Project/Area Number |
23KJ0829
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 61020:Human interface and interaction-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曽明 然 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 空中触覚 / 空中超音波 / 凹凸提示 / 曲面提示 |
Outline of Research at the Start |
空中超音波を用いたバーチャル動物園の作成を目指す。超音波による空中触覚提示は、①手や前腕など、どの部位にも提示できる、②バーチャル空間に組み込みやすい、などの観点から注目されている。これまで申請者は空中凹凸形状の再現に取り組んでおり、半径数cmほどのシンプルな球面を指先でなでるような触覚提示を可能としている。 バーチャル動物園の作成にあたり、猫を優しくなでるような状況を想定する。現在の研究を発展させ、形状と肌触りの再現を行うことで猫の触覚を作成し、その後映像や音声と組み合わせてバーチャル猫を再現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超音波を使用して空中に触覚を提示する技術に注力しました。具体的には、単一の凸面や凹面がどれだけ区別可能であるかを調査し、「位置法」と「強度法」を用いてこれらの感覚を作成しました。この技術は、超音波を用いて触覚を空中で提示することで、物理的接触を伴わずに触感を再現するものです。得られた知見は、視覚や音声と組み合わせたバーチャルリアリティ環境での応用に直接役立つものであり、特にバーチャル動物園の創出に向けた基礎となります。 研究により、位置情報が触覚提示において非常に重要であることが明らかになりました。これは「位置法」によって得られる触感が「強度法」よりも優れていることを示しています。また、我々の研究では、異なる形状の触感を区別する閾値も確認されました。これにより、バーチャル環境でよりリアルな触覚体験を提供できるようになり、特に触覚に依存する体験の質を大きく向上させることが可能です。 さらに、この研究はSociety 5.0の構想に貢献します。Society 5.0はサイバー空間とフィジカル空間の高度な融合を目指す概念であり、五感の再現はその中核をなす要素です。既に視覚や聴覚の再現技術が進んでいる中、触覚の再現はまだ発展途上にあります。本研究は、触覚情報の精密な再現に向けた技術開発において、具体的な進展を示しており、将来的に多感覚統合型のインタラクティブシステムの実現に寄与することが期待されます。 最終的に、本研究の成果はバーチャル動物園の創出に向けた第一歩としての重要な意義を持ちます。超音波を用いた触覚提示技術は、触感という新たな次元をバーチャルリアリティに加えることで、ユーザー体験を根本から変革する可能性を秘めています。今後もこの技術の発展と応用により、よりリアルで没入感のあるバーチャル環境を提供できるよう取り組んでいきます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況について「やや遅れている」と評価している理由は、主に次の2点に集約されます。 まず、研究の初期段階である「提示形状の拡大」(A-1)のフェーズでの予想外の技術的課題が発生したためです。本研究では、猫の複雑な凹凸形状を再現することを目指しており、初期の計画では半径数cmの球面を組み合わせるような触覚提示が可能と予想していました。しかし、実際には想定した形状との接触位置を同期させる際に技術的な困難が伴い、複数の球面を組み合わせたときに互いの距離によっては両面を区別できない可能性が高まりました。これにより、予定していた実験の進行が遅れ、研究全体のスケジュールに影響を及ぼしました。 次に、論文の執筆における時間のかかり過ぎも進捗の遅れに寄与しました。研究成果を高い精度で報告するためには、実験結果の検証とそれに基づく詳細な分析が必要でした。特に、実験を複数回やり直し、結果の統計的検定にも多くの時間を費やす必要があったため、論文の提出までに予定よりも長い時間がかかりました。ただし、この過程で得られたデータの精度は向上し、結果的にはより信頼性の高い論文を執筆することができました。 これらの遅れを受けて、今後の計画においては研究の進行スピードを高めることが求められます。特に、残されたフェーズである「提示箇所の拡大」(A-2)、「摩擦の再現」(B-1)、「摩擦と形状の複合提示」(B-2)、そして「映像や音声との複合提示」(C)を効率良く進める必要があります。これには、プロジェクト管理の方法を見直し、リソースの配分や時間管理をより厳密に行うことが不可欠です。 これらの遅れは、研究の質を維持しつつ、目標達成に向けた効率的な進行を図るための学びとなりました。今後は得られた教訓を活かし、研究計画の見直しと時間管理の最適化を図ることで、スケジュールを回復し目標達成を目指します。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策において、まずは(A-2)提示箇所の拡大に注力します。現在のところ、研究では主に指先に限定して触覚提示が行われていますが、今後は手のひら全体で複雑な凹凸を知覚できるよう拡大することが必要です。この拡大は、ユーザーにより自然な触感体験を提供するために重要です。具体的には、指から手のひらに至るまでの凹凸知覚の可能性を探り、手のひらにも適用可能なモデルを開発します。これには、手のひらの広い面積と異なる感覚受容体を考慮した新たな触覚提示技術の開発が含まれます。 また、触覚提示の精度と自然さを向上させるために、既存のAUTD(空中超音波デバイス)に加えて、ソニーの空間再現ディスプレイとRealSenseカメラを統合したシステムを導入します。これらの技術を組み合わせることで、より精密な手の位置トラッキングと空間認識が可能となり、触覚提示のリアリズムと反応性が大幅に向上します。特に、Unityプラットフォームを使用してこれらのデバイスを統合・制御することで、開発の柔軟性と迅速性が保証されます。 新たに開発される触覚提示モデルの効果を、詳細な実験を通じて検証し、論文にします。これにより、手のひらの異なる部分でどの程度複雑な凹凸が知覚可能かを科学的に評価し、学術界に貢献できます。 これらの推進方策を通じて、本研究課題はその実用的かつ科学的な目標達成へ向けて確実に前進し、次世代の触覚提示技術の開発に寄与することを目指します。
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