悪性胸膜中皮腫における腫瘍間質相互作用の機序解明と治療標的の同定
Project/Area Number |
23KJ0836
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 55040:Respiratory surgery-related
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
末吉 国誉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 腫瘍微小環境 / 悪性胸膜中皮腫 / 腫瘍間質相互作用 |
Outline of Research at the Start |
悪性胸膜中皮腫は、肺や胸郭を裏打ちする胸膜から発生する。一般的な癌に比べて、腫瘍細胞は様々な形態を呈し、非腫瘍細胞成分も多様な構成を示す点が特徴的である。この腫瘍内部の不均一性が、当疾患の克服をより困難なものにしてきた。本研究では、腫瘍内の各構成要素について詳細に調べることで、悪性胸膜中皮腫に対する治療標的の推定と検証を行う。 具体的には、手術で切除された腫瘍組織について、各細胞のRNA情報を取得する(単一細胞 RNA シークエンス)。これにより細胞の部分集団ごとの相互作用(腫瘍間質相互作用)を推定し、治療標的を同定する。また、患者腫瘍組織移植モデルマウスを樹立し、標的分子の機能解析を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
悪性胸膜中皮腫は、肺や胸郭を裏打ちする胸膜から発生する、治療抵抗性の悪性腫瘍である。腫瘍細胞は上皮のような極性のある形状から肉腫のような極性に乏しい形状まで様々に変化し、腫瘍周辺の間質成分もまた、腫瘍細胞の性質に応じて多様な構成を示す。このような腫瘍システムの高度な不均一性が、当疾患の克服をより困難なものにしてきた。本研究では、腫瘍内に存在する腫瘍サブクローンと間質細胞との相互作用を詳細に調べることで、個別の腫瘍生存戦略を明らかにし、悪性胸膜中皮腫に対する治療標的の推定と検証を行うことを目的としている。 これまでに、手術で切除された腫瘍組織10症例について、各細胞のRNA情報(単一細胞 RNA シークエンス)を取得した。このなかでもとくに1症例について、複数の腫瘍サブクローンが同定された。一方(腫瘍1)は通常の上皮型中皮腫に近い遺伝子発現パターンを示し、もう一方(腫瘍2)は活発な代謝と好中球を誘引する因子の発現が特徴的だった。 まず、それぞれの腫瘍について患者腫瘍組織移植モデルマウスおよび細胞株を樹立した。つづいて、後者の腫瘍2はモデルマウス内においても好中球を誘導・誘引することを確認し、中皮腫と好中球の関連を再現するモデルが確立できた。モデルマウスに対して好中球枯渇試験を行ったところ、腫瘍の増殖は抑制され、好中球が腫瘍の生存をサポートしている可能性が示唆された。RNA発現データを用いて好中球から腫瘍細胞への細胞間作用をシュミレーションしたところ、液性分子Xが重要な因子として推定された。モデルマウスの系でこの分子を薬理学的に阻害すると、やはり腫瘍の増殖が抑制された。今後は本因子の機能解析を行い、研究結果として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下(1)ー(3)の工程を想定していた。(1)患者に同意を得たうえで、悪性胸膜中皮腫の手術切除検体から、診療に差し障らない程度の余剰組織を採取する。(2)腫瘍組織から細胞を単離し、単一細胞 RNA シークエンスを行う。2023年度は3症例程度を目標としており、前年と合わせて10症例を目標とする。腫瘍の不均一性を評価し、各腫瘍細胞集団と間質細胞の相互作用を定量化する。これにより、腫瘍間質相互作用における介入候補を絞り込む。(3) 腫瘍組織から患者腫瘍組織移植 (PDX) モデルマウスを樹立し、推定した治療標的分子の機能解析を行う。 2023年度には予定通り3症例分の腫瘍検体を採取し、目標の10症例に達した。各症例についてRNAシークエンスおよび解析を行った。このうちとくに1症例について、PDXモデルマウスが作成でき、腫瘍間質相互作用の評価と、治療標的分子の絞り込みおよび機能検証までを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で着目した症例に関しては、外部データ (TCGAなど) を精査することで、これまでに同定した好中球との連関が悪性胸膜中皮腫一般に外挿可能かどうかを検証する。 また、上記以外の上皮型中皮腫9症例の発現データについては統合解析を行い、上皮型中皮腫に共通して存在する腫瘍サブセットを探索する。悪性胸膜中皮腫では、硬い線維化組織の内部に腫瘍細胞が混ざり込み生存する現象 (desmoplastic growth) が知られており、同部位の腫瘍については、一般的な抗がん剤治療が効きにくいと予想される。本解析ではとくに desmoplastic な腫瘍の同定と評価を目指したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)