Project/Area Number |
23KJ0730
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 航暉 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2025: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 量子マスター方程式 / 開放量子系 / 量子多体系 |
Outline of Research at the Start |
非平衡現象を量子力学の観点から記述する理論として、全系を着目系とそれ以外の系(=熱浴)に分け、量子マスター方程式により着目系のダイナミクスを解析する開放量子系の理論がある。よく知られた回転波近似による量子マスター方程式の導出は多体系では破綻することが問題視されていたが、近年では開放量子多体系における量子マスター方程式の微視的な導出が整備されつつある。そこで、本研究では近年の量子マスター方程式の発展を踏まえ、特に量子マスター方程式の局所性に着目することで、開放量子系の理論の観点から緩和のダイナミクスや非平衡定常状態の性質の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は当研究計画の最初のテーマである、量子多体系における局所的な散逸を持つ量子マスター方程式の導出を行った。これまで知られていた量子マスター方程式の導出は、回転波近似の破綻等の理由により多体系では使えないことが知られていた。それに対し我々は、当初の目標通り、Lieb-Robinson限界を用いた局所的な量子マスター方程式の微視的な導出を確立し、その導出が有効な条件を環境やシステムのタイムスケールの観点から明らかにした。さらに、散逸を受ける強束縛フェルミオン鎖において、ダイナミクスと定常状態の誤差を数値的に解析し、導出した局所的な量子マスター方程式が有効であることを示した。 本研究結果は国際会議で発表され、論文はarXivに投稿されており現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画通り、最初の結果となる局所的な量子マスター方程式の導出を完了することができ、論文の投稿は想定よりも少し遅れてしまったものの、概ね計画通りと言える。 これに加えて、研究を進める中で、回転波近似によって導かれる量子マスター方程式(Davies方程式)が多体系でも正しくなる例、条件を発見した。回転波近似が多体系では破綻する問題を解決するために当研究課題を提案していたので、この結果は当初の研究計画では予測されていなかった。本結果は、既存のDavies方程式を用いた開放量子多体系の解析の結果を正当化し、より精緻なものとする足掛かりになる。 以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に次の二つの研究に取り組む。 1. 回転波近似の正当性 回転波近似によって導かれる量子マスター方程式(Davies方程式)が多体系でも正しくなる条件を発見した。この条件は、興味のある多くの開放量子多体系が満たす性質であり、本結果はこれまでのDavies方程式を用いた開放量子多体系の解析の結果を正当化するものであるとともに、それらの有効範囲を微視的な観点から議論できる理論となる。今後は、この条件がどこまで一般化されうるかを調べ、散逸のあるフロケ系等、物性分野でも興味を持たれているテーマへの応用を考える。 2. 量子マスター方程式を用いたフロケ系の解析 電気化学ポテンシャル差によって駆動され、バルクでも基盤などの環境からの散逸を受けるグラフェンを、量子マスター方程式によってモデル化し、円偏光を当てたときのホール電流の解析を行った。2023年度は、高温でのホール電流の計算に成功した。低温でのホール電流を計算するためにはシステムサイズを大きくすることが必要であり、現在プログラムの高速化に取り組んでいる最中である。この手法は、従来の手法と異なり、温度勾配による熱輸送と、熱ホール効果によって流れる電流も計算可能である。今後、低温領域におけるホール電流の空間分布、非線形領域におけるホール効果、熱ホール効果の解析を行う。
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