植物と糸状菌で維持される内在性RNAウイルスの酵母逆遺伝学を介した機能の解明
Project/Area Number |
23KJ0855
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 39040:Plant protection science-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
作田 康平 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 菌類ウイルス / Phytophthora属菌 / ステロール代謝 |
Outline of Research at the Start |
1.Phytophthora属菌で植物体への感染に重要な役割を担う遊走子嚢形成を指標とし, 内在性ウイルス感染が宿主の生存に有利に働くメカニズムを明らかにする. 2.再感染とフリー化が困難な内在性ウイルスについて, 酵母では異種発現系, Phytophthora属菌で感染性cDNAクローンと逆遺伝学ベースの多角的な解析系により, その機能と宿主にもたらす影響を解明する. 3.内在性ウイルスの感染系の確立のみならず,外来性RNAウイルスの感染系も用いて比較することで,内在性ウイルスの特徴を捉える.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果について、まず酵母細胞内でPhytophthora endornavirus 3(PEV3)の自律複製系について、RdRpを欠損させることによりゲノムRNAおよび本ウイルスに特徴的なニックのコピー数が減少傾向にあることが明らかとなり、酵母細胞異種発現系によりRdRp活性を有している可能性が考えられた。また、酵母細胞内において複製中間体を示す二本鎖RNA(dsRNA)が形成されていることをノーザン解析によって確認することができた。 内在性RNAウイルス感染が宿主の与える影響解析の一環として、遊走子嚢形成効率の上昇が示唆されていたが、これについて明らかにするため異なるPhytophthora種においてウイルス治癒株を分離し、比較を行った。ウイルス感染株はウイルス治癒株と比較して、V8A培地上での生育速度が減少するものの、遊走子嚢形成と植物に対する病原性が向上していることが明らかとなった。またPhytophthora属菌はステロール生合成能が欠落しておりステロール従属性であるが、ウイルス感染株と治癒株で培地中に含まれるステロールの対する応答が異なることが判明し、ウイルス感染が宿主菌のステロール代謝に影響している可能性が考えられた。 ステロールとウイルス複製の関係を明らかにするため、細胞中の脂質膜とendornavirusに由来するdsRNA成分が共局在するか免疫蛍光染色法(IFA)を試みた。ウイルス感染株では細胞外膜付近に多数のドット状の緑色蛍光が観察され、ウイルス治癒株では特異的な蛍光が観察されなかったため、観察された緑色蛍光はウイルス由来のdsRNAであることが考えられた。Phytophthora属菌ウイルスの検出にIFAの実施例はこれまで報告がなく、インパクトのある成果である。本研究結果をベースに論文投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、当初予定していたPhytophthora属菌における感染性クローンの構築以外は概ね順調に進展している。本系の確立について、解決策を既に講じており今後の進捗に支障はないと考えている。酵母細胞を用いたクローニング技術は、変異体コンストラクトの構築や植物ウイルスでは感染性クローンの構築など、大腸菌ベースでは煩雑な実験系が有効であること示され、今後の研究の加速が見込める。 内在性RNAウイルス感染の影響解析として、ウイルス治癒株の作製を行い、ウイルス感染とステロールの関係性に着目することができたことは申請当初以上の成果をもたらしている。申請当初内在性RNAウイルス感染の影響について、ステロールとの関係性に着目していたが細胞内での局在について細胞分画法によって膜画分を濃縮することで明らかにする予定であった。しかし、細胞内のdsRNAを直接標識することにより脂質成分との共局在を明らかにすることができたため、今後細胞内における脂質代謝との動態を追跡することが可能であると予想される。RNAウイルスの複製の場として、宿主細胞のステロール成分をリクルートし、virus-replication-complex(VRC)を形成する。このVRC中に複製中間体であるdsRNAが存在することが知られているため、未知であるendornavirusの複製研究にも迫ることができると期待される。 研究の進展状況について、若干遅れがあるがそれ以上の成果が得られていると認識しているが、大きな理由として、急遽海外留学を行ったことにある。Phytophthora属菌研究で世界トップレベルのチェコ共和国のメンデル大学でPhytophthora属菌研究の手ほどきを受けることができ、また現在国際共同研究にも発展していることから今後のPhytophthora属菌研究が大いに飛躍することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
オリジナルの宿主であるPhytophthora属菌でのinfectious clone系の構築は未だ達成できていない。本系が困難な理由として、大腸菌でクローニングを行うと、ウイルス配列が維持されないため、大腸菌ベースでのコンストラクトの構築ができなかった。これを解決するため、酵母細胞で構築したコンストラクトをアグロバクテリウムに直接形質転換する系を構築した。同様に大きなRNAゲノムを有するPotyvirusではNicotiana benthamianaへのアグロインフィルトレーション法による感染が成功しているため、大腸菌に配列毒性を有するとされるRNAウイルス感染性クローンの構築に有効であることが示された。次年度は本系を用いることで、Phytophthora属菌における感染性クローン構築を行う予定である。 内在性RNAウイルスとステロール代謝の関連について、細胞中のステロールの定量および定性することを目的とし、GC-MSによる解析とステロール染色を行う予定である。ウイルス感染株とウイルス治癒株、培地中のステロールの有無の条件における脂質代謝を比較することでウイルス感染がPhytophthora属菌のステロール代謝に明らかにする予定である。また同時にRNA-seq解析を実施し、実際にウイルス感染による脂質代謝関連遺伝子、特にステロール代謝に関わる遺伝子発現の変動を解析を行う。ステロール染色は、プロトプラストに対しFilipin IIIを用いることで実施する予定である。既にプロトプラストを用いたIFAを実施しているため、本実験に関して問題なく遂行可能であると考えている。遺伝子、代謝、表現型とウイルス感染による影響について多角的な解析を展開し、内在性RNAウイルス感染が宿主細胞内で維持される機構と生物学的な意義について明らかにする方針である。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)