その一方で、スパイクタンパク質以外の変異がSARS-CoV-2変異株の性状に与える影響については未だ解明できていないことが多く、組換えウイルスを用いた培養細胞への感染実験や、実験用ハムスターを使用した病原性の解析について今後進めていく必要があると考えられる。したがって、リスクの高いSARS-CoV-2変異株の性状解析について、スパイクタンパク質の変異が感染力や免疫逃避能に与える影響については進展しているが、組換えウイルスの増殖能に与える影響など、あまり進展していないものもあるため、この区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、引き続き新たに出現するSARS-CoV-2変異株について、ウイルス学的性質の解明、および獲得した変異との関連について解析を行っていく予定である。具体的には、SARS-CoV-2変異株が有する変異を導入したスパイクタンパク質の発現ベクターを作製し、そのスパイクタンパク質を搭載したシュードタイプウイルスを用いて、哺乳類細胞に対する感染実験を行い、獲得された変異が感染力に与える影響を評価する。また、SARS-CoV-2感染回復者の血清やモノクローナル中和抗体を用いた中和試験を行い、変異が免疫逃避能に与える影響を評価する。それに加えて、変異株が有する変異を導入した組換えウイルスをCPERというリバースジェネティクス法で作製し、それを用いて哺乳類細胞への感染実験を行い、変異がウイルスの増殖能に与える影響を評価する。さらに、作製した組換えウイルスをハムスターに感染させ、体重測定、呼吸量の測定および肺組織の病理解析を行い、同定した変異がウイルスの病原性に与える影響を評価する。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Virological characteristics of the SARS-CoV-2 JN.1 variant2024
Author(s)
Kaku Yu、Okumura Kaho、Padilla-Blanco Miguel、Kosugi Yusuke、Uriu Keiya、Hinay Alfredo A、Chen Luo、Plianchaisuk Arnon、Kobiyama Kouji、Ishii Ken J、Zahradnik Jiri、Ito Jumpei、Sato Kei
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Journal Title
The Lancet Infectious Diseases
Volume: 24
Issue: 2
Pages: e82-e82
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Virological characteristics of the SARS-CoV-2 BA.2.86 variant2024
Author(s)
Tamura Tomokazu、Mizuma Keita、Nasser Hesham、Deguchi Sayaka、Padilla-Blanco Miguel、Oda Yoshitaka、Uriu Keiya、Tolentino Jarel E.M.、Tsujino Shuhei、Suzuki Rigel、Kojima Isshu、Nao Naganori、Shimizu Ryo、Wang Lei、Tsuda Masumi、Jonathan Michael、Kosugi Yusuke、et al.
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Journal Title
Cell Host &Microbe
Volume: 32
Issue: 2
Pages: 170-180.e12
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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