Project/Area Number |
23KJ0738
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北浜 駿太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 散逸系 / 非エルミート / 自由フェルミオン / 例外点 / 量子スピン液体 |
Outline of Research at the Start |
キタエフハニカム模型は絶対零度まで磁気秩序が現れない量子スピン液体の厳密な例として知られ、理論的にも実験的にも注目されている。しかし、キタエフハニカム模型に対して散逸の効果を忠実に取り入れて厳密解を求めた例はない。本研究ではある種の性質の良い散逸を含む量子系の時間発展を記述する GKSL 方程式と呼ばれる方程式を仮定し、散逸のあるキタエフハニカム模型の振る舞いを明らかにするほか、散逸系を扱う上での一般論を整備する。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主な成果としては、以下に記述するような非エルミート自由フェルミオン系の例外点に関する一般論の整備である。
本研究課題の当初のモチベーションは、基底状態が強い量子揺らぎのため絶対零度まで磁気秩序が現れない量子スピン液体の厳密な例として知られるキタエフハニカム模型に対する散逸の効果を調べることであった。そのための手法として、マルコフ的な散逸を記述するGorini-Kossakowski-Sudarshan-Lindblad(GKSL)方程式を密度行列のベクトル化によって行列の固有値問題に帰着し、さらにキタエフのマヨラナフェルミオンの手法によって自由フェルミオン系(フェルミオン演算子の2次形式)に帰着させて解くという方法を採用した。しかし、こうして得られた2次形式は孤立系の量子力学と異なり非エルミートであり、特定のパラメータにおいては例外点と呼ばれる対角化不可能な場合が発生しうる。このような非エルミートな自由フェルミオン系が多体問題の場合にどのようなジョルダンブロックに分かれるかということに関して、先行研究による予想があったが、この予想の厳密な証明はなかった。申請者らの当該年度の研究実績はこの予想を証明したことである。2次形式の冪零部分をsl_2リー代数の生成子の1つとみなし、このリー代数を閉じる残りの2つの演算子を明示的に構成することで、固有空間の次元、すなわちジョルダンブロックの数をsl_2代数の既約表現の次元に関連づけることができた。さらに、組合せ論における既知の結果を適用することで、広義固有空間の次元を q-二項係数の係数を用いて明示的に得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非エルミート自由フェルミオン系の例外点に関する一般論の整備に関しては進展し、国内・国際学会での発表及び論文での発表を行ったが、当初の目的である2次元のキタエフハニカム模型に対する散逸の効果の解析は難航している。一方で、次の項目に述べるように、これまでの研究を発展させて分数統計粒子の統計力学を研究するという新しい方向性の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はこれまで、量子スピン液体に関連するフェルミオンの模型を扱ってきた。これからの方向性としては、これまでの研究を発展させて分数統計をもつ粒子の統計力学について研究する。 ①粒子ロスによる分数量子ホール系の状態の実現:Laughlin状態は、分数量子ホール効果の基底状態の良い近似として知られている。ランダウ準位系において、2体の粒子ロスと片方向Hatano-Nelson模型の散逸を非エルミートハミルトニアンとして導入することによって、初期状態をLaughlin状態に緩和させることを目的とする。 ②フォックパラフェルミオン系での固有状態熱化仮説の検証:(強い)固有状態熱化仮説とは、全ての固有状態が熱化する、すなわち熱力学極限で可換測量の期待値がミクロカノニカル平均に等しいことを主張する仮説であり、非可積分系においては成立すると考えられている。フォックパラフェルミオン系の非可積分系について大偏差解析の手法を用いることで固有状態熱化仮説が成立することを数値的に示す。 ③分数統計の片方向Hatano-Nelson模型の例外点の構造:申請者らはフェルミオンの片方向Hatano-Nelson模型のジョルダン分解がq-二項係数と呼ばれる多項式で特徴づけられることをsl_2リー代数の表現論を用いて示した。分数統計の片方向Hatano-Nelson模型のジョルダン分解を与えるような多項式を求め、それを証明する。
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