Project/Area Number |
23KJ0841
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
貝原 伴寛 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | フランス / 文化史 / 家族史 / 感情史 / 啓蒙 / 結婚 / 独身 / 演劇 |
Outline of Research at the Start |
フランスにおいて18世紀は、家族愛が社会編成の原理として称揚されたことで知られるが、同時に「独身者」(セリバテール)という概念が生まれて、未婚の男女に対する苛烈なバッシングが起きていたことは見逃されてきた。本研究はこの単語を手がかりに、主に独身男性に対象を絞り、「独身者」の社会的表象が発展していった過程を明らかにする。文士ドラの喜劇『独身者』(1775年)の上演から、元法務官僚ポンセによる過激な政治論『独身考』(1801-1802年)の出版までの約四半世紀を主たる対象時期として、印刷メディア上における独身者バッシングの展開を、文学・版画・政治理論など様々なジャンルを横断して跡づける。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は18世紀フランスにおいて新語「独身者」(セリバテール)が使われはじめた現象に注目し、この語を手がかりに、独身を問題視する社会規範の形成を跡づけることで、「近代家族」の歴史の一端を明らかにすることを狙うものである。本年度は研究計画に基づき、①単語「独身者」の用例研究と、②啓蒙期の演劇における「独身者」像の研究に着手し、以下の成果を得た。 まず用例研究の結果、「独身者」の用例がモンテスキュー『法の精神』(1748年)出版後の論争の過程で増加したことが判明した。モンテスキュー自身は同書においても、批判者に対する反論を意図した『法の精神擁護』(1750年)においても、独身制(セリバ)を論じるばかりで、「独身者」という語は使っていない。この語はむしろ、モンテスキューの信奉者ラ・ボーメルによる『続・法の精神擁護』(1751年)など他の論争家の著作で多用されていたことがわかった。 演劇に関しては、パリのコメディ・フランセーズ文書館所蔵の手稿も閲覧しながら、喜劇『独身者』(1776年)の著者ドラに関する研究を進めた。その結果、この人物が女性作家ファニー・ド・ボアルネと懇意にしていたことや、月刊誌『婦人新聞』の編集を担っていたことなどが判明した。ファニー・ド・ボアルネは、サロンを開いて男性著述家を庇護しながら、その著述家たちの力を借りて自らも文筆のキャリアを築き、フェミニスト的な思想を展開していった稀有な女性作家である。ドラの書簡体小説二作が、彼女との共著である可能性も浮上した。喜劇『独身者』には、結婚が女性にとって不利な社会制度であるからこそ、結婚せずに恋愛することを望む青年が登場するが、この思想は彼女との関係のもとで生まれていた可能性がある。ファニー・ド・ボアルネとそのサロンの関係者にも目を向けながら研究を続ける展望が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、「独身者」の用例研究によって言論の推移に関する知見を深め、フランスに渡航してドラの手稿を閲覧しながら喜劇『独身者』周辺の研究を進めることができた。『法の精神』論争やラ・ボーメルの存在など有力な研究対象が見つかったことから、1750年代から1780年代にかけての啓蒙時代に関する研究を深める見通しが得られたことも大きな収穫である。研究成果の発表に関しても、本研究計画の母体となった「猫」に関する研究に基づき、独身の愛猫家ガリアーニの手紙に関する論文を出版し、猫を愛した独身男性をめぐる訴訟事件に関する研究報告を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画は当初、啓蒙期から革命以後に至る時期(1776~1802年)を対象とする予定であったが、研究が進み、具体的な争点や研究対象がさらに絞られてきた現在では、むしろ啓蒙期(1750年頃~1770年代)に範囲を限定し、政治思想史と文学史(演劇史)の両側面から検討を進めることが適切だと考えられる。したがって今後は対象時期を啓蒙期に絞り、ラ・ボーメルを中心とする「独身者」概念の思想史的研究と、ファニー・ド・ボアルネのサロン周辺人物における男女関係や結婚制度の文学表象の研究に取り組む。またドラの喜劇の前史として、ディドロの『一家の父』を含む家族愛賛美の演劇作品の系譜についても調べていく。
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