Project/Area Number |
23KJ0808
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 46010:Neuroscience-general-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 彩維 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 神経幹細胞 / 細胞運命決定 / FGF |
Outline of Research at the Start |
成体において限られた脳領域にのみ神経幹細胞が存在し、生涯にわたりニューロンを新生することで記憶や学習などの制御に貢献している。胎生期においては神経幹細胞は脳全体に存在するが、数多くの神経幹細胞からどのようなメカニズムにより一部の細胞のみが選ばれ成体まで長期に維持されるのかは未だ不明である。これまでの報告から、胎生期において素早く分裂する神経幹細胞とは別に、ゆっくりと分裂する神経幹細胞が存在し、その一部が成体まで維持されることが明らかとなった。本研究では、ゆっくりと分裂する胎生期神経幹細胞が持つ分子的特徴を手がかりに、成体神経幹細胞の選別および長期維持機構を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
成体において限られた脳領域にのみ神経幹細胞が存在し、生涯にわたりニューロンを新生し、記憶や学習などの制御に貢献している。胎生期において神経幹細胞は脳全体に存在するが、数多くの神経幹細胞からどのようなメカニズムにより一部の細胞のみが選ばれ成体まで長期に維持されるのかは未だ不明である。これまでの報告から、胎生期において素早く分裂する神経幹細胞とは別に、ゆっくり分裂する神経幹細胞が存在し、その一部が成体まで維持されることが明らかとなった。そこで、私は成体神経幹細胞の起源となるゆっくり分裂する胎生期神経幹細胞(以下「起源細胞」と称する)が持つ分子的特徴を手がかりに、ある分泌性のFGF関連遺伝子に着目した。 該当遺伝子の成体神経幹細胞系譜に与える影響を調べるため、遺伝子欠損マウスを作成した。それを用い、起源細胞およびその後の成体神経幹細胞の数を評価した結果、両方とも有意に減少し、必要性を確認できた。さらに、その遺伝子がどのように成体神経幹細胞系譜形成・維持に寄与するかを調べるために、大脳新皮質の神経幹細胞に過剰発現した。そこで、その遺伝子の過剰発現により神経幹細胞の未分化性が維持された結果が得られた。 FGF シグナルは神経幹細胞の未分化性維持に重要な役割を果たしている。FGFリガンドは分泌性で、広範囲に脳室帯に存在すると言われている。しかし、最終的に成体まで未分化性が維持される細胞はごく一部にすぎない。そこで私は、ゆっくり分裂する胎生期神経幹細胞が他の神経幹細胞と比べ、高いFGFシグナルを示すことを見つけた。また、着目したFGF関連遺伝子の欠損により、神経幹細胞のFGFシグナルが減少することも見出した。 これらのことから、本研究で調べられた分泌性のFGF関連遺伝子が一部の神経幹細胞のみに高発現することで、FGFシグナルを局所的に促進し、細胞運命の不均一性に貢献していると現在考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、起源細胞に高発現する遺伝子の一つとして、ある分泌性のFGF関連遺伝子に着目した。該当遺伝子の欠損マウスを用いて、起源細胞およびその後の成体神経幹細胞の数を評価した結果、該当遺伝子は成体神経幹細胞系譜の形成・維持に重要であることを明らかにした。 今年度の研究においては、その遺伝子の神経幹細胞に与える影響をさらに調べると共に、さらなる分子的メカニズムの解明にも試みた。 具体的に、遺伝子を大脳新皮質の神経幹細胞に過剰発現した。その結果、過剰発現により神経幹細胞の未分化性がより維持されたが、細胞周期に入っている神経幹細胞の割合に特に変化はなかった。そのFGF関連遺伝子は神経幹細胞の未分化性を維持することで、成体神経幹細胞系譜の形成・維持に貢献することが示唆された。 また、該当遺伝子はFGF関連遺伝子であるため、胎生期神経幹細胞におけるFGF下流のリン酸化ERK (pERK)シグナルも観察した。そこで、ゆっくり分裂する起源細胞におけるpERKのシグナルが素早く分裂する他の神経幹細胞よりpERKが高いことが分かった。さらに、遺伝子を欠損させると、胎生期神経幹細胞におけるpERKシグナルが全体的に低下する様子も観察された。これらのことから、本研究で調べられた分泌性のFGF関連遺伝子が一部の神経幹細胞のみに高発現し、FGFシグナルを局所的に促進し、成体神経幹細胞の形成・維持に寄与していると現在考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、FGF関連遺伝子は神経幹細胞の未分化性を維持することをin vivoの過剰発現により確認した。その上、FGFシグナルはその遺伝子を高発現する起源細胞で高くなっていることから、その遺伝子はFGFと協働的に働くと考えた。その可能性を調べるために、現在より定量性の高いin vitroの分化アッセイ系を構築しているところである。 また、遺伝子が起源細胞の形成に対し、どのタイミングから関わるのかを明らかにするため、起源細胞が素早く分裂する胎生期神経幹細胞から区別されると思われる胎生期13日目から16日において、タイミングを振ってノックダウンを行い、起源細胞の数を評価したい。 さらに、着目した分泌性のFGF関連遺伝子はFGF濃度を実際に局所的に高められるかどうかを調べるのに、FGFおよびFGF関連遺伝子の可視化をタグ付きマウスの作成やリコンビナントタンパク質の作成で試みている。
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